デジタル技術の進化により、企業は膨大な量のデータを収集・分析できるようになりました。これにより、データに基づく正確な意思決定や戦略の立案が可能です。企業の競争力や生産性の向上につながります。
そこで重要となるのがデータストレージです。企業で扱うデータを効率的に管理でき、データ活用の範囲が広がることを期待し、企業が近年増加しています。
データストレージは、企業の業務プロセスにおいて不可欠な役割を果たしており、企業の生産性や効率性の向上につながります。
本記事では、データ分析におけるデータストレージの基礎知識や種類、選定ポイントなどを解説します。
データ分析におけるデータストレージとは

データ分析におけるデータストレージは、企業や組織が収集したデータを保存するためのシステムや技術のことです。
データストレージを利用することで、複数のデータソースからデータを集約でき、分析のためのデータを一元的に管理できます。大量のデータを処理する場合でも、効率的にアクセスできるため、分析を高速化できるのも強みです。
ただしデータストレージには、データウェアハウス(DWH)やデータレイク、データマートなどの種類があります。それぞれ使用する用途が異なるため、データ分析の目的に応じて適切なデータストレージを選択する必要があります。
データストレージが求められるようになった背景
データ分析は、ビジネスの意思決定や業務改善、将来の戦略立案に欠かせません。しかし、データ分析を行うためには、膨大な量のデータを収集・保存し、処理する必要があります。
このような背景により、分析におけるデータストレージの需要が高まりました。
データストレージの種類3つ

データストレージは、データをどのような形として格納するかによって種類が分かれます。ストレージシステムとしておもに以下の3つがあり、それぞれに適したユースケースがあります。
- オブジェクトストレージ
- ブロックストレージ
- ファイルストレージ
オブジェクトストレージ
オブジェクトストレージは、データを任意のまとまり(オブジェクト)として格納するストレージ方式です。
オブジェクトには、一意のIDや、「ファイル名」「ファイルサイズ」「日付」「コピー回数」「保管期限」「データの種類」などの属性情報(メタデータ)が付与されます。
属性情報の付与によって特定したいデータをある空間から直接的に探し出せるため、膨大な非構造化データを保存するのに適しています。
また容量制限や他データ間での関係を考慮する必要がない点もメリットです。スケーラビリティに優れた分散ストレージシステムを実現できます。
代表的なサービスとしては、Amazon S3やOpenStack Swiftがあります。
ブロックストレージ
ブロックストレージとは、記憶装置の領域を一定のルールにしたがって分割したもの(ブロック)を、データ管理の最小単位として格納するストレージ方式のことです。
データが主体となって最小単位が決められる「オブジェクトストレージ」に対して、「ブロックストレージ」は記憶装置が主体となっている点が本質的な違いです。
ブロックストレージは、ランダムアクセスに優れた高速なI/O操作を提供できます。ファイルシステムやデータベース、仮想マシンのストレージなどの高度なアプリケーションに適しているでしょう。
ただし更新頻度が少ないため、サイズが大きい非構造化データの管理には不向きであるといえます。
代表的なサービスとしては、Amazon EBSやOpenStack Cinderがあります。
ファイルストレージ
ファイルストレージは、「ファイル」をデータ管理の最小単位として格納するストレージ方式です。
データをファイルとして保存し、フォルダーやディレクトリなどの保存場所によってデータを区別します。この仕組みは、本棚や書類のように物理的な空間と似たイメージのため、誰もがデータにアクセスしやすいメリットがあります。
またデータを構造化せず簡単に管理できます。ネットワーク上でのファイル共有やバックアップ、ファイルサーバーやNAS(Network Attached Storage)などのアプリケーションに適しているといえるでしょう。
代表的なサービスとしては、Amazon EFSやOpenStack Manilaがあります。
データストレージを選定する際のポイント

データストレージには、オブジェクトストレージ・ブロックストレージ・ファイルストレージの3つにくわえて、「データウェアハウス」や「データレイク」などデータ分析に特化した種類もあります。
導入する際には、各データストレージの特徴を把握したうえで、以下のポイントを比較し検討することが重要です。
- 自社の目的に適しているか
- ストレージの数値
- サポートの体制
- 拡張性
- 操作性
- 安全性
自社の目的に適しているか
導入を検討する際にもっとも重要になるのが、利用目的に沿ったデータストレージを選択することです。
たとえば、膨大な量のデータや非構造化データを保存する場合には、オブジェクトストレージが最適です。仮想マシンのストレージなどの高度なアプリケーションを使用する場合には、ブロックストレージが最適でしょう。
自社の目的に適しているかを慎重に吟味せずに導入してしまうと、余計なコストが発生する可能性があります。データが活用できていないというリスクも招きかねません。
利用目的によって、活用するデータの種類や量、処理方法などもさまざまです。そのデータを扱ううえで最適なストレージ技術を選定する必要があります。
各データストレージの特徴を理解し、自社の利用目的に適したものを導入するようにしましょう。
ストレージの数値
ストレージの性能を評価する指標として、
- 容量
- パフォーマンス
- 可用性
- 耐久性
などの数値があり、選定する際に重要な要素となります。
ビッグデータを扱う場合には、ストレージ容量が大きいものを選ぶ必要があります。データ量が少ない場合は、コストを削減するためにできる限り容量が小さいものを選ぶとよいでしょう。
また、データ転送に掛かる時間や処理の効率性を維持するためには、パフォーマンス要件を見ておく必要があります。
そして、スムーズな運用を実現するための可用性、データの損失や破損を防ぐために耐久性も重要なポイントです。
サポートの体制
問題やトラブルが発生した際、データストレージ提供先のサポートがどのような体制になっているのかも重要なポイントです。
具体的には、以下の4項目からサポートを評価するとよいでしょう。
- 技術サポート:技術的な問題やトラブルの際、専門知識を持ったサポートスタッフ が対応できるか
- 保守・修理サポート:ハードウェアやソフトウェアに問題が生じた場合には、修理 や保守を行えるか
- アップデ-トサポート:必要に応じて、ベンダーが適切な情報提供やアップデー ト・アップグレードの支援を行えるか
- 問い合わせ窓口:問い合わせや要望に対応する窓口があるか、またその窓口の対応 の速さや品質はどうか
以上のようなサポート体制が整備されていれば、トラブルが起きても早期の対処が見込めるため、安定した稼働が期待できます。はじめてデータストレージを導入する方は、サポートで選定してみてもいいかもしれません。
拡張性
企業が扱うデータは常に増加する可能性があるため、ストレージの拡張性は重要な要素です。
ストレージシステムが拡張性を持っている場合、容量の拡大やストレージの追加などが簡単にできます。これにより、必要なデータ容量や処理能力を迅速に追加し、システムのスケーラビリティを確保することができます。
もし拡張性がないデータストレージを導入すると、必要に応じて追加のストレージシステムを導入したり、データの移行やシステムの再構築をしたりする必要がある場合があります。余計なコストが発生する可能性があるのです。
操作性
データストレージにおける操作性とは、データを格納・取り出しするためのインターフェースの使いやすさや、操作手順の簡便さを指します。
操作性が高い場合、データの格納・取り出しがスムーズに行えるため、作業効率の向上につながります。
一方で操作性が低い場合は、作業に時間がかかってしまい生産性が低下します。ヒューマンエラーの可能性も高くなるでしょう。
操作性の良し悪しは、
- ストレージのインターフェースやドライバーの使いやすさ
- データのバックアップやリストアの手順の簡便さ
- データアクセスの速度
- 可用性
など、さまざまな要因に影響を受けます。
「バックアップが中心になるため、ファイルストレージを選択する」というように、自社の業務に合わせた適切な操作性を持つストレージを選定することが重要です。
安全性
データストレージにおける安全性とは、データの保管や取り扱いにおいて、データの機密性・完全性・可用性を守るために行われるセキュリティ対策を指します。
たとえば、以下のような対策が考えられます。
- アクセス制御の設定:不正アクセスを防止するため、適切なアクセス制御を設定す ることが必要です。(認証・認可機能、アクセスログの監視など)
- 暗号化の導入:データを暗号化することで、不正アクセスによる情報漏洩や改ざん を防止できます。
- バックアップ:バックアップをとることで、非常時にもデータの復旧が可能 となります。バックアップデータの保管場所や、バックアップの頻度については、適切に設定する必要があります。
- 災害対策:たとえば、複数のデータセンターにデータを分散して保管することで、自然災害や人災などによりデータが損失することを防ぎます。
これらのセキュリティ対策を導入することで、データストレージの安全性を確保することができます。それにより、データ漏洩や不正アクセス、データ破損・喪失などのリスクを回避できるでしょう。
分析するならデータレイクとデータウェアハウスどっちがいい?

オブジェクトストレージ・ブロックストレージ・ファイルストレージの3つについて詳しく解説しました。
各データストレージの役割は、データを保管し、必要に応じてアクセス可能にすることです。
しかし企業や組織は、多種多様なデータを収集し、分析する必要があります。たとえば、販売データや顧客データ、生産データなどを保管していても、分析して次の意思決定に反映させなければ、これらのデータは価値を持っていないことと同じです。
社内のデータの価値を最大限活かしたいのであれば、データウェアハウスやデータレイクがおすすめです。これらはデータを分析するためのデータストレージであるため、正確かつ効率的なデータ分析が実現可能になるからです。
本章では、データレイクかデータウェアハウスを導入したいと考えている方が、どのような観点から選択したらよいのか、違いや特徴を比較しながら解説します。
まずはデータレイクとデータウェアハウスの違いをおさらいしよう
以下の表に、データレイクとデータウェアハウスのおもな違いをまとめました。
データレイク | データウェアハウス | |
データの構造 | 非構造データなどを含む様々なデータ形式 | 構造化データ |
データの加工 | 保存後、加工可能 | あらかじめ加工され、保存 |
アクセス性 | 高度にアクセス可能 | 複雑 |
ストレージのコスト | 低い | 高い |
データ品質 | 管理されておらず低い | 高い |
データレイクとデータウェアハウスの本質的な違いは、保存するデータの構造の違いです。
データレイクに投入される生データは目的が定まっていないデータですが、データウェアハウスに保存される処理済みデータは特定の目的のために保管されています。
このシステムの違いにより、データの加工やデータ品質などにも以上のような違いが生じています。
データレイクの特徴やメリット・デメリット
データレイクの最大の特徴は、非構造化データや半構造化データなどのさまざまな種類のデータを容易に収集・格納できる点です。スキーマの変更が容易であるため、柔軟性に優れています。
【データレイクのメリット】
- データの種類を問わず一箇所に収集できるため、データ分析が容易になる
- データの取り込みが容易であり、迅速にデータ分析が実施できる
- スキーマが柔軟であるため、容易に新たなデータを追加できる
【データレイクのデメリット】
- データの品質管理やメタデータ管理が必要であるため、運用コストがかかる
- データの取り込みにより、データ品質が低下する場合がある
- データの重複や不要なデータの蓄積が起こりやすい
データウェアハウスの特徴やメリット・デメリット
データウェアハウスは、異なるシステムから抽出されたデータを、目的に応じて集約・統合し分析できるのが特徴です。
データ分析のためにパフォーマンスやスキーマ設計、セキュリティ体制が最適化されており、大量のデータに対して高速にクエリを実行できます。
【データウェアハウスのメリット】
- ビジネス上必要なデータを効率的に格納し、統合・分析することができるため、意思決定を正確かつ迅速に行える
- 大量のデータに対して高速にクエリを実行できるため、データ分析を迅速に実施できる。
- 異なるソースから収集されたデータを集約・統合でき、企業にとって有益な情報が提供される
【データウェアハウスのデメリット】
- データウェアハウスを開発するためには、ハードウェアやソフトウェアなどの専門知識や、専用のスタッフ、データ品質管理など、多くのリソースを必要とするため、膨大なコストがかかる
- 複雑な構築プロセスを必要とするため、時間と労力がかかる。また、ビジネスのニーズや要件の変更に合わせて、定期的なアップデートや改良が必要になるケースもある
- 大量のデータを蓄積するため、リアルタイム性が制限される。リアルタイム性が必
要な場合は、別のソリューションが必要になる場合が多い
データ分析はデータウェアハウスのほうが適している理由
データレイクは、構造や形式を気にせず取得したデータを次々に格納する仕組みです。
データの保管期間が長いほど、誰がどのような目的で保管したデータなのかわからない状態(データスワンプ)に陥る危険性があります。
一方データウェアハウスは、目的が明確になっていてデータスワンプに陥る危険性がありません。データが時系列順に整理されて保存されるため、効率的にデータ分析が行えます。
またデータレイクはあくまでデータを保存するシステムであるのに対し、データウェアハウスはデータを分析する前提のシステムです。データウェアハウスのほうが、より大量のデータに対してより高速にクエリを実行できます。
最適なデータ活用にはデータウェアハウスの整備が欠かせない

データウェアハウスは、集積されたデータを効果的に分析するために必要な、データの構造化・クレンジング・変換・ロード(ETL)などの処理を実行できます。
データの統合性、品質、正確性を維持でき、データ分析の重要な基盤として位置づけられています。
データウェアハウスを利用することで、信頼性の高いデータを迅速に取得することができるようになります。その結果、ビジネス上の意思決定を正確かつ迅速に行えるようになるのです。
ただしデータウェアハウスを構築するためには、データモデリングやETLなどの専門知識が必要です。企業がデータウェアハウスを構築するために、専門的なスキルを持つチームを構築するケースが多くあります。
弊社が提供する分析基盤総合支援サービス「trocco®」は、ETLをメイン機能としています。データウェアハウスを利用する際、チーム構築の必要性が障壁となるケースが多いです。しかしtrocco®は、ほぼノーコードでデータの集約や活用のための環境整備が実現できます。普段扱いなれていない方でも簡単に活用できます。
データ分析においてデータウェアハウスの導入を考えている方は、trocco®のようなETLツールでデータ活用のハードルを下げておくとよいでしょう。
まとめ

本記事では、自社の大切なデータを保管・格納するために欠かせない、データストレージの種類や選定する際のポイントを解説しました。
データストレージは単なるデータの保管所ではなく、データ分析において質や効率を大きく左右させる重要な位置づけです。
経営の意思決定を正確かつ迅速に行いたいと考えている方は、自社に最適なデータストレージを導入してみてはいかがでしょうか。データレイクやデータウェアハウスの違いを理解することも忘れないようにしてください。
弊社の提供するtrocco®は、データのETLをメイン機能としながら、データ転送やデータチェック機能など、データ活用において役立つ機能を多数搭載しています。
クレジットカード不要のフリープランを実施しています。「データ分析をより効率的に行いたい」「専門知識はないがデータウェアハウスを取り入れたい」と考えている方は、ぜひこの機会にお試しください。
