近年ビジネスの至るところでデータの活用が取り上げられています。
IT技術の発展とともに身近になったデータですが、その活用法やメリットを具体的にイメージできていない企業の方もいるのではないでしょうか。
本記事では、データ活用の前段階として欠かせないデータ分析のプロセスや、ビジネスにおけるデータ分析の活用方法を事例を交えながら解説します。
「まだデータの活用に踏み切れていない方」、「いまいちデータを活用できているか自信がなく焦りを感じている方」は、データの活用を基本的な部分から理解して自社のビジネスを成長させましょう。
データ活用とは

データは単に収集しただけでは意味のないデータですが、分析によってデータはビジネス上の価値を持つ情報、あるいはインサイト(気づき)に変わります。
つまりデータ活用とは、その情報を経営判断・戦略立案に活かすことです。
データの活用は下記の2ステップが基本です。
- データを分析してデータからインサイト(気づき)を得るステップ
- そのインサイトを解釈してビジネスに活用する
現在はインターネット上に幅広いデータが飛び交っています。自社で収集したサービスデータや広告データだけでなく、外部のオープンデータベースなど幅広いデータを分析できるようになりました。
紙データをデジタルなデータに変化させ、データを共有しやすくする「IT化(デジタル化)」も重要です。
しかし、そのデータを分析して顧客のニーズや売上に寄与する要因を探し出し、KKD(勘・経験・度胸)ではなく、データを伴った判断に活用することがデータ活用の基本になります。
データ活用によって見込めるメリットと期待できる効果

データの用途は業種・業界などの分野によって異なります。
たとえば、画像や動画のデータはAIを利用した画像認識(OCR)システムの改善に使うものですが、セールスやマーケティングには使用できません。
以下の4つのメリットは、データを活用する分野を問わず効果が期待できる基本的なものです。
既存業務の効率化
データには人が認識しづらいものを認識させる効果があります。
たとえば自社で行っている業務の工数データを取り、その結果をグラフにしてみたらどうでしょうか。
データをグラフ化して分析することで、業務フローのなかで著しく時間がかかっている工程や、特定の業務だけを苦手としている人などのボトルネックを特定できます。
業務上のボトルネックを解消できれば既存業務の効率を上げられます。
商品・サービス品質の向上
顧客アンケートやサービス利用データなど、顧客のニーズ・アクションが反映されるデータをビジネスに活用することで、商品・サービスの品質の向上が期待できます。
従来の顧客アンケートで、あるサービスについての評価を測るなら、
- とてもよい
- よい
- ふつう
- わるい
- とてもわるい
で評価した5段階評価をもとに基本的な数値で評価するしかありませんでした。
しかし顧客の評価を軸に、性別や年齢、居住地域や家族構成など、さまざまな属性と絡めた分析ができるようになります。
顧客データの分析により、顧客満足度に対して「何が」「どの程度」影響しているかを定量的に把握し、効率よく商品・サービスの品質向上につなげられるようになるのがデータ活用の魅力です。
新しいビジネスアイデアの創出
顧客データの活用には、既存商品・サービスの改善以外にもメリットがあります。
たとえば顧客データを分析する過程でまったく想定していなかった顧客のニーズや、自社に対するネガティブな評価に気づくなどのケースです。
ハンバーガーチェーンのマクドナルドでは、午前10:30まで限定で朝食メニューを提供していましたが、その一方米マクドナルドは「10:30以降も朝食メニューを食べたい」というニーズを認識していました。
このニーズの大きさを計るためにマクドナルドはTwitterでのツイートを定量的に計測し、想定よりも多くのユーザーが朝食メニューを求めていることを発見します。
この結果をふまえ、多額のコストをかけ設備を改修し、多くの店舗で朝食メニューの終日提供を開始。その結果、14四半期連続の売上減少を反転させることに成功しています。
分析した結果をもとに、そのニーズを満たすような商品・サービスを生産し提供できるようになります。新しいビジネスチャンスを創出できるのも、データ活用の大きなメリットのひとつです。
運用コストの削減
ビジネスは常にコスト管理を強いられます。ソフトウェア開発や広告キャンペーンなどの小さな単位のコストから、月次の予実管理まで日々コストを細かく管理することが必要になります。
しかしこのような課題もデータを活用すれば解決できます。日々発生するコストのデータを分析し、コストが多く発生しているポイントを特定できます。問題点が明確になることで、現実的な運用コスト削減が可能です。
また従量課金制のサービスの場合では、日々のデータから将来的に発生するコストを予想し、想定外の請求額に驚く事態を防止できる点も魅力です。
データ活用を実施してビジネスの成長を加速させる手順

データ活用の基本はデータの分析とその活用です。
しかしいきなりデータを収集しても、データ活用の目的が明確でなければ分析はできてもビジネスにおいて効果的に活用できません。
データを活用しビジネスに活かしていくためにも、データ活用は以下のステップで進めていくのが有効です。
データにおける自社の課題や活用する目的を明確にする
まずは自社のデータ活用の課題や目的を明確にしましょう。
すでにデータ活用を試みているものの、いまいち成果が出ていないケースでも、いったん立ち止まり課題の特定や目的の明確化に立ち返ることが重要です。
最初はデータから思いがけないインサイトを得ようとせず、自社が抱えている課題感をベースにデータ活用の目的を決めていきます。
たとえば毎月のコスト管理が自社のビジネス上の課題であれば、目的は「コストデータの集中管理」と設計します。
自社が抱えている課題をベースに目的が明確に決まると、次のようにデータの流れをイメージし、具体的なデータ活用の実装に近づけます。
- その活用に必要なデータはなにか
- どこからどうやって収集したらいいか
コストデータであれば、社内で発生するコストのデータが自動で取得されるのが理想的です。またコストデータの漏れを防ぐためには社外から届く請求データだけでなく、社内で利用している従量課金サービスの利用量なども把握する必要があります。
どのようなデータを取得・分析してビジネスに活用するのか決める
データの活用イメージに従って、取得・分析するデータの種類や形式を決定しましょう。
たとえばコストのデータと一口に言っても、データの形式はいくつも考えられます。請求書のように紙で送られてくるデータがあれば、クレジットカード払いの請求書としてまとめられているコストのデータもあります。
それらのデータを取得・分析するには、以下のような管理に必要な項目が表形式のデータになっているのが理想的です。
- コストの発生日時
- 品目名
- 部署・部門
- 金額
これらの項目を取得するために、紙のデータであれば手入力が必要になり、欠けている項目があるデータは分析までのどこかで補う必要があります。
データの活用はビジネスにおける活用イメージから必要な要件を逆算して考えるようにしましょう。
データ活用の具体的なアクションプランを立案する
データの活用イメージができ、必要な要件が決まったら、「実際にそのデータをどう取得するか」「どう活用するか」アクションプランを立案します。
コストデータを例に挙げると、下記のような項目を検討することになるでしょう。
- 誰がどのシートにコストを記入するのか
- 漏れをなくす工夫はどうすればよいか
- リアルタイムでダッシュボードを更新するにはどうしたらよいか
- コストのデータは誰がチェックするのか
- 先月のコストとの比較に使いたいのか、コストの削減効果を測定したいのか
さらに、データの管理者やそのデータを振り返るタイミングを決めるなど、具体的なデータ活用のアクションプランを詰めていきます。
アクションプランを立案する際には必要なデータ要件をすべて満たすことが望ましいです。しかし既存のシステムやフロー上の工夫では、満たせない要件もあるかもしれません。
その場合はひとつ前、あるいはふたつ前のステップに立ち返って修正が必要です。
実施したアクションプランの効果検証・改善
データを取得・整備する手間をかけても分析結果が活用されないというケースは、データ活用に失敗する典型的な例のひとつです。
下記のような実際に運用していくなかで見えてくる課題は、日々の効果検証・改善で修正する必要があります。
- アクションプランを策定した時点での想定よりもデータの取得が大変
- データ分析の結果が整っておらず、読み取るのに時間がかかる
再びコストデータを例に挙げると、運用のなかで「各部門が期日通りにデータを提出してくれないのでデータを最新に保てない」のような課題があるかもしれません。きちんと最新のデータを収集できるよう「経費精算のフローを周知徹底し、期日にデータが揃うよう呼びかける」など対策しましょう。
アクションプランの振り返りは、「アクションプラン通りの運用ができているか」「正確で、最新のデータを集められるか」など、プロセス部分にばかりフォーカスしてしまいがちです。
しかしデータ活用はデータから示唆を得られているかどうかが最も重要であり、プロセス以上に「データをうまく活用できているか」、「プロセスを改善することで活用結果を高められるか」など結果部分への振り返りも忘れないようにしましょう。
データ活用に失敗しないための秘訣とは?

実際にデータを動かしてみての改善サイクルも重要ですが、初期段階でデータ活用を失敗しないために押さえておきたいポイントが4つあります。
- ツールを導入する前にデータ分析基盤を構築する
- 外部のサポートを受ける
- 不要なデータは切り捨てる
- ツールを導入しすぎない
本章ではデータ活用に失敗しないための4つの秘訣をそれぞれ紹介します。
ツールを導入する前にデータ分析基盤を構築する
データが散逸しているという課題に対して有効なのがデータ分析基盤の構築です。
例えば以下のような状況です。
- マーケティングが使用するMAツール
- セールスが使用するSFA/CRMツール
- 経理で使用する会計ソフト、経理ツール
このような状況では、データを各ツールから取得してくるだけでも大きな負担となり、日々最新のデータを集めるだけで精一杯になってしまって、データ活用に失敗してしまうケースは多いです。
しかし、データの取得・加工に特化し、非データエンジニアでも運用可能なデータ分析基盤を用意することで、扱うツールが増えても対処しやすいデータ基盤を整えられます。データ分析基盤が整備されれば、多くのツールからデータを収集できるようになることでデータを異なる視点で分析できるようになり、データ活用の幅を広げやすくなります。
外部のサポートを受ける
迅速にデータ活用を実現したいなら、自社にデータ活用のノウハウがなければ外部のベンダーにサポートを依頼するのもひとつの手です。
全社からのデータを集約するなど規模の大きいデータ活用のケースでは、活用イメージの検討・データ分析のアクションプラン策定の段階で躓いてしまいます。なかなかデータ活用が進まず、ビジネス上の意思決定を送らせかねません。
とくに近年登場したデータエンジニアリングサービスのベンダーは、データ分析だけでなくデータ活用のノウハウも豊富で、有償のサポートによりデータ分析・活用をトータルでサポートしてもらえるケースもあります。
自社のリソースで課題に対処することも大切ですが、外部のサポートを受ければそれだけ素早いアクションが実現できます。
不要なデータは切り捨てる
不要なデータは削除するなど、整理をしましょう。
データを手当たり次第集めてしまうと、結局どのデータが重要かわからず、分析結果がわかりにくくなってしまいデータ活用に失敗してしまいます。とくに、企業の規模が大きくなるほど社内のデータ量は膨大になる傾向があります。
データ量が膨大で困っているケースでは、一度データをすべて分析基盤に取り込み、必要なデータだけを分析に使用するのが有効です。基盤内で日別のデータを月別のデータに変換しておくだけでも、データの整理には有効といえます。
データを取得できるからといってすべての情報を分析しようとせず、はじめに考えた活用イメージに必要なデータだけをうまく抽出するのがデータ活用のコツです。
取捨選択の視点を持ち、必要なデータの分析だけに集中するようにしましょう。
ツールを導入しすぎない
「不要なデータは切り捨てる」の項目で述べたように、利用するツールが増えるほどデータ取得の難易度が上がり、活用に不要なデータに悩まされる可能性も高くなります。
近年普及したクラウドサービスは初期の導入コストが安価で済み、利用料金の形態の多くは従量課金です。そのため、導入ハードルの低さからたくさんのツールを導入しまうということも少なくありません。
新たなツールを検討する際は、ツールそのものから得られるメリットと同時に「ツールからどのようなデータが得られるか」「得られるデータは既存のデータ活用に活かせそうか」という視点をもつとよいでしょう。
データ活用を実施して業務の改善・事業の拡大につながった成功事例3選
データを活用した結果、具体的にどのようなメリットが得られるのか、本章ではデータ活用の成功事例として3社を紹介します。
株式会社Waqoo様
株式会社Waqoo様は「肌ナチュール」をはじめとするサブスクリプション型のDtoCブランド事業や「Waqoo D2C プラットフォーム」のSaas事業を展開しています。
複数の広告媒体に広告を出稿しており、各広告媒体から取得したデータを、分析用のシートに転記する作業を人の手で実施していました。
その結果、分析業務は属人化、月あたり60時間にもなる集計作業で担当者の時間的リソースを圧迫していたのです。
そこで株式会社Waqoo様はデータの転送手段としてtrocco®を導入し、データの集計作業を自動化することに成功。その結果60時間近い集計作業は0になりました。
くわえて、リアルタイムでの広告データ運用が可能になり、各媒体の広告効果を確認しながらスピーディーなPDCAを回せる体制の構築に成功しています。
弁護士ドットコム株式会社様
弁護士ドットコム株式会社様では、法律相談ポータルサイトである「弁護士ドットコム」をはじめ、専門家とユーザーをつなげるサービスを複数展開しています。
サービス間でデータの管理が断絶していたため、分析を担当する部署でもほかのサービスのデータでやったことを繰り返しているなど、データのサイロ化からくる非効率さを課題に感じていました。
そこでサービスごとのデータの統合を目指し、trocco®を軸にしたデータ分析基盤を構築。サイロ化していたデータを、Google BigQueryへ統合・集中管理できる体制を構築しました。
各サービスごとの横の連携が解消されただけでなく、月1回程度発生していたデータ転送エラーによるメンテナンス・復旧業務も削減することに成功しています。
株式会社メルカリ様
フリーマーケットアプリ「メルカリ」を運営する株式会社メルカリ様では、決済サービス「メルペイ」導入後の利用状況を分析する上で2つの問題を抱えていました。
- セールスサイドの使用するSFA/CRMツールに記録されるデータと、エンジニアサイドが参照する決済データがリンクしておらず分断していた
- その分断を解消するためのデータエンジニアが不足していた
この2つの問題を解決するにはETLツールを利用したデータの統合が必要でした。そこでtrocco®をベースにしたデータ分析基盤を構築。「メルペイ」導入までのデータにくわえ、導入後の利用実績もふまえたKPI・インセンティブ設計のアップデートに成功しました。
副次的な効果としてtrocco®が浸透した結果、営業データ以外のサービスでもデータ活用が進み、データドリブンな文化の加速にも成功しています。
まとめ

本記事では、今後ますます重要となるデータ活用のメリットや成功事例を紹介しました。
データ活用のノウハウがない企業では、紹介した事例のような大きな規模ではなくミニマムな活用からスタートさせると、失敗につながる可能性が低く有効的に進められます。
自社に使われないまま眠っているデータをビジネスに活用してみたい方は、本記事を参考にデータ活用を導入してはいかがでしょうか。
また弊社はデータ分析基盤構築サービスtrocco®を提供しています。
データ活用の大きなハードルとなるデータの取得を容易にするETL機能だけでなく、少人数のデータエンジニアでも分析基盤の運用が可能なデータマネジメント機能も備えたサービスです。
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