データマッシュアップは、複数のデータソースを組み合わせて新しい価値を生み出す技術です。この記事では、データマッシュアップの概要や実行するメリット、具体的な実行方法などについて解説します。また、データマッシュアップを実行するために必要な技術やツール、戦略、ベストプラクティス、コスト、リスク、成功事例なども取り上げます。

データマッシュアップとは?

データマッシュアップとは、さまざまなデータソースから取得した情報を統合することで異なるデータの関連性やパターンを発見することを目的としており、デジタルマーケティングの分野やビジネス分析などで新たな価値を生み出す手法として注目されています。

マッシュアップは元々音楽業界で使われていた言葉で、複数の異なる曲を組み合わせて新しい曲を作り出す手法を指しています。一方IT業界では、異なるシステムやコンテンツを組み合わせて新たなサービスを作り出すための手法という意味で用いられます。たとえば、Googleマップの地図情報と天気情報を組み合わせて観光地の天気予報を表示するサービスを作ることがデータマッシュアップです。

データマッシュアップの活用事例

データマッシュアップは、さまざまな業界や分野で広く活用されています。ビジネス分析の分野では、異なるソースから取得したデータをマッシュアップすることで、市場のトレンドや顧客動向を理解し、事業の方向性策定をサポートします。たとえば、企業の顧客データに外部の企業データベースから情報を追加することで、より詳細な顧客プロファイルを構築することができます。

また、Webアプリケーションやモバイルアプリ業界では、さまざまなAPIから取得したデータを組み合わせて、顧客に対して豊富な情報や機能を提供します。たとえば、地図情報や検索情報、写真情報、買い物履歴、動画情報などを組み合わせることで、パーソナライズした情報を提供することができます。

それ以外にも、都市計画や交通システムの最適化など、公共サービスの改善にも活用されています。たと、交通データ、天候データ、人口統計データなどを組み合わせることで、交通渋滞の予測や最適なルートの提案が可能になります。

データマッシュアップとデータインテグレーションとの違い

データマッシュアップデータインテグレーション
目的異なるデータソースから取得した情報を組み合わせることによってデータの付加価値を追求するデータの一貫性と整合性を追求する
アプローチ異なるシステムやコンテンツを組み合わせて新たなサービスを作り出す異なるデータソースから取得したデータを統合し、一つの統合されたデータセットの作成をする

データマッシュアップとデータインテグレーションは両方ともデータの統合をメインの作業としていますが、アプローチや目的に違いがあります。

データインテグレーションとは、異なるデータソースから取得したデータを統合し、一つの統合されたデータセットの作成をすることを指し、データの一貫性と整合性を追求することを目的としています。

一方、データマッシュアップでは、異なるデータソースから取得した情報を組み合わせることによってデータの付加価値を追求することを目的としています。

具体的には、企業内の異なるシステムのデータを統合して全体のビジネスプロセスを管理する統一的なデータセットを作成することがデータインテグレーション、企業内のデータと外部のデータソースを組み合わせて市場や競合情報などの外部データとの関連性を見つけ出し、戦略的な意思決定に活用すルのがデータマッシュアップです。

データマッシュアップが必要になる背景

デジタル化の進展により、ビジネスや社会の中で膨大なデータが日々生成されるようになりました。多様なデータソースを有効活用することが市場の競争に勝つ肝ですが、通常はそれぞれのデータソースは分散しているためデータを一元的に活用することが難しい場合があります。このような背景から、データマッシュアップは必要とされています。

ここではデータマッシュアップが必要になった具体的な背景として以下の5つを挙げ、それぞれについて説明します。

  • ビッグデータとデータ分析の増加
  • 意思決定の改善
  • 新たなビジネスチャンスの発見
  • カスタマーエクスペリエンスの向上
  • データの可視化

ビッグデータとデータ分析の増加

近年、日々生成されるデータ量は爆発的に増加し、ビッグデータと呼ばれる大規模なデータセットが生まれています。このビッグデータを元に事業の方針策定をするためデータ分析を行う企業が多いですが、ビッグデータは複数のソースから生成されることが一般的です。多様なデータソースを組み合わせることによって、より総合的な分析が可能となります。

意思決定の改善

ビジネスにおいて競合に勝つためには迅速かつ正確な意思決定を行う必要がありますが、単一のデータソースのみから分析を行うと施策定義に必要な情報が不足してしまい、結果として適切な解が出せないリスクを孕んでしまいます。

このような場合にデータマッシュアップを行えば、多様なデータソースを統合しより包括的な情報を得られるため、より適切な施策決定に結びつけることができます。

新たなビジネスチャンスの発見

異なるデータソースから取得した情報を組み合わせることによって、新たなビジネスチャンスや市場動向の規則を発見する機会に恵まれます。

たとえば、外部のデータソースと社内のデータソースを組み合わせることにより、新たな顧客セグメントや需要の傾向を把握できるため、新規商品やサービスの開発につなげられます。

カスタマーエクスペリエンスの向上

技術の発展により、個々人の趣味嗜好にパーソナライズされたサービスや体験が提供されることはもはや当然となりつつあります。データマッシュアップを活用することにより顧客データを統合し、個人個人の動向に合わせたサービス提供が可能となるため、結果として顧客満足度の向上やロイヤルティの獲得につなげられます。

データの可視化

異なるデータソースを組み合わせることによってグラフやチャートなどによるデータの可視化が容易になるため、そのデータをより深く理解できるようになり分析が捗ります。

データマッシュアップを実践するメリット

新たなインサイトが得られる

データマッシュアップには、異なるデータソースからの情報を組み合わせることで新たなインサイトが得られるという大きなメリットがあります。単一のデータソースでは見えなかった関連性やパターンを発見することができるので、市場のトレンドや顧客の動向をより深く理解することにつながり、結果として事業の今後の方向性策定に役立ちます。

データの活用範囲が広がる

異なる情報源からのデータを組み合わせることで、より多角的な分析や予測が可能になります。たとえば、マーケティングデータとセールスデータを組み合わせることで、マーケティングキャンペーンの効果を評価できるので、結果として売上予測をより高い精度で行えます。

データの共有がしやすくなる

異なるデータソースの情報を統合したデータセットを作成することで複数の部門やチームが同じデータを利用できるようになり、情報の一貫性と効率性が向上します。たとえば、マーケティング部と営業部が同じ顧客データを共有することで、顧客に対するアプローチを個々に考えることができるので、組織全体の効率化が図れます。

データマッシュアップの課題

データ品質とデータの整合性

データマッシュアップを実施する上でメインとなる課題の一つに、異なるソースからのデータを統合する際のデータ品質とデータの整合性の確保が挙げられます。異なるデータソースから取得したデータは、形式や品質が異なる場合があります。

たとえば、データの正確性に欠ける情報、不整合なデータ、欠損したデータなどが含まれている可能性があり、このような悪いデータは統合されたデータの信頼性に悪影響を与えます。そのためデータマッシュアップを行う際には、データ品質管理の重要性を認識し、データの品質を向上させるための手法や手順を定義しておく必要があります。

データの機密性

異なるデータソースからのデータを統合する場合、個人情報や機密情報を含む場合には、データの機密性を担保する必要があります。とくに、異なるデータソースを組み合わせることで、元々は特定できなかった情報が明らかになる可能性があります。

そのためデータマッシュアップを行う組織は、適切なセキュリティ対策やデータプライバシーの保護策を実施することで、個人情報の漏洩や機密情報の不正利用を防ぐ必要があります。

データガバナンスの必要性

データマッシュアップでは他に、異なるデータソースからのデータアクセスやデータ管理が課題となることがあります。異なるデータソースのデータを統合する際には、データソースの所有権や利用許可の管理が必要です。

また、統合されたデータの一貫性や統一性を確保するためには、組織全体でデータガバナンスの枠組みを整備する必要があります。データガバナンスとは、データの使用や管理、プライバシー保護に関するポリシーや規則を策定し、組織内でのデータ活用の一貫性と適切な管理を実現する活動のことです。

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データガバナンスの全貌とは?必要性や取り組み方、事例をわかりやすくまとめました

データマッシュアップの主なプロセス

データの特定と収集

データマッシュアップを行うにあたっての最初のステップは、必要なデータを特定し収集することです。異なるデータソースからのデータを取り込むためには、APIやウェブスクレイピングツールなどを利用します。このステップでは、データ分析の目的や要件を考慮しながら、必要なデータを正確に取得することが要求されます。

データクリーニングと前処理

データクリーニングとは、データの正規化を含む作業です。このステップでは、表記ゆれの統一など、データの一貫性と品質を向上させるための処理が行われます。たとえば、顧客データベースでは「郵便番号から住所情報を追加する」などのデータ補完が行われることがあります。データマッシュアップによって、多様な情報源からデータを収集し補完できる情報の種類や量が増えたことで、より高度なデータクリーニングができるようになりました。意図的な偽りや誤入力などがあり一次データをそのまま利用するのは信頼性の観点から難しいため、クレンジングが必須となります。

データクリーニングはデータクレンジングとも呼ばれ、データの正確性・信頼性を高めるための重要なプロセスとしてデータ分析の分野では頻繁に行われています。

データクリーニング(データクレンジング)のメリットやExcelを用いた活用事例については

データクレンジングとは?エクセルのやり方や手順、ルールをわかりやすく解説で分かりやすく説明しています。ぜひご覧ください。

データ統合

3つ目のステップのデータ統合は、異なるソースから収集したデータを単一のデータセットに統合することを目的としています。このプロセスでは、たとえば、SQLやNoSQLデータベース、ETLツール(Extract, Transform, Load)などのデータ間の関連性を理解するための技術やツールが活用されることが多いです。

組織内で異なるシステムやソフトウェアを使用してデータが分散している場合にデータ統合を行うと、それぞれの部門やシステムで異なるデータの形式やラベル名が統一されるため、スムーズなデータ連携が可能となります。

それ以外にもマーケティング分野では、顧客に関する多角的なデータ分析が重要となるため、データ統合は非常に重要なプロセスと見なされています。

データ分析

4つ目のステップのデータ分析では統合されたデータを分析し、必要な情報やインサイトを抽出することが求められています。たとえば、統計分析や機械学習などのデータ分析技術を活用してデータの傾向やパターンを明らかにすることによって、競争力を高めるための戦略策定に活用されています。

データの可視化

最後のステップであるデータの可視化とは、得られたインサイトを視覚的に表現し、他のメンバーと共有するための手段として用いられます。このプロセスは大規模なデータセットのパターンや関係性を識別することを目的としています。

さらに、データの可視化によって隠れた情報や法則を明らかにすることで業績の向上に役立てることも可能です。

データマッシュアップを実践するためのポイント

データマッシュアップを行う目的を明確にする

データマッシュアップを実践する1つ目のポイントは、明確な目的を定義することです。データマッシュアップは目的が不明確なまま取り組むと、収集するデータや統合の方法に迷いが生じる可能性があります。

目的を明確にするためには、どのような情報を得たいのか、その情報を活用して何を達成したいのかを明確に理解することが重要です。

たとえば、マーケティング分野で顧客の行動パターンを捕捉したい場合、「異なるデータソースから顧客の購買履歴、オンラインアクティビティ、ソーシャルメディアの情報を統合し、ターゲット市場の嗜好や需要動向を把握すること」ということが目的になります。

適切なツール・技術を選定する 

データマッシュアップには、データ収集、クリーニング、統合、分析、可視化など、様々な工程が含まれますが、それぞれの工程に沿う最適なツールや技術を選びましょう。またそのほかに、ツールの使い勝手やサポート体制も考慮に入れると良いでしょう。

たとえば、データ収集にはAPIやウェブスクレイピングツールを使用し、データクリーニングには欠損データの処理や異常値の検出と処理などの手法を適用します。

適切なツールや技術を選ぶことで、作業の効率化を実現しつつデータマッシュアップの品質を確保することができます。

データの所有権と使用許可の確認する

データマッシュアップでは異なるソースからデータを収集する必要がありますが、その際にはデータの所有権と使用許可を確認しましょう。所有権や使用許可に関する契約や規制を遵守することで、信頼性の担保や法的な問題をクリアすることができます。また、今現在のみならず将来的な問題を回避するためにも、データの取得元や使用条件は明確に文書化しましょう。

まとめ

今回はデータマッシュアップの概要やメリット、成功させるためのポイントなどについて説明しました。データマッシュアップは一見難しそうな概念ではありますが、深く理解することでよりよいサービス構築や顧客分析につながります。

しかし実際にはさまざまなWeb API同士の連携やデータ分析などの技術的な分野を学習することが肝心となり、非エンジニアにはハードルが高い作業でもあります。

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