データは現代ビジネスの原動力と言われていますが、適切に管理されていないデータは「データスワンプ」と化してしまいます。この記事では、データスワンプの定義、その成因やビジネスにおける問題点、そしてデータスワンプを避けるための実践的な対処法について解説します。
データスワンプとは

データスワンプ(Data Swamp)は、データの管理における混乱と分散が進行し、情報の属性や出所に対するメタデータの不足から、どこにどのような情報が保存されているかを確実に把握できない、混沌としたデータベースの状態を指します。
データスワンプは、データの沼地とも称され、その名の通り、データが散在し、整理されずに存在する状態です。
この言葉は、データレイク(Data Lake)との対比から生まれました。データレイクはデータの湖とも呼ばれ、データが澄んでおり、どこに何のデータがあるかが明確で、必要なデータを容易に見つけ出せる状態を表しています。
これに対し、データスワンプではデータの混乱が生じ、データを探し出すことが難しく、データの有用性を最大限に引き出すことができない状態です。
データスワンプからデータレイクへの移行やデータレイクの運用には、下記三つのポイントに留意することが重要です。
一つ目に、データレイク内のデータを効果的に管理するために、メタデータやデータカタログを整備することです。これにより、どのデータがどこに格納されているかを明確に把握でき、データの発見が容易になります。
次に、データガバナンスを実施し、データのセキュリティとアクセス制御を確立するということです。具体的には、データへのアクセス権限や変更権限を管理し、データの品質とセキュリティを確保します。ただし、過度な制約はデータの柔軟性を損なう可能性があるため、バランスを取ることが重要です。
最後に、データレイクを効果的に運用するために、データ管理のベストプラクティスを適用するということです。具体的には、データの収集、整理、変換、保管、分析、可視化などのプロセスを適切に実行し、データ活用をサポートします。
データスワンプからデータレイクへの移行やデータレイクの運用に成功することで、組織はリアルタイムなデータ活用や新たなビジネスモデルの創出に向けたデジタル変革を実現し、結果として競争力を高めることができます。データ活用におけるスピードと柔軟性を兼ね備えたデータレイクは、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代における不可欠な要素と言えます。
データスワンプが生まれる背景

データスワンプが発生する背景としては、データレイクの不適切な管理が主要な要因として浮かび上がります。データレイクは、非構造化データや構造化データをスキーマの事前定義なしに格納できる柔軟なデータストレージ環境を提供し、多くの利点をもたらしますが、この柔軟性が時に混乱を招くことがあります。
データレイクの利点は、生のデータをそのまま受け入れることができ、企業は急速に増加するビッグデータを容易に取り込むことができることです。しかし、この柔軟性が、データが誰によって、どの目的で格納されたのかを把握しにくくするという問題を引き起こします。
これは、データの保管期間が長くなるほど、そのデータの価値や適切な活用方法が不明瞭になり、データの管理が複雑化します。この状態をデータスワンプと称し、前述の通り、データが底なしの沼のように無秩序に蓄積される状態となってしまいます。
データスワンプの問題は、データを放置したままにすると、「膨大なデータをどう活用すれば良いのか?」、「どこから手を付ければ良いのか?」という課題に直面し、有用な情報が見逃されるリスクが高まります。
このようなデータスワンプを回避し、データの価値を最大限に引き出すには、データレイクの柔軟性を生かしつつ、データガバナンスを実践することが不可欠です。
データスワンプを回避するための3つの対策については、後述します。
ビジネスにおけるデータスワンプの3つの問題点

データスワンプ状態が引き起こす問題点には、情報の検索困難性、データ品質の低下、意思決定の誤りの3つが挙げられます。
本章ではそれぞれについて解説します。
情報の検索困難性
データレイクが混乱した状態であると、情報の検索が困難になります。
データレイクは、多種多様なデータを柔軟に格納できる特長を持つ反面、必要な情報がどこにあるのかを特定する難しさがあります。
データの整理やカタログ化が怠られると、データが迷子になり、データ駆動ビジネスの意思決定プロセスが遅れるリスクが生じます。このような情報の乱雑さは、戦略的な意思決定に不可欠なデータの妥当性と可用性を脅かすものとなります。
データ品質の低下
データスワンプの状態が原因でデータ品質が低下することもあります。
データレイクは、未処理のデータを多く含み、品質管理が不足しています。整理やデータクレンジングが欠けたままデータが追加されると、データ品質が低下し、信頼性のない情報がシステムに侵入するリスクが高まります。このようなデータ品質の欠如は、誤った意思決定や不確かなインサイトを引き起こす原因となり得ます。
意思決定の誤り
データスワンプは意思決定の誤りを生じさせてしまうこともあるでしょう。
データがデータスワンプに閉じ込められると、意思決定者は不完全なデータから適切なインサイトを抽出するのが難しくなります。結果として、企業が誤った戦略を採用するおそれがあります。正確な情報は競争の激しいビジネス環境で成功するために不可欠であるため、データスワンプは意思決定プロセスに悪影響を及ぼす要因となります。
データスワンプを回避するための3つの対策

上記のようなデータスワンプを回避するためには、下記3つの対策を行うとよいでしょう。
データガバナンスの実施
データガバナンスはデータ管理の要であり、その中でもデータカタログの活用が極めて重要です。
データカタログは、データの特性や経路を詳細に説明するメタデータを管理するシステムです。データカタログを取り入れることにより、下記の2つの効果が実現されます。
データ分析サイクルの効率化
データレイクには生データが蓄積されますが、これらのデータを整理せずに利用することは難しいです。データカタログを整備することで、必要なデータを容易に見つけ出し、分析作業にリソースを注ぐことができます。これにより、データ分析のスピード向上が実現します。
データ分析の信頼性向上
データ分析は正確なデータをソースとして行われる必要があります。
データカタログにはデータの属性や取得元が記述されるため、データ品質の確保に寄与します。また、セキュリティ情報を含めることで、データガバナンスを強化します。
ただし、データカタログの運用には注意が必要で、ユーザーのニーズが変化することやメタデータの管理が手間となることに対処する仕組みを整備する必要があります。
atama plus株式会社はtrocco®を活用したデータカタログの運用(メタデータの整備)を行いました。その結果、メンバーが自律的に目的のデータを探し出せるようになり、また、BigQueryを活用できる社員が半年後に5倍以上になるのと同時にデータカタログの利用率も伸びました。
同社の事例をくわしく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
データ品質の管理と監視
データ品質の低下はデータスワンプを引き起こす大きな原因の一つであり、データ活用に悪影響を及ぼします。そのため、データスワンプを回避するためにはデータ品質の管理と監視は欠かせません。品質管理には、データ品質の評価と改善を含める必要があります。データ品質が向上すれば、導き出された洞察が信頼性を持つため、意思決定の基盤となります。
データ統合の最適化
データ統合はデータ処理工程の効率化に直結する行為です。昨今のDX時代の理想は、専門家でないメンバーでもデータ活用の工程をスムーズに行えることです。このためには、非構造化データの処理やデータの自動変換技術を活用するデータプラットフォームの構築が求められます。
このようなデータプラットフォームの構築にtrocco®は大変有用です。直感的なGUIを活用して、短時間で設定からデプロイまでが可能で、運用に関するサポートも強化されています。初期費用は必要なく、1日でデータ分析基盤の構築が実現可能です。約100種類のコネクタを使って多様なデータソースとの連携ができ、分析のスピードが向上します。開発のコストを削減し、データ活用を全組織で促進することができ、意思決定の迅速化に寄与します。
データエンジニアが不足しているという企業でもデータの統合を最適化することができるでしょう。
まとめ

データスワンプが起こるとデータ活用において混乱が生じ、適切な意思決定や適切なデータ分析などに影響を及ぼします。
データレイクが正しく保たれている状態が理想ですが、実際のデータ運用においてはさまざまな問題が発生し保つのが難しくなるため、データカタログの採用などのデータガバナンスの実施が回避策となります。
trocco®を活用すれば、異なるデータソースからのデータの統一や変換、整理が効率的に行え、データの価値を最大限に引き出すことができるようになります。また、データカタログの機能も備わっているため、管理がしやすくなるでしょう。
データの連携・整備・運用を効率的に進めていきたいとお考えの方や、プロダクトにご興味のある方はぜひ資料をご覧ください。
