現代のデジタル化された社会では、個人の情報が多岐にわたる場面で取り扱われており、その安全な管理は個人の権利保護だけでなく、ビジネスの信頼性を担保するための鍵となっています。そして、「どのようにデータを扱っていくか」を考慮するうえで重要になってくるのが、データプライバシーの概念です。

本記事では、データプライバシーの深い意味と重要性を探るとともに、その背後にある法的枠組みや保護手段について説明します。

データプライバシーとは

データプライバシーとは、個人の情報を適切に扱い、その機密性、完全性、利用可能性を保護することを指します。

データ活用を進めていくうえで、氏名や住所、電話番号などの個人情報や、ビジネス戦略などの機密情報を扱うケースが多々あります。今日、これらのデータは企業にとってもっとも重要な資源であり、意図せず関係者以外に利用されることはあってはなりません。それゆえに、データプライバシーの概念が必要となるのです。

デジタル化が進むにつれデータプライバシーの重要性は高まっており、データプライバシーが企業の社会的な信頼を左右するといっても過言ではありません。企業は、個人のプライバシーを尊重し、データの収集、処理、分析、共有などすべての過程で、データの適切な使用が求められます。

データセキュリティとの違い

データプライバシーとよく似た概念に、データセキュリティがあります。両社は密接に関係していますが、全く異なる存在であるため、個別にその意味を理解しておくことが重要です。

データプライバシーは先述したとおり、個人情報の取り扱いの規則を指しますが、データセキュリティは、悪用や不正アクセス、漏洩などのさまざまなリスクから守ることを指します。どちらの概念も、データ運用に関して、顧客からの信頼を得る点は共通していますが、その方法が異なります。

データプライバシーは、顧客に安心してデータを提供してもらうために行う取り組みです。顧客の信頼を得るために、顧客サービスやデータ管理の徹底を認知してもらう必要があり、データ管理の「透明性」を前提とします。一方データセキュリティは、データのプライバシーを守るための取り組みであり、一般的にデータセキュリティ戦略は、「機密性」を前提とします。

したがって、データセキュリティはデータのプライバシーを保障するものではありませんが、データプライバシーを保持するうえで不可欠な存在なのです。

データプライバシーが重要である理由

企業のデータ活用が進んでいく中で、同時に顧客のデータプライバシーへの関心も高まっています。実際、一般財団法人日本情報経済社会推進協会「プライバシーガバナンスに関するアンケート 結果(速報版)」(2021年)では、類似の商品やサービスを選択する際、消費者の88.5%が企業のプライバシー保護の取り組みを考慮することが明らかとなっています。

データプライバシーがおろそかになっていると、顧客の個人情報が不適切に使用され、その顧客の信頼を失うどころか、企業の社会的な信頼を失う可能性があるのです。機密情報が漏洩したとなれば、企業の存続にかかわる危険性もあるでしょう。

また国や地域によって、個人情報保護法やデータ保護法をはじめとする、いくつかの規律が存在します。これらの法的要件や規制に即していない場合、多額の罰金や法的制裁を受ける可能性があるため、自身の関わるコンプライアンスを把握しておくことが大切です。

データプライバシーを考慮したデータ活用は、社会的信頼を保持して経営を進めていくための、必要最低限の取り組みであるといえます。

データプライバシーに関係する主要な法律や規制

ここでは、データプライバシーに関係する主要な法律や規制を4つ紹介します。

法律・規制名施行日目的・特徴
CCPA2020年1月カリフォルニア州での個人情報保護。データコントロールの強化、事業者への透明性の要求、データアクセス・削除の権利、シリコンバレー拠点の大手企業が多数。
GDPR2018年5月EUにおけるデータ保護。データプライバシーの先駆的存在、データアクセス・削除・修正の権利、データ収集の同意要求、同意撤回の可能性。
個人情報保護法2005年4月日本のデータプライバシー保護。2022年4月の改正、不適正利用の禁止、第三者提供制限、外国提供制限。
改正電気通信事業法2023年6月16日電気通信事業の整備。新たに「Cookie規制」、外部送信規律、対象者増加、罰則規定なし、データプライバシーの保持重要性。

上の表のそれぞれについて解説します。

カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)

カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA:California Consumer Privacy Act)は、カルフォルニア州で2020年1月に施行された個人情報保護法です。

CCPAは、個人情報保護の強化と個人のデータコントロールの向上を目的に導入された法律です。カリフォルニア州の人々は、企業のデータの収集方法について知る権利があり、企業のシステムからデータにアクセスしたり削除したりできます。

事業者に対してデータ収集やデータ処理などに透明性を求める点が特徴であり、事業者はデータ収集の目的や使用方法、個人のデータコントロールについての情報提供が必要です。また、個人が自身の情報へのアクセスを要求する権利を保障しているため、事業者はこの要求に対する適切な対応が求められます。

さらに、カリフォルニア州に事業拠点がなくても、同州で事業を行っていればCCPAの対象となるため、注意が必要です。カリフォルニア州にはシリコンバレーがあり、数多くの大手企業が拠点を置いていることから、CCPAの動向が世界中から注目されています。

EU一般データ保護規則(GDPR)

EU一般データ保護規則(GDPR)は、2018年5月に施行されたEUにおけるデータ保護に関する法律です。EU加盟国で個人情報の取扱いに関する規制を統一・強化するために導入され、データプライバシーの先駆的存在として、他国にも多大な影響を与えています。

EEA(欧州経済領域)に拠点を置く企業だけではなく、EU市民に対して商品やサービスを提供する場合にも適用の対象となるため、欧州外の企業にも注意が必要です。

個人のデータに関する権利を強化している点も特徴的です。個人は、自身の情報へのアクセスや、データの削除、修正などを要求できます。また、個人のデータ収集には同意が求められ、データ処理に一度同意したとしても撤回が可能です。

GDPRは、個人情報保護とデータプライバシーの尊重を強化し、企業に対して、個人情報への高水準な扱いを求めています。EU内外の企業は、GDPRへの適合を強く意識し、顧客との強固な信頼を築くことに努める必要があるでしょう。

個人情報保護法 

個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)は、2005年4月に施行された日本におけるデータプライバシーに関する法律です。個人情報の取り扱いに関する基準を設けることが目的であり、この法律により個人の権利の尊重とデータプライバシーの保護が強化されました。

個人情報保護法はCCPAやGDPRと同様、個人が自身の情報にアクセスし、必要に応じて修正できる権利を保障しています。また、個人情報の取り扱いに透明性を求める点や、個人情報の収集に同意を必要とする点も同じです。

この法律は、2022年4月1日に改正されたことが記憶に新しいと思います。改正法では、「不適正な利用の禁止」や、「個人関連情報の第三者提供制限」、「外国にある第三者への提供制限」などが含まれています。これらの条文は、個人情報に関する過去の事件の影響が強く表れており、この法律の特徴といえます。

改正電気通信事業法

改正電気通信事業法とは、2023年6月16日に施行された電気通信事業に関する法律です。もともとは、1985年に公布された電気通信事業法と呼ばれる、インターネットなどのサービスの仕組みを整え、利用者の利便性や利益を確保するのを目的とした法律です。IT技術の発展やグローバル化に対応するため、改正電気通信事業法として新しく施行されました。

同法律では、新たに「Cookie規制」と呼ばれる外部送信規律が設けられ、利用者の閲覧履歴などの情報を、利用者の端末以外に送信する行為に規律が定められました。外部通信規律には、「電気通信事業者」と「第三者事業を営む者」が対象となり、従来の電気通信事業法よりも対象者が増えています。

現在のところ、規律違反者は、業務改善措置命令や氏名の公表のみとなっており、罰則規定はありません。ただ、データプライバシーを保持した経営は現代では欠かせませんし、法律に則り、透明性の高い事業だと発信するのは、顧客との信頼を築くうえで必須の条件となるでしょう。

まとめ

本記事では、データプライバシーの重要性や、データセキュリティとの違い、データプライバシーに関する法律について紹介しました。

デジタル化の進んだ現代社会では、個人情報が数多くの分野で扱われており、安全な管理は個人の権利保護の観点からだけでなく、顧客との信頼を築いていくためにも非常に重要です。また、国や地域ごとに設けられた法律に違反すると、多額の罰金や法的制裁を受ける可能性があります。事業を進める際には、則るべきコンプライアンスを強く意識して置くことが求められます。

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