データマッピングは、一つのデータモデルやフォーマットから別のものへデータを変換するプロセスを指します。おもにデータ移行や統合の際に行われ、異なるソースからのデータを一貫性を持って統一的に扱うために行われます。

本記事では、データマッピングがどのようなものか、また、このプロセスの重要性や実践手順、実践の際のポイントについても解説します。

データマッピングとは

データマッピング(Data Mapping)とは、文字通り、異なるデータソースや異なるフォーマットのデータを変換・結合し、マッピング(対応付け)するプロセスを指します。

現代のデータドリブンなビジネスでは、複数のデータシステムを利用し、それぞれを連携してデータ活用を行うのが一般的です。しかし、異なるシステム間では、データフォーマットやデータの構造、粒度などが異なります。

そこで重要となるのが、データマッピングです。データマッピングでは、フィールド(名前や住所など)の対応付けやデータフォーマットの変換、データの結合・分割を行います。これらのプロセスにより、システム間の違いを越えたデータ統合ができるため、データの価値を最大限に引き出したデータ活用が行えるのです。

データマッピングが重要な3つの理由

データマッピングは、組織がデジタル変革を進める中で不可欠なプロセスです。データの一貫性や品質の確保、データ管理コストの最適化、そしてセキュリティ対策やプライバシー保護の実現のために、データマッピングはその中心となる役割を果たしています。

以下では、これらの理由をくわしく説明します。

データの一貫性や品質を確保する

今まさしくDX推進の状況下にある企業では、データのサイロ化が足かせとなり、効率的なデータ活用がスムーズに進まないケースが多くあるでしょう。そこで、データマッピングを実践することにより、データの一元的な管理を実現できます。

異なるデータソースから抽出したデータを統一的に変換することで、データフォーマットの統一が行われたり、データの不一致が解消されたりします。これにより、データの一貫性が確保され、よりスムーズなデータ運用が実現できるでしょう。

そしてデータの一貫性が確保されれば、データ品質の向上にもつながります。データマッピングの際には、統一的なデータ変換や重複データの削除が行われるため、データの正確性が保たれるのです。またデータ変換などのプロセスが自動化されることで、人為的なエラーが削減できることも、データ品質の向上に貢献するひとつの要因といえます。

データ管理にかかるコストを最適化できる

組織内でデータの一元的な管理ができていない場合、必要なデータと不必要なデータの判断が難しく、重複したデータの増加にもつながってしまいます。この状況が続いてしまうと、データ量が際限なく増えていき、管理コストも急増してしまいます。

そこで、データマッピングが重要になります。データマッピングにより、異なるシステムからのデータを変換し統合させることで、データの一元的な管理を実現します。一元管理が可能になると、活用に必要なデータのみを保管でき、無駄な管理コストの削減が期待できるでしょう。

さらに、データマッピングによりデータ変換や整理が自動化されると、手作業で行っていたプロセスでの人為的なエラーが減少します。これにより、エラーによって生じる修正コストや再処理にかかるコストを削減できます。

セキュリティ対策やプライバシー保護につながる

データマッピングでは、フィールドの対応付けにより、個人情報などの管理を強化できるため、セキュリティ対策やプライバシー保護へ大きな役割を果たします。

現代では、SaaSなどの外部サービスを利用する機会が増え、それに伴ってデータの管理が複雑化しました。さらに、2022年4月に施行された改正個人情報保護法により、開示請求への対応や利用目的の詳細な説明などが求められるようになりました。管理の複雑化やデータの取り扱いへの厳重な管理が求められたことで、データマッピングが注目されるようになっています。

また、名前や住所、電話番号などの個人情報だけでなく組織の機密情報の漏洩対策にも、データマッピングは有効です。セキュリティ対策やプライバシー保護に関する業務をスムーズに行うためにも、データマッピングは重要なプロセスであるといえます。

データマッピングの実践手順

ここでは、データマッピングを実践する際の一般的な手順を紹介します。

企業や業界の状況によって手順の詳細や順序が変わる場合があるため、自社で実践する場合は適切なプロセスになるよう調節してください。

変換されるデータのソースとターゲットの定義

はじめに、データマッピングによって変換されるデータソースとターゲットを明確に定義します。異なるシステム間でのデータ連携の場合は、それぞれのスキーマやフィールドの対応関係を確認しておくことも大切です。

変換前のソースデータについては、「どこから抽出しているのか」や「どのようなデータフォーマットで提供されているのか」などを明確化します。また変換後のターゲットについても同様に、データフォーマットや構造を把握しておきます。

ターゲットデータモデルの理解

データソースとターゲットの定義と同時に、ターゲットデータモデルを詳細に理解しておくことも大切です。ターゲットモデルを理解しておくことで、ソースデータとターゲットデータの対応関係を正確に把握でき、効率的なマッピング設計につながります。

ターゲットデータモデルのデータフォーマットを理解しておくことで、たとえば整数型から浮動小数点型への変換が必要な場合、その変換に基づいた適切な変換処理を行えます。ターゲットデータモデルの事前の理解は、データの整合性やデータ品質を確保するうえで、非常に重要といえます。

マッピングルールの定義

マッピングルールの定義は、ソースデータをターゲットデータに変換する際の具体的な方法を明確化するプロセスです。マッピングルールの定義は、変換後のターゲットデータの品質やデータマッピングの効率に直接的に影響するため、定義の際には慎重に行う必要があります。

具体的には、ソースデータとターゲットデータの各フィールドの対応関係や、データフォーマットの変換の定義、特定の条件の定義などを行います。処理が複雑であったりデータ量が多かったりする場合には、マッピングを最適化するためのルールをあらかじめ定義しておくことが大切です。

データマッピングの実施

マッピングルールの定義が終わって設計が完了したら、実際にデータマッピングを実施します。この際、事前に定義したマッピングルールに基づいて、データ変換の作業が正しく行われているか確認します。

データ変換中に予期せぬエラーや異常が発生した際には、適切なエラーハンドリングを行う必要があります。たとえば、エラーログの作成や通知手段の設定を行うことで、エラーに素早く対処できるような対策をしておくことが重要です。

テストと検証

データマッピングの実施が完了したら、データの変換や移行が正しく行われているか検証します。検証は、あらかじめ定義した設計通りにデータマッピングが行われ、期待した結果が得られているかを確認するための非常に重要なフェーズです。

テストのデータセットを使用し、データマッピング後のデータ変換の結果を検証します。同時に、エラーチェックやデータの一貫性も確認し、必要に応じて修正や調整を行います。

監視と最適化

データマッピングが本格的に稼働し始めたら、性能上の問題がないか、システムの動作を継続的に監視します。

継続的にデータ統合をする際には、新しいデータソースの追加やターゲットデータの要件の変更などが生じる可能性があります。それらに対応できるよう、マッピングルールやプロセスの最適化を行うことが必要です。

データソースが複数である場合や、データ量が多く自動化の処理が必要である場合は、ETLツールを利用すると良いでしょう。ETLツールはデータの変換や統合のプロセスを自動化できるため、効率的なデータマッピングを実現できます。

データマッピングを実践する時のポイント

データマッピングを行う際は、以下3つのポイントを押さえておきましょう。

所属する組織や状況によって異なる場合があるため、実際の運用時には、組織の状況やニーズに合わせて適切に適用しましょう。

定期的に見直し、更新を行う

データ活用を進めていくうえで、要件や需要の変化、技術の進化などにより、データソースやターゲットの変更・追加が必要となるケースがあります。データ量や処理プロセスの複雑さが変わる場合、データマッピングの処理性能を最適化する必要があるからです。

データソースやターゲットの要件や構造自体が変わる場合、マッピングルールや新たな変換処理への変更を行います。新しいデータソースが導入されたり、新たな顧客との連携が必要になったりした場合には、データマッピングの更新が必要です。

定期的な更新・見直しはデータ品質を保持するためにも非常に重要です。データソースやターゲットの追加、またはそれらの変更が必要になった際、新たなエラーが生じ修正が必要となる可能性があります。定期的な見直しと更新により、データの正確性と一貫性を保持し続けることが大切です。

自動化ツールを活用する

データマッピングを実践する際、自動化ツールを活用すると、データの抽出から変換までの処理プロセスを自動化でき、データの一貫性を保持できます。また、手作業によって生じる人為的なエラーが削減できるため、データの正確性が保たれます。

自動化ツールの活用は、柔軟性や拡張性の観点からも非常に大きな恩恵を受けられるでしょう。手作業でデータマッピングのプロセスを行う場合、扱えるデータ量やデータソースの複雑さには限度があります。しかし、自動化ツールを活用すれば、組織の事業拡大に伴いデータ量の増加やデータソースの複雑化が起きても、効率的なデータマッピングが可能です。

また、自動化ツールの機能により、リアルタイムでのデータ変換が可能になるケースがあります。リアルタイム処理が可能になれば、最新のデータを分析へ反映でき、効果的な意思決定を素早く行えます。

最終確認は人が行うようにする

データマッピングの効率化には、自動化ツールの活用が非常に効果的ですが、自動化ツールでは予期せぬエラーや不具合が生じる可能性があります。誤ったデータを活用し重大なミスを招かぬよう、最終確認は人が行うことが大切です。

また、プログラム上の不具合やエラーが起きていなくとも、事前に定めていたビジネスルールなどが適用されていない可能性があります。このようなケースに対応するためには、データ活用の意図を理解している人が慎重に確認し、データの信頼性を保持する必要があるのです。

まとめ

本記事では、データマッピングの概要や実践手順、実践のポイントについて解説しました。

データマッピングは、データ品質を確保するために非常に重要な役割を果たします。そのほかにも、データの管理コスト削減や、セキュリティ対策やプライバシー保護など、データ運用においてさまざまな恩恵を受けられます。

ただ、実践手順が明確化され、組織内のメンバーと情報共有ができていないと、データ品質が確保されていなかったり、効率的にプロセスを実行できなかったりしてしまいます。実践の前に、本記事で紹介したような手順をあらかじめ共有したり、自動化ツールなどの導入を検討しておくとよいでしょう。

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