データは新たな時代の通貨ともいえる重要なアセットです。その活用方法も一つの側面から見るだけでなく、複数の視点を持ち合わせることが求められています。そこで注目されるのが、「データコラボレーション」です。

この記事では、データコラボレーションの概念から、その重要性、そして実践方法までを詳しく解説します。データの可能性を最大限に引き出し、新たなビジネスの機会を創出するための参考にしてください。

データコラボレーションとは

データコラボレーションとは、複数の組織や個人が共有データを活用し、相互に協力することによって新たなインサイトや価値を創出しその価値を最大化するためのプロセスのことを指します。データコラボレーションは単なるデータの共有や協力ではないため、協力し合うメンバーが相互に信頼関係やパートナーシップを構築することが不可欠です。

データコラボレーションはさまざまな手法や技術を活用して行われますが、代表的な手段として「データコラボレーション解析」と呼ばれる技術があります。このデータコラボレーション解析では、各集団が独自に次元削減を行った中間表現を介してデータを統合し、解析を行います。こうすることで、データのプライバシーとセキュリティを保護しながら、データの統合および解析を実現します。

ビジネスにおけるデータコラボレーションの役割

関連データを特定する

データコラボレーションを行えば、複数の異なるデータソースから関連性の高いデータの特定が可能です。たとえば、顧客データと購買履歴データを組み合わせることにより、顧客の嗜好や隠れた需要を把握し、よりターゲティングされたマーケティング施策の提案ができるようになります。このように関連データの特定ができれば結果として事業全体が抱える課題の特定にも近づきます。

インサイトの発見に役立つ

複数の異なるデータセットや専門知識を組み合わせることにより、異なる視点からの情報を総合的に分析できるので、新たなインサイトの発見につながります。たとえば、市場データと競合他社の売上データを組み合わせることで、市場トレンドや競争状況を把握できるため戦略的な意思決定を行えます。

迅速に問題解決ができる

前述した「関連データの特定」でも触れましたが、データコラボレーションを行うことで事業全体の問題に対してより迅速かつ効果的な対処ができます。複数のステークホルダーが情報を共有し、協力し合い解決策を見つけることによって意思決定のスピードが向上するので、市場変化や競争の激化にすぐに対応できるということです。たとえば、異なる部門やチームが連携し、顧客からのクレームが記録されたデータや製品の品質データを分析することで、製品改善や顧客満足度向上につながる施策を迅速に実施できます。

リソースの最適化を図れる

データコラボレーションは、共有データとリソースを組み合わせることにより重複や無駄を排除します。そのため、リソースが最適化され、結果として作業効率化が捗ります。たとえば、複数の企業が共同で販売データや物流データを共有し、供給チェーン全体の効率化や在庫の最適化を図ることによって、コスト削減やサービス向上につながります。

パートナーシップを強化できる

上記のような純粋に事業の利益を追求する役割のほかにも、データコラボレーションは異なる組織や個人とのパートナーシップを強化する絶好の機会になります。共同の目標や利益を掲げて協力して作業することによって、パートナー間の相互補完性が高まり、新たなビジネスチャンスや市場拡大の機会に恵まれます。

データコラボレーションのユースケース

この章では具体的なユースケースとして、チャネル販売業界、投資家とポートフォリオ企業、戦略コンサルティング業界、医療業界での事例について説明します。

チャネル販売

チャネル販売関係では、企業が再販業者やシステムインテグレーターなどとパートナーシップを築きデータコラボレーションを行います。事前の共有なくリリースを進めると競合他社の製品と類似した商品を販売してしまう可能性があるため、パートナー同士で販売見込みや顧客に関する洞察を共有することで、類似商品の拮抗を回避し、販売プロセスを最適化します。

ベンチャーキャピタル業界や投資家

ベンチャーキャピタル会社や投資家は、ポートフォリオ企業からデータを収集し、給与や財務指標、パフォーマンスベンチマークなどの情報を分析します。この際にデータコラボレーションを実施することによって、投資家は中央のデータハブとして機能し、複数の企業間でデータの共有と比較ができるようになります。その結果、投資家から投資を受ける企業は、他の企業との比較に基づいた貴重なベンチマークデータにアクセスできます。

戦略コンサルティング

戦略コンサルタントは、収集したデータをもとにトレンドやベンチマークの分析をすることによって、クライアント企業に対して有益なインサイトを提案するのが通常ですが、この際にデータコラボレーションを用いれば、複数のデータソースから導かれる独自性を持った提案できるようになります。

医療における開発

医薬品や治療法の開発の際に、データコラボレーションは非常によく行われます。複数の病院や研究機関が協力してクリニカルトライアルを実施し、効果や副作用のデータを共有することによって、新しい治療法や薬剤の安全性と有効性の確保ができます。そのほか、疫学研究の領域においてもデータコラボレーションは威力を発揮します。先ほどと同様に異なる医療機関や研究機関がデータを共有し、膨大な人口データを分析し合うことによって、疾病のパターンやリスクファクターを特定することができます。たとえば、特定の地域で発生している感染症の拡大要因や、特定の人口グループの健康上の課題を把握する際にこのようなデータコラボレーションは非常に有用な手段となります。それ以外にも、患者のプライバシーを損なうことなく、患者に対する有用なケアのパターン発見にもデータコラボレーションは用いられます。たとえば、特定の病院の診療や手術が患者の寛解やQOL向上にどのように役立つか分析するためにデータコラボレーションを行います。

データコラボレーションを実践する際のポイント

データコラボレーションを実践する目的を明確にする

データコラボレーションは事業拡大における重要な戦略的作業ですが、それを実践する際には明確な目的設定は欠かせません。企業の成長や競争力向上、顧客動向の把握、隠れたニーズの把握などの具体的な目的を明確にすることにより、データ収集や分析の方向性が明確になるのでメンバーが行う作業に一体感が出ます。

適切なパートナーを見つける

適切なパートナーを見つけて互いに対等な関係で協力できることがデータコラボレーション成功の一番の鍵と言えるでしょう。パートナー選定においては、互いに掲げているビジョンや目標が一致すること、データの質やアクセス方法・セキュリティ対策が互いの企業で確率されていることが重要となります。普段から闊達にコミュニケーションを取ることで作業の連携もスムーズに行えるようになり、成果の最大化が期待できます。

データエスクローを利用する

データエスクローは、データや情報の保管と管理を第三者に委託することです。データのセキュリティやアクセスの確保、永続性や可用性の確保、法的要件の遵守を目的としています。特にデータのセキュリティと可用性を旨とする組織にとってデータエスクローは非常に重要な手段となっています。

データエスクローを取り扱うシステムの特徴とメリットとして、下記の事象が挙げられます。

セキュリティの担保

データエクスクローシステムなら厳格なセキュリティプロトコルやアクセス制御を実施することでデータの保護を確保し、結果として重要データの漏洩や不正アクセスのリスクを最小限に抑えることができます。

バックアップと復旧が容易に

データエスクローを行うシステムでは、データのバックアップや復旧機能が備わっているため、データの損失や破損、災害による喪失から回復するハードルが下がります。

法的な要件の遵守

特定の業界や法的規制では、データの保存やアクセスに関する法的要件の遵守が定められています。データエスクローシステムではこのような要件に準拠するための対策が打てます。

組織間の信頼関係の構築

データエスクローシステムは、ビジネスパートナーや顧客との信頼関係構築に非常に役立ちます。データの保管や管理を信頼できる第三者に委託することにより、セキュリティやデータの正確性に関する信頼性の確保が可能です。

ビジネスの継続性をサポート

データエスクローサービスは、ビジネスの継続性に貢献します。データの喪失やアクセスの困難が起きた場合でも、データエスクローエージェントによるバックアップや復旧により、業務の停止や影響を最小限に抑えることができます。

このように、データエクスクローを活用すれば信頼性の高いデータ保管と管理の確保が実現できます。

効果測定をし、PDCAを回す

PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを回すことは、データコラボレーションを継続的に成功させるために必要不可欠です。効果測定によって目標の達成度や成果を定量的に評価し、改善点や課題を洗い出します。洗い出した改善点や課題をもとに回すPDCAサイクルを通じて事業をよりよいものへと昇華することに役立ちます。

まとめ

今回はデータコラボレーションについて解説しました。データコラボレーションは日本ではまだあまり聞く機会が少ない概念ですが、さまざまな業界で日常的に用いられているプロセスであり、データコラボレーションの成功の可否が事業の成功を左右すると言っても過言ではありません。そしてデータコラボレーションを成功させるには、自分の事業にベストマッチするパートナーの選定が要となります。

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