昨今のビジネス環境では、データをいかに効果的に活用できるかが事業の成功にかかっています。
このようなデータ活用にあたっては、社内に一元化されたデータソースがあり、社内の全てのメンバーが同程度のリテラシーを持ってそのデータを利用できる環境にあることが重要となります。
このための取り組みをデータの民主化と言います。
今記事では、データの民主化の概要や課題・解決策、推進方法などを解説します。
データの民主化とは

データの民主化(Data Democratization)とは、企業や組織がデータを専門家やエキスパートだけでなく、社内の全てのメンバーや関係者に解放するというコンセプトのことを指します。
データの民主化により、組織内のあらゆる立場の人々が必要なデータに容易にアクセスし、その価値を理解し、創造的に活用する能力を備えることができるのです。
このアプローチは、単に情報共有を拡大するだけでなく、新たな知識創造と意思決定プロセスの変革を促進します。
データを根拠にした意思決定は、主観的なバイアスから解放され、客観的かつ効果的な戦略の策定を可能にします。その結果、組織全体の生産性や効率性が向上し、イノベーションが促進されます。
データの民主化が重要である理由

データの民主化はビジネス活動において、重要なポイントとなります。ここでは具体的な理由を3つにわけて紹介します。
意思決定の質・スピードが向上する
意思決定において、正確な情報とスピーディな行動は競争優位性を築く基盤です。
データの民主化を行うことによって、社内メンバーが必要なデータに直接アクセスし、データを根拠にした迅速な意思決定ができるようになります。その結果、分析にかかる時間や工数が削減され、意思決定の質とスピードが向上します。
このようなスピーディな情報共有によって、競合優位性を維持し、市場の変化に素早く順応することが可能となります。
情報の透明性が高まる
データの民主化は、情報を組織全体で共有する仕組みを生み出します。
その結果、部門間の認識齟齬や情報の非対称性が減少し、組織全体の透明性が向上します。情報の透明性が高まることにより、組織内の連携がスムーズになり、効率的な業務遂行が実現します。また、部門やチーム間でデータを共有し、社内の統制が取れるようになることで、情報の重複や非効率性も減らすことができます。
より深いインサイトを得られる
社内メンバーが自身の業務に関連するデータにアクセスできる環境を整えることで、より深いインサイトや市場のトレンドを把握できるようになります。
その結果、組織全体の問題解決能力やイノベーションを起こす能力が向上することが期待されます。
データの民主化の課題と対策

データの民主化は、広範なアクセスと共有をもたらす一方で、いくつかの課題も浮き彫りになっています。下記に、データ民主化の課題とそれに対する具体的な解決策を紹介します。
セキュリティとプライバシーのリスクがある
データの民主化に伴い、セキュリティとプライバシーのリスクも高まります。
具体的には、データ漏洩や不正アクセスが増加するリスクを孕んでいますが、これに対処するためには以下の点に注意しましょう。
データアクセスの制御
データへのアクセスは必要最小限に制限し、アクセス権限の明確な定義と監視を行いましょう。
データの匿名化や疑似化
プライバシー保護のため、個人情報を特定できないような形でデータを処理する方法を導入しましょう。
セキュリティ対策の強化
暗号化やファイアウォールなどのセキュリティ対策を強化し、データの安全性を確保しましょう。
データ品質の確保が難しい
また、データ民主化によって、多くのメンバーがデータに触れる機会が増えますが、データ品質の維持が難しくなるリスクもあります。正確なデータに基づく意思決定を行うためには、以下の手段が有効となります。
データ品質の監視
定期的なデータ品質の監視とデータクレンジングを行い、品質の低下を防止します。
データ品質の向上
データの入力段階から品質を担保するための基準を策定し、データの正確性と信頼性を高めます。
リテラシーやスキルが求められる
データを組織全体で広く活用するためには、社内メンバーがデータの文脈を正しく解釈するスキルやデータサイエンスの基礎的な知識が求められます。
誤った情報に基づく誤解や誤用を避けるためには、以下の方法が効果的です。
教育とトレーニング
メンバーに対してデータの文脈を正しく解釈するための基本的なスキルを提供する教育プログラムを展開し、データの適切な使用を促します。
データガバナンスの確立
データの適切な管理と利用を確保するためにデータガバナンスの仕組みを導入し、社内メンバー全体のスキル向上を支援します。
データ民主化を実現するためには、これらの課題に対する適切な対策を講じることが不可欠です。そのため、上記のような対策を講じて根気よくデータと向き合いましょう。
データの民主化の進め方

データの民主化を推進するには、具体的には、下記の4ステップに取り組むとよいでしょう。
組織のビジョンやデータの活用目的を定める
データの民主化を達成するためには、まず第一に、最初に組織全体で共有するビジョンとデータの活用目的を明確にすることが必要です。
具体的な目標や効果を定義し、それらがデータの民主化をどのように支えるかを明瞭にすることによって、プロジェクトの各関係者が共通の目標に向かって協力できる基盤を築けます。
データアクセスのガイドラインを作成する
第二に必要なことは、データアクセスの規則とガイドラインを確立することです。
組織全体で共有される透明かつ一貫性のあるルールを策定し、社内メンバーに適切な教育とトレーニングを提供することで、データの適切な利用とセキュリティの担保を同時に実現できます。
データプラットフォームを整備し、データを一元化・収集する
第三に行うこととしては、効果的なデータプラットフォームを構築し、組織内のデータを一元化して収集することです。
各部門やプロジェクトで散逸していたデータを統合し、重要な情報をカテゴリー別に整理して管理することで、データ活用の際の効率と正確性を向上させます。
データを活用する文化を醸成する
最後に、文化を組織内に浸透させることが挙げられます。
メンバーがデータを利用しやすくするためのトレーニングやサポートを提供し、データ活用の成功事例を共有することで、共有されたメンバーたちが積極的にデータを活用し、意思決定や戦略策定に活かす文化を醸成します。
また、実施したトレーニングやサポートに対するフィードバックをメンバーから定期的に集めることにより、継続的にそのプログラムの改善を進めましょう。
データの民主化を実践している事例3選

データの民主化を実際に行っている事例を3つ紹介します。いずれの企業も、データ分析基盤の総合支援ツール「trocco®」を活用し、民主化を進めています。
株式会社オープンエイト
株式会社オープンエイトは、コンテンツテクノロジーカンパニーとしてのビジョンを掲げ、ビジネス動画編集クラウド「Video BRAIN(ビデオブレイン)」を提供し、データ分析分野への投資を着実に進めています。
オープンエイトは、trocco®を導入することによってデータ分析の民主化を叶えました。
かつて抱えていた課題として、分散したデータとそれに伴う混乱がありました。異なる定義や期間で行われるデータ分析により、意思決定が難しい状態でした。
そこで、データの一元的な統合を可能にし、誰もがデータを容易に扱える環境を構築するtrocco®を活用し「Single Source of Truth」という理想的な状態に近づくことができました。
具体的には、データエンジニアのリソースが最適に活用され、コストが削減でき、また、データ活用のスピードが著しく向上しました。
さらに、社内コミュニケーションを通じて、データの重要性とその活用方法が浸透し、データ投資への理解が広がりました。
それ以外にも、非エンジニアのチームメンバーもデータが扱えるようになり、データの民主化が具現化されました。
事例の詳細はこちらをご覧ください。
株式会社ギフティ
株式会社ギフティは、独自のコーポレート・ビジョンに基づき、人々、企業、地域との絆を強めるためのサービスを提供しています。
その核となる「eギフト」サービスを通じて、「giftee」(個人向け)と「giftee for Business」(法人向け)を展開しています。
上記のサービスの成長に伴って、データベースの拡張と強化を図るために「giftee」のリニューアルが行われました。
しかし、個人向けと法人向けのデータベースの統合を分けて運用することで、データの分析が複雑化し手作業が必要となりました。この課題に対する解決策として、trocco®が導入されました。
trocco®の導入により、データベースの統合と整理を効率的に行うことができ、データアナリストの作業負荷を軽くすることができました。
新旧のデータベースを統合し、データの処理と解析を容易に行える環境を提供することで、以前は手間と時間のかかっていたデータの取り扱いが劇的に改善されたのです。とくに、以前は10時間要していたデータ処理が、わずか2時間に短縮されるなど、劇的に効率性が向上しました。
また、trocco®の直感的に理解しやすいUIにより、エンジニアリングの知識がない社内メンバーでもデータ操作ができるようになりました。その結果、データ分析に関する専門知識が限られていた社内全体で、データとの距離が縮まり、手間なくデータを取得し、必要な情報に短時間でアクセスできるようになりました。
事例の詳細はこちらをご覧ください。
atama plus株式会社
atama plus株式会社は、教育に革命をもたらす使命感を掲げ、SaaSモデルのAI教材「atama+」を通じて、全国の塾や予備校に最適な学習経験を提供しています。
「atama+」は、個々の生徒に合わせた学習プランを提供することが重要であり、そのためにデータの収集と解析が不可欠です。
しかしながら、データエンジニアの不在やデータ基盤の整備の課題を抱えていました。
この課題に対処するため、メタデータの整備と効果的なデータ基盤の構築が必要となりました。
当初、データ分析基盤を見直す過程では、AWSやGoogle BigQueryを活用していましたが、データの活用が限られていたため、データ分析が一時的なものに終わっていた課題に対処する必要性を感じ、他のツールでのデータ基盤の構築を決意しました。
そこでtrocco®の導入に踏み切りました。中でも「データカタログ」の新機能がメタデータ整備を成功させる鍵となりました。
とはいえ、優れたツールを導入するだけではデータの民主化成功には不十分であり、成功させるには、メタデータの初期入力と普及活動も欠かせませんでした。
そのため、この課題に対しては、少人数で取り組む中で、徐々にメタデータを整備し、その重要性を社内に浸透させていくことによって効果が得られました。とくに、非技術者にもメタデータの重要性を理解してもらうための教育が効果的でした。
上記のプロセスの実施によって、atama plusでは、データ基盤の利用者数が大幅に増加し、社内外でのデータ活用が急速に広まりました。また、教育現場でのデータ活用や効果検証、サービス全体の可視化などの成果も得られました。
まとめ

今回は、データ民主化の概要や課題、民主化成功のための手順や事例について解説しました。
データの民主化を行うには、セキュリティ対策やデータ品質の確保が重要です。また、データの一元化をスムーズにすることも業務の負担を増やさないポイントとなるでしょう。
trocco®とLookerを用いてデータの民主化を行う方法は『Lookerで実践する「SSOT」とデータの民主化』という動画でも説明しています。これからデータの民主化を進めていきたいという方はぜひご視聴ください。
本記事で紹介したtrocco®は、直感的かつ洗練されたUI/UXで誰でも簡単にデータの連携・整備・運用を行えます。また、日本語での手厚いサポートや豊富なドキュメントもあるため安心してご利用いただけます。
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