データフュージョンは、複数のデータソースを統合して、より豊かなインサイトを得るためのプロセスです。データフュージョンの実践により、企業は新しいビジネスモデルを構築し、競争上の優位性を確保し、業務効率を高めることができます。本記事では、データフュージョンの概要から、データフュージョンを実践するメリットや活用事例、実践する際の注意点を解説します。

データフュージョンとは?

データフュージョンは、異なるデータソースから情報を統合し、より正確なデータセットを生成する技術です。一般的には、ビジネスや研究などのさまざまな領域で情報の完全性と精度を向上させ、意思決定や洞察を深めるための有用な手法として広く活用されています。

たとえば、UAVのセンサや複数のデータベースなどの異なるソースからのデータを統合することで、より詳細で高品質な情報を取得できます。

また、統計分析の分野でも、異なる形式や収集条件のデータを統合し、分析に利用できる形式に整えることで、より包括的な情報を得ることができます。

データフュージョンとデータインテグレーションの違い

データフュージョンとデータインテグレーションは、データ統合をするプロセスが一致していますが目的やアプローチに差異があります。

データインテグレーションは、多様なデータソースをもとにデータを収集することによって事業の方針策定に必要なシステムプロセスやビジネスプロセスを導き出すことであり、データ統合の一部として使用される言葉です。データの統合と一貫性を確保することを目的としています。

一方、データフュージョンは、異なるデータソースから取得したデータを融合することにより、より詳細で完全性の高いデータを導き出し、価値のあるインサイトを提供します。データの融合に重きを置いているのがデータフュージョンの特徴です。

データフュージョンとデータマッシュアップの違い

データフュージョンとデータマッシュアップに関しても、どちらもデータ統合を重要なプロセスとして行いますが異なるアプローチや目的を持ちます。

データマッシュアップは、複数のソースから取得したデータを統合し、異なるデータの関連性やパターンを発見することが目的です。マッシュアップという言葉はもともと音楽業界で使われており、異なる曲を組み合わせて新しい楽曲を作り出す手法を指していました。転じてIT業界では、異なるデータソースを組み合わせて新しいサービスやシステムを作り出す手法として活用されています。たとえば、デジタルマーケティングやビジネス分析などの分野では、データマッシュアップが新たな価値を生み出す手段として注目されています。

一方、データフュージョンは、異なるデータソースから得られた情報を統合することで、より正確で練度の高いデータを生成する手法を指します。データフュージョンでは特にデータの融合に焦点を当てており、異なるソースからのデータを統合することにより、単一のデータソースでは得られなかったインサイトを得ることを目的としています。

データマッシュアップについて知りたい方はこちらの解説記事をご覧ください。
データマッシュアップについて解説:概要からメリット、実践方法や注意点、成功事例も紹介

データフュージョンが注目されている背景

デジタルを中心として経済が発展している今日の世界で、データはますます重要性を増しています。最近では、データから価値を引き出す手段としてデータフュージョンに注目する企業が多くなっています。

特に、ユーザーヒアリングを行った結果得られたデータの場合、サンプルとなるデータが限定的であったり、情報が不十分であることが多いです。このような問題にデータフュージョンは有効なアプローチ方法として着目されています。データフュージョンは異なるソースからのデータを統合することで新たなインサイトやパターンを発見し価値を生み出すことを目的としており、特にマーケティング分野やビジネスコンサルティング業界において大きな役割を果たしています。

データフュージョンには、ノンパラメトリックな方法とパラメトリックな方法の2つのアプローチがあります。ノンパラメトリックな方法では、データの属性間の距離を利用してデータ統合を行います。しかし、パラメトリックな方法では、統計的なモデルを適用してデータを融合・補完します。どちらの方法を選択するかは、事業の目的や実行のしやすさをもとに判断することが一般的です。

データフュージョンの活用事例

データフュージョンはさまざまな分野で活用され、大きな価値を生み出しています。下記にその事例を説明します。

まず、環境影響評価システムでは、環境シミュレータ結果と衛星画像を高度な3次元表示技術を備えたGISで統合することによって環境評価に関連する情報を一体化し、より詳細なデータ分析とデータの視覚化が可能となります。

次に、Google Cloudのデータ統合サービスであるCloud Data Fusionは、ETL(Extract,Transform,Load)に関わる機能をカバーし、複数のデータソースを効率的に統合します。データの抽出、変換、格納を行うETLのプロセスを簡素化に成功しているため、追加のプラグインやグラフィカルなインターフェースを提供し、柔軟で使いやすいデータ統合環境を構築しています。

さらに、マーケティングデータ統合サービスでは、データフュージョンを活用して広告データと不正検出データを統合する試みを行っています。これは、共有ディメンション値に基づくデータモデルを作成し、異なるデータセットを組み合わせることで広告の効果や不正行為の関係を分析する一助となっています。

それ以外にも、データフュージョン数理システムでは、異なる調査データを類似度に基づいて融合します。たとえば、テレビ視聴率調査と生活者動向の調査データを組み合わせることで、視聴者の興味関心や嗜好のインサイトを得る役割を果たしています。

データフュージョンの3つのメリット

データフュージョンには大きく分けて3つのメリットがあります。それぞれについて見ていきましょう。

低リスク・低コストでより正確な情報を得られる

1つ目のメリットは、低リスク・低コストでより正確な情報を得ることができることです。単一のデータソースから結論を導き出す場合、そのソースの誤りや偏りによって信頼性に欠ける結論を出してしまうリスクがあります。しかし、データフュージョンを行えば複数のソースからデータを統合することができるため、結果として導き出す結論のリスク分散につながります。さらに、既存のデータソースから取得したデータを組み合わせることにより、新たなデータ収集にかかるコストと時間の削減も図れます。

より深いインサイトを得られる

2つ目のメリットは、より深いインサイトを得ることができることです。異なるソースから取得したデータを統合することで、重要な顧客動向や事業の将来性などをより詳細に分析することができるようになるため、事業の戦略立案や意思決定の際の重要な判断材料として活用できます。

効率的な意思決定ができる

データフュージョンの最後のメリットは、効率的な意思決定のサポートができることです。データフュージョンによって得られた統合データは一貫性と完成度が向上したデータであるため、それをもとに迅速な意思決定ができ、結果として事業の競争力の強化が期待できます。

データフュージョンのベストプラクティス

データフュージョンを行う際のベストプラクティスとしては、下記4つの項目を順に行うことです。

目的の明確化

どのデータとデータを統合するか、統合したデータをどのように活用するかを明確にすることで事業全体の目標を明確化させましょう。目的を明確化すれば、データをより効率的に利用できるため戦略立案や方針の策定に役立ちます。

データクレンジングや整理を行う

データの信頼性・整合性・精度を担保するために、データクレンジングやデータの整理を行いましょう。具体的には、欠損値の処理、異常値の検出、重複データの排除などを行います。この作業によって扱うデータの正確性・信頼性を向上させることができます。

データクレンジングについては『データクレンジングとは?エクセルのやり方や手順、ルールをわかりやすく解説』の記事で詳細について説明しています。

適切なツールと技術の選定

扱うデータの量や複雑さに応じて、適切なデータフュージョンツールや技術の選定を行います。特に、データ統合・変換・統計解析(ELT)に必要な機能を備えたツールを活用すれば、より効率的かつ正確にデータフュージョンが実現できます。

評価と調整の反復

最後に、データフュージョンを行った結果に対して定期的な評価・調整を行いましょう。統合したデータの品質や結果の妥当性を検証することでデータフュージョンの改善点や課題を洗い出すことで、データフュージョンのプロセスを最適化します。最適なデータを扱うことは息の長い事業構築の一端となります。

データフュージョンを実践するときの注意点

データフュージョンを行う目的を明確にする

前述しましたが、データフュージョンによってどのようなデータを得たいのか、データを得ることによって何に役立てたいのかを明確にすることは大変重要です。目的の明確化によって取得したデータにどのような効果を望んでいるのかが組織内で共有できるため、結果として事業の方針策定の際に役立ちます。

高度な計算手法を理解する

データフュージョンについて調査すると複雑な数式やロジックが紹介されている記事が多く見られますが、そのどれもが分散共分散行列や条件付確率などの大学数学以上の知識を必要とします。データフュージョンを成功させたいのであればこのような計算方法を理解し具体的なプロセスを明確化することが必須となります。複雑な計算方法を適切に活用することでデータの関連性やパターンを深く理解し、正確な予測や分析をすることができます。

共通属性を多く用意する

異なるソースから得たデータの共通の属性や特徴を発見することは、その発見したデータを組み合わせることによって予測の精度を向上させることにつながります。

前述した通り、データフュージョンにおいては、パフォーマンスを定期的にモニタリングし、必要に応じてプロセスを調整することが肝要です。このモニタリングと調整によって効率と精度を維持し、新たなデータソースや技術への対応力を高めることが期待できます。

データ品質を確保する

データの品質を確保することもデータフュージョンでは不可欠です。前述したデータクレンジングや整理を行い、データの信頼性や一貫性を高めることで、より正確性の高い結果を得られます。

スケーラビリティを考慮する

将来的に事業が成長する場合に備え、スケーラビリティを考慮することも重要です。スケーラビリティとは、システムが大量のデータや利用者の増加に対応できる能力のことです。あらかじめスケールできるデータフュージョンツールを選定することで、将来的なデータの増加や変化に柔軟に対応できるシステムやプロセスが構築できます。

スケーラビリティについては『BigQueryとは?利用メリットから活用方法、使い方のコツを解説』にて詳しく説明しています。

セキュリティ・プライバシーの対策をする

データフュージョンを行う際に、融合するデータが個人情報や事業の重大情報を含んでいないか十分に確認しましょう。また、データフュージョンツールを選定する際の基準として、不正アクセスやデータ漏洩に対策する機能を備えているかチェックしましょう。

まとめ

上記のように、データフュージョンに成功した場合ビジネスに大変役立つ貴重なデータを得ることができます。ですが実際にデータフュージョンを行うには手順として、前述したような複雑な数式を理解する工数が必要となるためそこで躓くケースも多く見受けられます。データフュージョンツールとして日本で代表的なサービスにGoogle Data Fusionが挙げられますがこちらも若干学習コストが高いです。

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trocco® ライター

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