データストアは、データを効率的に管理し活用するための場所であり、データの整理や分析、レポーティングに利用することができます。データストアにはリレーショナルデータベースや非リレーショナルデータベースなど多様な種類があります。導入の際には、事業計画書で定義したビジネス要件に沿ったものを選ぶことや、コスト、セキュリティの面も考慮する必要があります。データストアを導入すればデータの管理が効率化され余計な工数削減につながるでしょう。

データストアとは?

データストアは、事業・システムにおいて重要なデータを効率的に管理するデジタルリポジトリです。情報の整理・管理が簡単になり、データの一貫性や品質を維持できるというメリットがあります。また、データの分析やレポーティングが容易になるため、迅速にビジネス要件の策定ができるようになります。データストアには構造化データや非構造化データを保存するためのネットワーク接続ストレージやクラウドストレージなどがあります。さらに、データストア導入によって、データの安全な保存、高い可用性、セキュリティの強化などの恩恵も受けられます。

データストアが重要である理由

情報の整理・管理がしやすい

データストアの重要な理由の一つは、情報の整理・管理がしやすくなることです。データを整理して保存することで、検索性が向上し、データの統一性と一貫性が保たれます。また、データの組織化や参照性も向上し、情報の把握・管理が容易になります。このようにデータストアを活用することで、効率的な事業の情報管理ができ余分なリソースの削減が図れます。

データの一貫性が保てる

データストアは、データの一貫性を維持するためのシステムを提供します。トランザクションや制約・参照整合性などの機能により、データの重複や矛盾を避け、データの正確性を担保できます。たとえば、リレーショナルデータベースではACID(原子性、一貫性、独立性、耐久性)の特性を持つトランザクションを利用することでデータの一貫性を保ちます。

分析やレポート作成がしやすくなる

データの集計・加工・分析を行うための機能が備わっているため、クエリ言語や集計関数、ビジュアライゼーションツールなどを利用して、データの傾向やパターンを把握することで意味のある情報を抽出できます。中でもデータウェアハウスやタイムシリーズデータベースなどは特定の分析目的に特化しているため、高速で効率的な分析やレポート作成が実現します。

データを安全に長期保存できる

データストアは、データのバックアップ・復旧・耐久性の確保などのデータを安全に長期間保存するための機能が備わっています。データストアの種類次第では、冗長性の確保やデータの暗号化、アクセス制御などのハイスペックなセキュリティ機能も搭載されています。

データの可用性を高める

冗長性やレプリケーションなどの仕組みによってシステムの信頼性と可用性の向上が実現できます。たとえば、分散データベースではデータの複製を複数のノードに分散することで障害発生時でもスムーズなアクセスを可能にします。

データのセキュリティを向上させる

データの暗号化、アクセス制御、監査ログの取得など多くのセキュリティ対策が行われているため、データストアはデータの機密性や完全性の確保が図れ、顧客情報の漏洩や不正アクセスからデータを保護することができます。

データ量が増えても性能を維持できる

データストアは、データのインデックス化やクエリの最適化、分散処理などの機能により、大量のデータを効率的に処理する能力を持っておりスケーラビリティが高いことが特徴です。スケーラビリティとは、扱うデータ量が増えても性能を維持できる能力のことです。さらに、インメモリデータベースなどの技術を利用することで、データの読み書きがメモリ上で行われるため、データの高速処理が実現できます。

データストアの種類

リレーショナルデータベース(RDBMS)

リレーショナルデータベースは、テーブルと関係に基づいてデータを管理するデータストアであり最も一般的なタイプのデータベースです。表の形式でデータを保存しSQLを使用してデータの操作を行う、データの整合性や一貫性を保ちながら柔軟なデータ操作が可能という特徴があります。代表的なものとしてMySQLやOracle Database、PosgreSQLなどがあります。データの整合性や信頼性が高いため、多くの企業で利用されています。

非リレーショナルデータベース(NoSQL)

非リレーショナルデータベースは一般に「NoSQLデータベース」と呼ばれます。NoSQLハ「Not Only SQL」の略であり、リレーショナルデータベース以外のデータモデルに基づいてデータを保存・管理するデータストアです。データの形式や構造に柔軟性を持ち、異様なデータ形式や大量のデータを効率的に扱うことができます。

代表的な非リレーショナルデータベースには、以下のようなものがあります。

  • MongoDB: ドキュメントストア型データベース
  • Cassandra: ワイドカラムストア型データベース
  • Redis: キー/値ストア型データベース
  • Neo4j: グラフデータベース

インメモリデータベース

インメモリデータベースは、データを主記憶(メモリ)上に格納して高速な処理を実現するデータストアです。データの読み書きがメモリ上で行われるため、ディスクアクセスの遅延がなくなります。代表的なインメモリデータベースにはRedisやMemcachedがあり、リアルタイムの分析やキャッシング、高速なトランザクション処理に利用されます。

データウェアハウス

データウェアハウスは、大量のデータを集積し、分析やレポート作成に活用するためのデータストアです。主要なプラットフォームとしてはSnowflake、Amazon Redshift、Google BigQueryなどがあります。データウェアハウスは、データの集約と高速な処理を可能にすることで業務効率化に非常に役立ちます。

タイムシリーズデータベース

タイムシリーズデータベースは、時系列データを効率的に管理するためのデータストアです。センサーデータやログデータなどの時系列データの処理に特化しており、高速なデータ処理と柔軟なデータ操作ができるためリアルタイムなデータ分析や予測に大変役立ちます。代表的なツールとしてInfluxDB、Prometheus、TimescaleDBなどがあります。

オブジェクトストレージ

オブジェクトストレージは、大容量の非構造化データをオブジェクト単位で管理するデータストアです。データは一意のキーによってアクセスされ、スケーラビリティと耐久性に優れています。主要なオブジェクトストレージサービスにはAmazon S3やGoogle Cloud Storageなどがあります。これらのサービスはクラウドストレージとして広く利用されています。

分散データベース

分散データベースは、データを複数のノードに分散して格納し、高い可用性と耐久性を実現するデータストアです。代表的な分散データベースにはApache CassandraやCockroachDBなどがあります。これらのデータベースは大規模なデータ処理に適しており、データの分散とレプリケーションによって冗長性と障害耐性を高めます。

ハイブリッドデータベース

ハイブリッドデータベースは、分散データベースとリレーショナルデータベースの特性を組み合わせた柔軟なデータストアです。異なるデータモデルを統合して扱うことや、柔軟なデータ操作を可能とします。代表的なハイブリッドデータベースにはGoogle SpannerやCockroachDBなどがあります。

イベントソーシングデータベース

イベントソーシングデータベースは、発生したイベントやデータの変更を記録して保存するデータストアです。イベント駆動型アーキテクチャやイベントソーシングパターンに適しており、データの変更履歴や状態の再構築が容易で高い信頼性と柔軟性を誇ります。主なイベントソーシングデータベースにはEventStoreやApache Kafkaがあります。このデータベースは一般的にイベントドリブンなアプリケーションやデータフローの追跡に活用されます。

全文検索エンジン(FTSE)

全文検索エンジン(FTSE)は、キーワード検索や類似検索などの高度な検索機能が備わっているデータストアであり、スケーラブルで信頼性が高いことが特徴です。代表的なツールとしてはElasticsearchやApache Solrなどが挙げられます。

メッセージ待ち行列

メッセージ待ち行列は、メッセージの送信と受信を分離することで非同期メッセージングパターンを実現するデータストアです。この行列はメッセージの一時的な保持や順序の制御などの機能が備わっており、異なるコンポーネントやサービス間の連携や非同期処理を可能とすること、スケーラブルで信頼性が高いことが特徴です。代表的なものとしてRabbitMQ、Apache Kafka、Amazon SQSなどがあります。

データストア導入時に確認すべき6つのこと

ビジネス要件に見合っているか

そのデータストアが定義したビジネス要件に合致しているか、確認することが重要です。特に、データの種類、データ量、パフォーマンス要件、セキュリティ要件が導入目的に沿っているか検討しましょう。データの整理・分析を目的とする場合、高い可用性やセキュリティが求められる場合など、それぞれのパターンに対応できているデータストアを選ぶ必要があります。

スケーラビリティはあるか

将来的にデータ量やトラフィックが増加することが見込まれる事業の場合、スケーラビリティがあるデータストアかを必ず確認しましょう。需要の変動や成長に従ってスケールできるデータストアを選べば、システム拡張も心配なく行えるでしょう。

データを安全に保管できるか

セキュリティやプライバシーの要件に対応できるセキュリティ機能が備わっているかも確認することが大切です。この場合は、データの暗号化、アクセス制御、監査ログの取得などの機能が実装されているかをチェックすることで、不正アクセスなどのサイバー攻撃にも耐えられる可能性が向上します。

導入・運用コストは適切か

ライセンス費用、人件費や採用した人材が知識をキャッチアップする期間など、導入・運用の際にかかるコストも考慮に入れましょう。コスト対パフォーマンスが適切か判断した上で、予算や社内のリソースとマッチしたデータストアを選択することも重要です。

導入・運用のためのスキルやリソースはあるか

データストアの導入や運用に必要なスキルやリソースを持っているかを確認しましょう。この場合には、データベース管理やクエリの最適化、監視やトラブルシューティングなどの機能が備わっているかをチェックします。必要なスキルセットやリソースを確保できるかを考慮した選択が重要です。

データ移行の計画は立てられているか

データストア導入時には、既存のデータを新しいデータストアに移行する計画を立てておくことが重要です。データ移行は時間とリソースを要し、データの整合性を保つために計画を立てる必要があります。データの変換や移行テストなどを計画に含むことで、スムーズかつリスクの少ない移行が実現できます。

まとめ

前述の通りデータストアの導入は、情報の整理・管理、データの一貫性維持、分析やレポート作成の簡単さ、データの安全な保存、可用性とセキュリティの向上、高いスケーラビリティなど、多くのメリットがあります。データストア導入の際には、ビジネス要件への適合性、スケーラビリティの有無、データの安全性、コスト、必要なスキルとリソース、データ移行の計画などさまざまなファクターに対して多角的に評価をする必要があります。適切なデータストアを選択することは、事業が成功する一端を担うと言っても過言ではないでしょう。

trocco® ライター

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