データが新しい「石油」だと言われて久しいですが、その価値を最大化するためには適切な管理と活用が不可欠です。ここで重要な役割を果たすのが、データスチュワードです。本記事では、データスチュワードの定義とその役割、育成方法について解説します。また、データスチュワード以外にもデータマネジメントやデータ管理に必要な役割について触れます。
データ管理に関心がある方、データスチュワードについて理解を深めたい方、データ管理チームをより効果的にする方法を探している方はぜひご一読ください。
データスチュワードとは

データスチュワードとは、企業のデータ資産を率先して管理し、そのデータの有効性と信頼性を確保する役割を担う職業のことです。データは現代社会において戦略策定をする際の重要な資産となり、効果的なデータ活用ができるかどうかで事業の明暗を分けると言っても過言ではないため、データスチュワードはますます注目されています。
データスチュワードは他者から預かったデータ資産を責任を持って管理し、データの流れの監督を行います。日々行う具体的な業務は、データモデル仕様の検討と改善、データ品質要件とビジネスルールの定義と維持、データ資産の監視、問題の報告などがあります。
この職業は企業内の多様な部門や役割に存在し、ビジネスデータスチュワード、テクニカルデータスチュワード、プロジェクトデータスチュワード、オペレーショナルデータスチュワードなどに細分化されて機能している場合もあり、それぞれにおいて高度な専門知識とスキルが要求されます。
データスチュワードの役割

データスチュワードは、組織内でデータの管理とガバナンスにおいて重要な役割を担っています。この職業の活動によって、データの品質と適切な利用が担保され、組織全体で効果的なデータ活用が実現されます。データスチュワードは具体的には、下記6つの役割を果たしています。
データガバナンス
まず第一の役割は、データガバナンスの策定と実行に関与することです。データガバナンスは、データの所有権・一貫性・品質を管理し、適切なデータ活用を促進するための組織全体の取り組みを指します。データスチュワードは、データガバナンスのポリシーとプロセスを策定し、それらが遵守されているかチェックします。
メタデータの作成・管理
第二の役割は、メタデータの作成・管理を通じて、データの理解と適切な利用をサポートすることです。メタデータはデータを説明するための「データに関するデータ」であり、その起源、構造、使用法などを解説することを目的としています。データスチュワードは、重要なメタデータを定義・管理することで、データの価値を最大限に高めるための情報を提供します。
データ品質の確保
第三の役割は、データ品質の管理を行うことです。データスチュワードは、データの正確性・一貫性・完全性・信頼性を保つための職業ですので、必然、データ品質の管理も重要な業務に含まれます。データの品質を保つことが信頼性の高いデータ分析と意思決定につながります。
データのアクセシビリティと利用のための管理
データスチュワードの第四の役割は、データのアクセスポリシーとプロセスを管理し、データのセキュリティとプライバシーを維持することです。また、データの正確な活用を支援するためにメンバーの育成も行います。
データの文脈・意味の理解
第五の役割は、データの文脈・意味を理解し、その理解した内容を組織内のメンバーに共有し分かりやすく解説することです。この業務には、データ利用の際のルール策定とそのルールの明文化をすることも含まれます。この業務によって、データの概要について適切に解釈されるため、結果としてデータの有効活用をサポートします。
データのライフサイクルの管理
最後の役割としては、データの生成から廃棄までのライフサイクルを管理し、各フェーズでデータが適切に管理されているかをチェックするということが挙げられます。
データスチュワードの役割をおくメリット

ここでは、データスチュワードの役割りを置くメリットを6つ紹介します。
データ品質が向上する
データスチュワードの活動により、データの一貫性・完全性・信頼性が確保され、社内で保持しているデータの品質が向上します。これにより、組織は信頼性の高いデータを活用して正確な意思決定を行うことができます。このようにデータスチュワードはビジネスインテリジェンスの基盤となり、組織のパフォーマンスを向上させる重要なファクターと言えます。
データ管理の一貫性を保てる
データスチュワードの存在は、組織全体のデータ管理の一貫性を維持するために非常に重要です。データスチュワードの制度を社内で取り入れることにより、データ管理のポリシーとプロセスを統一し、社内の異なる部門やチームが同一の基準に従ってデータを扱うことを確保します。これによって、データの統一性が担保され、データの整合性や信頼性が向上します。
リスク管理ができる
また、データに関連するリスクを識別し、これらのリスクを軽減するための戦略を策定できるのも、データスチュワード制度を導入するメリットの一つです。たとえば、重大データの漏洩や不正アクセス、セキュリティ侵害などのリスクを最小限に抑えるための対策を策定することにより、社内のデータに関わる潜在的なリスクを回避できます。
コンプライアンス違反を防げる
さらに、データスチュワードはデータに関する法律と規制の遵守を確保してくれます。具体的には、データ関連のコンプライアンス要件を整理し、組織内でそれが遵守できるよう監視します。その結果、組織は法的なリスクや罰則を回避し、組織自体の信頼性と信頼できるデータの処理を確保できます。
データの利活用を推進できる
それ以外にも、データを組織の目標と戦略に最適に結びつけ、その活用を推進できるのもデータスチュワードを採用するメリットです。データスチュワードはデータの意味と文脈を理解し、社内でデータが適切に利用されるようサポートします。その結果、社内のステークホルダーに対してデータの活用方法やメリットについて啓蒙が実施され、データ駆動型の意思決定と事業の成果の最大化を促します。
データ管理で生じるコストの最適化ができる
データスチュワードを採用する最後のメリットとしては、データのライフサイクル全体のコスト最適化を行ってくれることです。業務の一貫としてデータの収集・保管・分析・利用・廃棄などの各工程にかかるコストを管理し、データの価値とコストのバランスを最適化するため、結果として組織は効率的なデータ管理を実現し、コスト削減と最適化されたリソースの配分を達成できます。
データスチュワードの選任基準と育成方法

データスチュワードになるにはまず、以下の3つの素質が必要となります。
- ディテールオリエンテッド
- 解決志向
- 誠実さ・信頼性
まず求められる素質の一つがディテールオリエンティッド(detail-oriented:詳細志向。細部に気を遣えること)です。データスチュワードにおけるディテールオリエンティッドとは、データの精度と整合性に対して高い注意力を維持できること、細かなデータの要素や関係性に敏感に気付き正確性を保てるかどうかということです。そのため必然的に、几帳面な性格の人が向いています。
二つ目の素質としては、データに関連する問題を特定し、戦略的な思考で解決できる能力が備わっていることが挙げられます。これは、問題解決や改善に積極的に取り組み、データの品質やプロセスの向上を目指すことが業務として求められるためです。そのため、積極的にコミュニケーションを取れてなおかつ論理的思考ができる人が向いています。
最後に挙げられる素質としては、組織全体のデータ管理と保護に責任を持てる、高い誠実さと信頼性がある人物であることです。これは、データの機密性やセキュリティに対する意識を持ち、責任を持って業務を遂行できることが求められることに起因しています。
選任基準
上記の素質を踏まえ、データスチュワードになれるかの選任基準としては、データ管理の理解、専門知識、コミュニケーション能力、解析的思考の4つの要素が考慮されます。
データ管理の理解
最初に挙げられる選定基準は、データのライフサイクルやデータガバナンスを深く理解していることです。具体的には、データの収集・保存・整理・分析などのプロセスに関する知識を持っていることが求められます。
専門知識
二点目の基準としては、特定の業界やビジネスプロセス、またはデータガバナンスに関する専門知識を持っていることです。これは、業界の規制や標準に関する理解があると、適切なデータ管理の実践が可能となるためです。
コミュニケーション能力
三点目の基準として、データスチュワードは、データに関する情報を他のチームや部門に的確に伝え、意見を理解させ反映させることが求められます。そのため、円滑なコミュニケーションができる能力や説明力が必要となります。
解析的思考
最後の基準としては、データを分析し、意味のある情報を引き出す能力を持っていることです。これは、データを適切に評価し、問題や傾向を発見する能力が業務上必須となるためです。
育成方法
上記の選定基準を元に、データスチュワードに選ばれたメンバーに対してどのような育成をすればいいかについて解説します。
教育プログラムの実施
まず、データ管理の基本的な原則やデータガバナンス、データ分析に関する知識を教育を提供します。このような専門知識の習得やスキルの向上をサポートすることによって、データスチュワードとしての成長を外部から促します。
メンターシップと指導
次に、経験豊富なデータ管理者やデータスチュワードから指導を受け、業界ごとにどのようなデータ管理をすればいいかのベストプラクティスを学びます。個別指導や個人にフィットしたアドバイスを実施することによって、より実践的なスキルの獲得が可能となります。
実践経験
最後に、実際に動いているプロジェクトに参加し、データ管理とガバナンスのスキルを現場で磨きます。実践経験を通じて、データ管理において現実はどのような課題が上がっているかを把握し、実践的な解決策を提案する能力を養います。
データスチュワード以外でデータマネジメントに必要な役割

この章では、データスチュワード以外でデータマネジメントに必要な職種を3つ紹介します。
データオーナー
業務部門内で選出され、自組織が生成するデータが正確で信頼性があることを確認し、データに関する説明責任を負う職業のことです。業務の一環としてデータ要件を決定し、担当する業務領域のデータに関連する全ての活動に責任を持ちます。データスチュワードとは異なる点として、結果責任を負う役割を担っています。
データ活用者
データを根拠として業務の改善点や効果的な施策を考え、仮説を立ててその仮説を裏付けるために必要なデータを特定する職業のことを指します。データの概念への深い理解と分析能力が求められ、ビジネスの発展や効率化を目指し、データの有効活用ができるようになることを目標としているという特徴があります。
データアーキテクト
システムの設計を担当する専門家を指し、データに関するシステムやプロセス設計や管理を行います。データスチュワードと協力してデータ要件を調整しながら、データの作成をデータインテグレーターや他の関係者に依頼する役割を果たします。その他、データガバナンスのルールに即したデータ作成業務を監視し、適切なデータ管理を確保するためにレビューを行います。
まとめ

今回はデータスチュワードという職業の役割やメリット、適任な人材や密接に関わる他の職業について解説しました。データスチュワードは一見、やって当然のことをする業務に思えますが、その当然のことを遂行することが質のよいデータ活用のサポートにつながるため、大変重要なポジションです。
また、データスチュワード以外にも、データを扱う職業は多岐に渡り、そのどれもが互いに協力し合うことで効果的なデータ分析・活用が実現できます。
このように多くの人材が関わるデータ活用業務を推進するには、効率的なデータマネジメントが欠かせません。
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