データディクショナリは、データの管理と分析において極めて重要なツールです。
データディクショナリは、データベースの各テーブルやカラム、その属性や制約を明確に文書化するためのツールや文書のことを指します。この文書化は、データの一貫性や品質を確保し、チーム間のコミュニケーションを円滑にするため、データの管理と分析の領域で非常に重要となります。
この記事では、データディクショナリについてわかりやすく説明します。
データディクショナリとは

データディクショナリは、情報システムが取り扱う全てのデータ項目を分かりやすい形で定義し、詳細に記述し、一元的に管理します。
たとえば、商品名、取引先、顧客名、売上など、各データ項目に対するその意味と説明が含まれます。
この詳細情報は、開発者、アプリケーション設計者、データベース管理者、エンドユーザーなど、関係者がデータベース情報を簡単に共有し理解するのに役立ちます。
実際に普段システムで利用されているDBMSで言うと、MySQLやPosgreSQLではINFORMATION_SCHEMAデータベースにメタデータが保存され、OracleDatabaseではALL_TABLES、USER_TABLES、DBA_TABLESなどのデータベースにメタデータが格納されます。
データディクショナリは企業情報システムにおいて情報の共有性と一貫性を維持するための重要なツールとして有用であり、データ項目の明確な定義と意味の記述を通じて、データの整合性を保ち、システムの効率的な運用をサポートします。データディクショナリの構築には、長期的なメンテナンス性を考慮することが必要であり、データ項目の管理を適切に行うことが要求されます。
情報システムは進化し変化するにつれ、既存データと新規データの競合、また同じデータに異なる名称が付けられるといった問題が生じる危険性が高まります。データディクショナリを構築することで、こうした混乱を未然に防ぎ、システムの複雑性を制御できます。
データディクショナリとデータカタログの違い

ここでは、データディクショナリとデータカタログの違いについて、定義・目的や用途を比較し、さらにそれぞれを連携させるメリットについて説明します。
データディクショナリ | データカタログ | |
定義 | データベース内のデータ項目に関する詳細な情報(テーブル、カラム、属性、制約等)を一元管理するツール | 企業全体のデータアセット(データベース、テーブル、レポート等)のメタデータを一覧・検索可能にするツール |
主な目的 | データの構造、型、制約、関連性を明確にし、データベース設計・運用をサポート | データアセットの発見、理解、活用を促進し、データガバナンスと品質管理をサポート |
想定利用者 | データエンジニアデータアナリストDBA | ビジネスアナリストデータサイエンティスト一般ビジネスユーザー |
メリット | データの構造や型を明確に定義データの技術的詳細を文書化 | データアセットを簡単に検索・発見データの起源や用途を理解支援 |
用途 | データ要素の技術情報を提供データの構造やデータ型を定義 | データ資産の発見と理解支援データの起源、関連性を提供 |
データのスコープ | 特定のデータベースやシステムに焦点 | 企業全体のデータアセットを対象 |
それぞれの定義と目的の概要
データディクショナリは、データベース内のテーブル、カラム、属性、制約などの詳細情報をドキュメントやツールに記載したもののことを指します。データディクショナリの主な目的は、データの構造、型、制約、および関連性を明確にし、データベースの設計と運用をサポートすることです。
データカタログは、企業全体のデータアセット(データベース、テーブル、レポートなど)のメタデータを集約し、データの発見と理解を容易にするツールやプラットフォームです。主な目的は、データアセットの発見、理解、活用を促進し、データガバナンスと品質管理をサポートすることです。
それぞれの用途
データディクショナリの用途としては、特定のデータベースやシステム内のデータ要素に関する技術情報を提供することが挙げられます。これは主にデータエンジニアやデータアナリストが使用し、データの構造やデータ型などを明確に定義します。データの技術的な詳細を文書化します。
データカタログの用途としては、組織内のデータ資産を発見し、理解し、アクセスするための中心的なプラットフォームとして機能することが挙げられます。具体的には、データの起源、関連性、ビジネス用語などの情報を提供し、ユーザーがデータから価値を引き出すことをサポートします。また、データガバナンスや品質向上にも寄与します。
二つを連携させるメリット
データディクショナリとデータカタログを連携させるメリットとしては、下記三点が挙げられます。
まず、データカタログとデータディクショナリを連携させることで、データ管理と活用の効率が向上します。データカタログは組織全体のデータアセットの概要を提供し、データの発見と理解を支援します。その一方で、データディクショナリはデータの詳細な技術情報を提供します。
そして、データカタログ内でデータディクショナリへのリンクや参照を提供することで、ユーザーは必要に応じてデータのテクニカルな詳細情報にアクセスできます。これにより、データの利用者はデータを簡単に発見することができ、同時にデータの正確性と信頼性を確認することができます。
さらに、これら二つの技術を連携することで、データの一貫性とデータガバナンスが向上し、社内でのデータの効果的な利用が可能となります。そのため、データ駆動型の意思決定やビジネスプロセスの最適化に寄与し、その結果、組織全体のデータ活用能力の向上が図れます。
データディクショナリの目的

データディクショナリの目的は大別して下記3つが挙げられます。
第一に、データディクショナリは、情報システム内のデータ要素に関する詳細な情報を提供します。具体的には、データの名称、意味、表記方法、データ型などが含まれます。これらの情報は、開発者やデータベース管理者がデータを正確に理解し、一貫性を保つのに役立ちます。異なるチームやプロジェクトが同じデータを異なる方法で解釈することを防ぎ、データの信頼性を向上させます。
第二に、情報システムは時間とともに変化し、新しいデータ要素が追加され、既存のデータが変更されることがありますが、このプロセスで、同じデータを異なる名称で登録する誤りや、異なるデータに同じ名称を割り当てた結果、社内で混乱が生じるリスクがあります。しかしこのような場合にデータディクショナリを使用することで、データの標準化が実現され、データベースの整合性が確保されます。データベース内のデータが一貫して定義され、管理されるので、結果として社内の混乱が軽減され、データの品質が向上します。
第三に、データディクショナリは、情報システムに関与する異なる役割や部門の人々にとって共通のリファレンスとなります。システム開発者、アプリケーション設計者、データベース管理者、エンドユーザーなど、あらゆる関係者がデータディクショナリを共有することで、データについて一貫した理解を持つことができます。これにより、コミュニケーションの円滑化とデータの効果的な利用が可能となり、情報システム全体の効率性が向上します。
データディクショナリの構成要素

データディクショナリには大きく分けて実表とビューの二つの構成要素がありますが、この章ではそれぞれについて説明します。
実表(Tables)
データディクショナリ内の実表という構成要素は、データベース全体に関する情報を提供し、裏側で行われる複雑なプロセスをサポートしています。
これらのテーブルは通常、データベースだけが読み書きできるように厳格に制限されており、データのほとんどは暗号形式で保持されています。一般のユーザーは、これらのテーブルに直接アクセスすることはほとんどありません。
ビュー(Views)
データディクショナリ内のビューという要素は、実表に格納された情報をユーザーが理解しやすい形式に変換し、必要な情報を提供します。
たとえば、ユーザー名や表の名前などの実用的な情報を基にデータを整理し、結合やWHERE句を使用してデータを取得します。ビューは、データの可視化と理解を容易にする役割を果たします。
ビューのセットと接頭辞(Sets and Prefixes)
データディクショナリがどのように構成され、利用されるかは使用しているデータベース管理システム(DBMS)に依存します。たとえば、Oracle DBMSでは、データディクショナリが特定の接頭辞を用いたビューで構成されています。
- DBA_(Database Administrator)
- データベース全体の管理情報を含むビューで、主に管理者向けにデータベース全体の管理をサポートします。
- ALL_(All Users)
- ユーザーがデータベース全体の情報を参照するビューで、ユーザーが所有するオブジェクトと、その権限とロールの公開に関する情報を提供します。
- USER_(User)
- 個々のユーザーに特有の情報(スキーマ・オブジェクトや権限付与情報など)を提供するビューで、データベースを利用する一般のユーザーが最も頻繁に利用します。
これらの接頭辞によって区別されたビューセットは、Oracle DBMSの特徴であり、ユーザーが必要な情報にスムーズにアクセスできるように設計されています。しかし、他のDBMSでは、データディクショナリの構成や利用方法が異なる可能性があります。そのため、特定のDBMSの文脈を正確に理解し、それに基づいてデータディクショナリを調査および利用することが重要です。
まとめ

この記事では、データディクショナリの概要やデータカタログとの相違点、目的や構成要素などについて説明しました。
社員や会社規模の増大とともに、同じ意味のデータに異なる名称が付けられる事例が生じることもあるでしょう。このような場合にデータディクショナリを活用すれば社内共通のリファレンスができるため共通の認識を作りやすくなったり、データベース内の整合性を取りやすくなったりします。
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