データマイニングは、大量のデータから有用なパターンや知識を抽出するプロセスです。データ内の関連性やトレンドを発見し、これを基に意思決定をサポートすることを目的に行われます。
データマイニングは多くの業界で行われており、データドリブンなビジネスを行う際には欠かせない存在となっています。
本記事ではデータマイニングの概要やメリット、手法や実践する際のポイントなどについて解説します。
データマイニングとは

データマイニングは、ビッグデータなど膨大な情報の中から、隠れた知見や価値あるパターンを見つけ出すための洗練された分析手法です。この手法は、鉱山から貴重な鉱石を掘り出すことになぞらえて「マイニング(mining/採鉱)」と命名され、データ解析に統計学やパターン認識、人工知能(AI)などが駆使されます。
データマイニングは多岐にわたり、売上予測や市場動向の予測、顧客の嗜好性の理解など、ビジネスにおいて膨大なデータを活用する上で不可欠です。また、データマイニングの結果から得られるデータは、DIKW(Data・Information・Knowledge・Wisdom:データ、情報、知識、知恵)モデルに則り、データから情報、情報から知識、そして知識を活用して物事を判断する力である「知恵」へと段階的に進化します。データマイニングは、競争力を高め、利益を最大化するための重要な手段として、現代のビジネス戦略に欠かせません。
データマイニングのメリット

以下はデータマイニングのメリットとして挙げられます。
データのパターンと関係の特定ができる
データマイニングは、さまざまな情報ソースから収集された膨大なデータの中から、隠れたパターンや相互関係を明らかにします。たとえば、ソーシャルメディアの投稿やリモートセンサーからのデータ、市場動向の詳細な分析など、多くの情報源が利用できます。データマイニングは、これらのデータを鋭敏に分析し、新たなインサイトを提供することで、ビッグデータを実用的な知識に変える強力な手段として機能します。そのため、伝統的な思考パターンにとらわれず、革新的なアプローチを可能にします。
顧客満足度、品質、価格設定の向上などができる
データマイニングは、多様な産業で幅広く活用されており、それぞれの業界に独自のメリットをもたらしています。競争が激しい通信・メディア・テクノロジー業界では、データマイニングを活用して顧客の行動パターンを把握し、顧客満足度の向上に努めています。
たとえば金融業界では、データマイニングを用いて詐欺対策や最適な価格設定を行っています。教育分野では、データマイニングアルゴリズムを利用して個別にカスタマイズされた教育プログラムを提供していたり、製造業では、リアルタイムな予測分析を通じて設備の効率性の向上を図ったりしています。そのほか、小売業では、大規模な顧客データベースを解析して販売と在庫管理を最適化し、顧客満足度向上の材料として活用されています。
環境の変化にすばやく対応できる
データマイニングは、リスクの予測や関連性の発見が素早くできるというメリットがあります。企業はデータマイニングを用いて将来の課題に対処し、新たな機会を迎えるための戦略を立案できます。このようなデータドリブンな意思決定により、変化の早い市場にいち早く対応する力をつけることができます。
データマイニングの主な手法

データマイニングの手法は多岐にわたりますが、ここでは「機械学習」と「統計分析」の観点から主なものを紹介します。
機械学習
機械学習は、データからパターンや関係性を学習し、予測モデルを構築するための手法です。主ななデータマイニングのアプローチとして、以下の3つが挙げられます。
アソシエーションルールマイニング(関連性分析)
アソシエーションルールマイニングは、データセット内のアイテム間の関連性を探求する手法です。この手法は、買い物かご内の商品の組み合わせやウェブページの訪問パターンなど、さまざまな分野で利用されています。たとえば、ECストアでは、顧客が特定の商品を購入した場合、関連商品を提案するためにアソシエーションルールを活用します。
マーケットバスケット分析
マーケットバスケット分析は、リテール業界でよく用いられる手法で、顧客が一緒に購入する商品の組み合わせや関連性を分析します。この手法は、クロスセルの機会の発見や商品の配置最適化などの戦略策定に役立ちます。たとえば、ある顧客が牛乳を購入するときに、どの商品と一緒に購入する傾向があるかを分析することで、効果的な商品配置やプロモーション戦略を考えることができます。
分類
分類は、データを異なるカテゴリやクラスに分けるための手法です。スパムメールの検出、文書のカテゴリ分類、医療診断など、多くのタスクで利用されます。分類アルゴリズムは、新しいデータポイントを正確に分類するために、訓練データをもとにモデルを構築します。
クラスタリング
クラスタリングは、データポイントを類似性に基づいてグループに分ける手法です。この手法は、市場セグメンテーション、顧客セグメンテーション、画像セグメンテーションなど、データのパターンを発見し、意味のあるグループに分類する場合に役立ちます。たとえば、顧客セグメンテーションにより、異なる顧客グループに対してカスタマイズされたマーケティング戦略を展開できます。
統計分析
統計分析は、データの特性を明らかにするために使用される手法群です。データの収集、仮説の検証、パターンの解釈、モデルの評価など、さまざまなフェーズで活用されます。代表的な、下記4種類の手法を説明します。
回帰分析
回帰分析は、1つまたは複数の説明変数と目的変数との関係を調査するための統計手法です。これにより、変数間の因果関係を理解し、将来の予測を行うモデルを構築できます。たとえば、マーケティング業界では、広告支出と売上の関係性を調査し、予算の最適化に活用します。
主成分分析(PCA)
主成分分析は、多次元データを低次元に射影し、データの構造を可視化および理解するための手法です。次元削減や特徴量の抽出に使用され、データの重要な要因を特定することに役立ちます。
因子分析
因子分析は、観測された変数をそれらの背後にある隠れた因子に関連付けるための手法です。顧客満足度や製品品質の評価など、多くの領域で因子分析が応用されています。
統計的仮説検定
仮説検定は、データを用いて統計的な仮説を検証するための手法です。たとえば、新しい治療法が既存の治療法よりも効果的であるかどうかを調査する際に、統計的仮説検定が使用されます。
データマイニングの実践手順

データマイニングのプロセスは、一般的には目的の明確化、データの収集・前処理、そしてデータの分析・効果検証のステップで構成されています。
下記に、それぞれの詳しい手順について解説します。
データマイニングの目的を明確にする
プロジェクトの目的を明確にしましょう。目的を明確にすることでプロジェクトの範囲を特定し、問題や課題を明示します。各ステークホルダーとの連携を通じてデータマイニングの目標や必要なリソースを把握します。
データの収集と前処理を行う
データの品質と量はデータマイニングの成功に欠かせません。データ収集は、社内のシステムやデータベースからのデータだけでなく、外部ソースからのデータも収集対象とします。データ収集後、データのクリーンアップ、統合、フォーマット変換などの前処理を行います。データの準備が整ったら、最終的なデータセットを選定し、その品質を評価します。
分析・効果検証
データの前処理が完了したら、データマイニングのモデリングフェーズに進みます。データマイニングソフトウェアを活用してデータを分析し、データ間のパターンや関連性を探求します。そして、データマイニング手法やツールを選択し、モデルを構築します。その後、モデルの評価を行い、必要に応じて調整を行います。最終的なモデルが完成したら、効果検証フェーズに進みます。モデルを元の目標に対して評価し、結果をビジネスアナリストと共有し、フィードバックを収集します。
データマイニングを行う際の2つのポイント

データマイニングを行う際のポイントを2つ取り上げ、説明します。
データウェアハウスを整備する
データの収集と管理を適切に行いましょうデータマイニングには大量のデータが必要です。それらを効果的に扱うためにはデータウェアハウス(DWH)の整備が有効です。DWHはデータを効率的に収集し、整理して保管するための仕組みであり、AI分析やデータマイニングに最適な形でデータを提供します。
DWHにはセキュリティを向上させる機能も備わっており、データの保護も担保します。
データクレンジングを行う
収集したデータには欠損、ノイズ、整合性のないデータが含まれることがあります。これらを修正するためのデータクレンジングはデータマイニングに欠かせないステップです。データクレンジングはツールを使うことで効率的に行えます。
まとめ

今回はデータマイニングについて解説しました。
ビジネスの成長や新しいチャンスを探る際には、適切なデータの活用が欠かせませんデータマイニングはその一環として有効な手段ですが、機械学習や統計分析といった専門的な知識が求められます。
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