現代のビジネスにおいて、データは重要な財産であり、その価値を最大限に引き出すことが企業の競争力を高めます。
データインテグレーション(データ統合)は、企業が異なるソースからのデータを一元化し、より迅速かつ正確な意思決定をサポートするために不可欠です。統合されたデータは、ビジネスのインサイトを明らかにし、顧客理解を深めることで、パーソナライズされたサービス提供や新しいビジネスチャンスの発見に寄与します。その結果、競争力を保ち、市場の変化に適応する企業の柔軟性を向上させます。
この記事ではデータインテグレーション(データ統合)の定義や実践手順、さらに使用されるツールやデータ統合の実践事例を紹介します。
データインテグレーション(データ統合)とは?

データインテグレーション(データ統合)は、多様な情報源からデータを収集し、統合し、最終的に有益な情報へとデータを変換する工程です。
現代のビジネス環境では、社内外の異なるデータソースからの情報収集とデータ活用のためのその変換が不可欠です。
とくに、ソーシャルメディア、モバイルアプリ、IoTデバイスなどの外部からのデータが急増し、データの統合と活用は新たな課題となっています。この課題に対処する手段が、データインテグレーションです。
データインテグレーションの主な目的は、データソースの統合とデータとプログラムの一元的な管理です。これにより、データの流れが透明化され、内部のデータ資産を最大限に活用できるようになります。また、新たな基盤を構築する必要がなくなり、コスト削減も期待できます。
データインテグレーションとデータマイグレーションの違い

データインテグレーション(データ統合)とデータマイグレーション(データ移行)は、それぞれ特定の役割を担っています。
データインテグレーションは、データの統合と効率的なデータフローに焦点を当て、社内の情報資産を活用します。これにより、異なる情報ソースを基にデータを統合し、ビジネスプロセスの効率化や方針策定に必要な情報を提供します。
一方、データマイグレーションは、システム間のデータ移行を管理するプロセスで、システムのアップグレードやデータベースの変更時などに重要です。このプロセスにはデータのETL(Extract , Transform, Load:抽出、変換、格納)が含まれ、移行中のデータの一貫性や正確性を確保します。
データインテグレーションが必要になる3つの理由

日々増大するデータ量を有効活用することはビジネスにとって欠かせません。ここでは、データインテグレーション(データ統合)が必要になる理由を3つ説明します。
データが散在しているため
データインテグレーションは、社内に点在するデータの課題へのアプローチ方法として有用です。
現代の企業内では、多様なシステムとデータストアを運用することが一般的となっています。このようなシステムはデータを異なるフォーマットで保持しているため、データが断片化し、活用が難しくなっています。データインテグレーションを用いれば、これらの分散したデータを収集し、統合するため、データの一元化が可能となります。
データ量が増えているため
企業は日々多様なソースから大量のデータを収集していますが、このデータを十分に活用できていないのが現状です。このような場合にデータインテグレーションを用いれば、データを統合し、品質を向上させるため、データドリブンな経営をサポートします。
業務の効率化が求められるため
競争の激化する市場において、業務プロセスの効率化は生存に関わる重要な要素です。このような市場で生存するための業務の効率化でもデータインテグレーションは役立ちます。
社内でデータを統合し、可視化することで、スピーディな意思決定を可能にし、生産性を向上させます。たとえば、生産分野・物流分野ではリアルタイムなデータ共有によって在庫を最適化し、販売分野・営業分野では顧客情報の一元管理を通じて顧客対応の効率化を図っています。
データインテグレーション(データ統合)の実践手順

以下は、データインテグレーションの4つの主要なステップです。
データの発見と抽出
最初に、データの発見と抽出を行います。このステップでは、社内のデータがどこに存在し、どのような形式で格納されているかを調査します。データの移動経路も明確に把握し、包括的なデータマップを作成します。その次に、データコネクタを使用して、必要なデータを抽出します。この段階での正確なデータ抽出は、後述するステップの基盤となります。
データアセスメント
発見と抽出をした後に実施するデータアセスメントでは、抽出したデータの品質を評価し、データソースの内容、構造、品質に関する調査を行います。相関関係、欠損値の有無、データの整合性、表記ゆれなどを分析し、データ分析レポートを生成します。このレポートは、データのステータスを理解し、品質を確保するための行動計画を立てるのに役立ちます。
データクレンジング
データアセスメントから得られた情報に基づいて、データクレンジングのルールを定義しクレンジングを実施します。ルールの定義には、マスタデータの調整、データ整合性の修正、不正確なデータの修正、表記の統一、不要データの削除、重複データの除去などが含まれます。クレンジングによってデータ品質を高め、精度の高い分析の実現に近づきます。
データ統合
最後に、データ統合を実施します。データクレンジングが完了したデータを、ETLツールを使用して、統合プラットフォームに集約します。ETLツールは、データの抽出、変換、格納を自動化するツールであり、データの統合プロセスを効率化します。データウェアハウスなどの統合プラットフォームにデータを統合することで、社内で一貫性のあるデータセットを活用でき、意思決定や業務の最適化が図れます。
データインテグレーション(データ統合)に使われるコンポーネントやツール

データインテグレーションのプロセスにおいて重要な役割を果たす3つのコンポーネントやツールとしては、下記3つが挙げられます。
- データレイク
- データウェアハウス
- ETLツール
それぞれについて解説します。
データレイク
データレイクは、多様なデータソースからの生データを、そのままの形式で蓄積するシステムです。データの形式や構造に干渉せず、そのままのデータで保管できます。
データレイクは、将来の用途に備えて柔軟なデータの保存と活用を可能にします。データレイク内には、XMLファイルやCSVファイルなどの構造化データから、文書、電子メール、画像、動画などの非構造化データまで、多岐にわたるデータ形式が混在しています。このツールの主な目的は、データの収集と保管であり、スキーマオンリード(Schema On Read)の原則に基づいています。スキーマオンリードでは、データを格納する際にあらかじめスキーマを定義しないため、データを読み込む際にスキーマの適用と解釈が行われます。データレイクはデータエンジニア、データアーキテクトなど社内全体のメンバーによって利用され、機械学習と組み合わせて新たなインサイトを獲得します。
データウェアハウス
データウェアハウスは、データの分析と報告を目的として整形されたデータを格納するデータベースの一種です。データウェアハウス内のデータは形式化され、時系列に整理されています。このツールは、特定のデータの分析を支援し、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールを通じてデータを視覚化します。通常、データウェアハウスは高速なデータ処理を可能にし、データ分析基盤の中核を担います。
ETLツール
前述したETLツールも、データインテグレーションに役立つ代表的なツールです。ETLツールはデータの抽出、変換、および格納を自動化するツールです。このツールは、データをソースから抽出し、必要な形式に変換し、データウェアハウスなどの統合プラットフォームに格納します。これにより、データ統合プロセスが効率的に実行され、データ品質が向上し、データ分析が容易になります。また、ELTモデルにも対応しているため、データの統合方法が選択できます。
データインテグレーション(データ統合)の事例3選

ここでは、データインテグレーションを行った企業事例を3つ取り上げ、紹介します。
株式会社オープンエイト
株式会社オープンエイトでは、複数のシステムからのデータ統合と、非エンジニアスタッフへのデータアクセスを実現しました。
データインテグレーションを行う以前は、異なるデータソースからデータを収集し、プロダクトデータと商談データが2つのシステムのソースから提供されていました。この不統一性により、データの一貫性の欠如や異なる定義による混乱を招いていました。
また、データ整理に手動の作業が必要で、非効率的で時間を浪費していました。さらに、データへのアクセス権がデータ専門のスタッフに制限され、非エンジニアのスタッフにはデータ分析に関連する機能が提供されていませんでした。
本課題に対し、trocco®を用いてデータ統合を実現し、すべてのデータソースを一元化することで、データのSingle Source of Truth確立への第一歩となりました。その結果、データの一貫性が向上し、異なるデータソースからの情報を効果的に統合できるようになりました。データへのアクセス権が非エンジニアのスタッフにも提供され、誰もがデータにアクセスし、簡単な分析を行える状態が実現したということです。さらに、CSの指標やビジネス指標などのデータを自動的に出力できるようになり、作業時間が大幅に削減され、スピーディな意思決定が可能になりました。
株式会社ヤプリ
株式会社ヤプリは、異なる部門のツールを統合し、効率的なデータ分析基盤の構築をしました。
それ以前は、組織内での業務効率化と意思決定の向上を目指し、データ分析基盤の構築が必要とされていました。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスといった異なる部門が異なるツールを使用していたため、データの一元管理と統合は急務でした。
データ分析基盤構築に際して、まずヤプリが蓄積したアプリのデータを活用し、新たな価値を提供することを目的としてスタートしました。しかし、内部の課題を解決するために、プロジェクトメンバーがデータ分析基盤の構築に取り組むこととなりました。このプロジェクトにおいては効率的なデータ統合が重要であったため、trocco®が導入されました。
trocco®を用いてのデータインテグレーションを行った結果、データエンジニアの関与を最小限に抑え、効率的なデータ分析基盤の構築が実現しました。
また、異なる部門のビジネスフローをダッシュボード上でマッピングし、ビジネスチャンスや課題の特定が容易になりました。
株式会社ギフティ
株式会社ギフティは大規模リニューアルに伴うデータベースの統合と効率化を行いました。
同社は、同社が運営している個人向けカジュアルギフトサービス「giftee」は大規模なリニューアルを実施しました。このプロジェクトの中で、法人向けサービス「giftee for Business」とのデータベースの分離が計画され、それに伴い新旧2つのデータベースが誕生しました。これにより、データ処理には手作業が不可欠となり、1,000万規模のデータの処理に多くの時間を費やす状況が発生しました。
データ統合の選択肢としては、自社開発とETLツールの検討が行われました。しかし、自社開発はコストや運用の課題が大きく、十分なリソースも確保できなかったため、ETLツールの導入を決断しました。多数のツールを比較し、費用対効果を評価した結果、操作性に優れたtrocco®が選ばれました。
trocco®を導入した成果としては、データ処理にかかる手間と時間が著しく削減され、データ提供が迅速化したことです。また、データ分析の幅が広がり、深いインサイトを得ることができるようになり、サービス全体に好影響をもたらしました。それ以外にも、社内のデータ活用の文化が変化し、非エンジニア社員とデータの距離が縮まりました。
まとめ

本記事ではデータインテグレーション(データ統合)の概要やデータマイグレーションとの違い、必要になる理由や実践手順などについて解説しました。また、具体的な事例に触れ、実際にどのような課題があってデータインテグレーションが行われるのかを紹介しました。
データインテグレーションを実践するにはデータレイクやデータウェアハウス、ETLツールなどが用いられますが、中でもETLツールは、データクレンジングが完了したデータをこのツールでデータ統合するステップを踏むとスムーズにデータ統合が実現するため非常におすすめです。
trocco®は、ETL/データ転送・データマート生成・ジョブ管理・データガバナンスなどのデータエンジニアリング領域をカバーした、分析基盤構築・運用の支援SaaSです。
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