社内のデータが紙ベースで管理されていた以前とは違い、データはデジタルでの管理が中心となりました。
くわえて、導入コストが安価で済むクラウド型のSaaSサービスが登場したことでセールスやマーケティング、経理や人事労務が使用するツールは多様化が進んでいます。一方でツールの多様化は同時に社内データの分離・分散化を招いてしまい、データの効率的な管理が課題となりました。
そこで注目されているのが本記事で紹介するEAIです。
本記事では、EAI・EAIツールの基本的な概念から、比較されることの多いETLツールとの比較、EAIツールの導入前に押さえておきたいポイントも解説します。自社に最適なデータ連携基盤を構築したい方はぜひご覧ください。
従来エンジニアなしには難しかった、EAIもツールが登場したことによって容易に取り入れることが可能になりました。その状況を踏まえてEAIツールを紹介します。
EAIとは

EAIという言葉は以下の3つの言葉に由来します。
- E:Enterprise(企業)
- A:Application(アプリケーション)
- I :Integration(統合)
つまりEAIとは、セールスが扱うSFAツールやマーケティングが扱うMAツールなど社内のさまざまなツールのデータをひとつに統合し、社内全体でデータをシームレスに連携するという考えです。
EAIの考え方が取り入れられることで、社内の各所に分散していたそれぞれのデータを一元管理できるようになります。同時に、マーケティングによって獲得されたデータがスピーディーにセールスへ連携されるなどデータの活用が促されます。
EAIの仕組み

従来このようなデータ連携は、csv形式にエクスポートしたファイルでのやりとりや、渡したいデータをExcelやGoogleスプレッドシート上へ転記して共有するなど、人の手での作業が必要不可欠でした。
データの量と更新頻度に応じて引き渡しの作業コストが単純増加するほか、データが2箇所で管理されます。一度データを引き渡したあとに生じた変更は、リアルタイムで反映できません。
対してEAIが行き届いていればこの例でいえば、マーケティングが自社セミナーで獲得したリードデータが速やかにセールスへと連携されることで即座にアプローチができるようになるわけです。
EAIは大きく分けて4つの機能から成り立っています。
【アダプタ機能】
※異なるサービス間でデータを転送するためのインターフェースの機能
【フォーマット機能】
※転送元、転送先でデータ型(文字列・日付など)を保持して転送する機能
【フロープロセッサ機能】
※転送元から送られたデータを転送先のオブジェクトに正しく振り分けて格納する機能
【ワークフロー機能】
※データの定期的な転送や、複数の転送をひとつの大きなフローとして管理する機能
アダプタ機能を窓口にフォーマット機能・フロープロセッサ機能がデータを格納、ワークフロー機能がそれら全体の流れをコントロールします。これがEAIの基本的な仕組みです。
EAIとETLの違い

EAIと似た言葉にETLという言葉があります。EAIもETLも異なるサービス間でデータを統合するという点では同じですが、以下のような違いがあります。
EAI | ETL | |
---|---|---|
目的 | サービス間のデータを連携させること | サービスからデータを抽出してDWHへ格納すること |
特徴 | アドホックな処理を志向 | バッチ処理を志向 |
活用シーン | データを極力リアルタイムに処理 | 一日ごと、一時間ごとなど定期的に処理 |
ETLはEAIに先立って生まれた考えで、異なるサービス間でのデータ転送という点では共通しているものの、元はデータエンジニアリング分野での用語でした。
現場レベルでのリアルタイムなデータ連携という目的からスタートしたEAIに対し、ETLはデータを分析するために、DWH(データウェアハウス)へデータ統合することを目的にしている特徴があります。
ただし、EAIツールはDWHへのデータ転送に対応しているものもあり、ETLとして使用できないわけではありません。一方で、弊社が提供するtrocco®のようなETLツールもDWHのみに限らず、100種以上の転送先・転送元に対応しており、EAIツールとしての運用も可能です。
近年はどちらのツールもさまざまなニーズに応えられるよう多様な機能を揃えており、EAIツールとETLツールの違いは以前ほど大きくはないというのが現状です。検討したいツールがEAIツールか、ETLツールかという点ではなく、運用のしやすさや設定の簡単さなど、オプション機能の好みで選択しても問題ありません。
EAIツールを導入するメリット3つ

データエンジニアがおらず、大規模なデータ処理の基盤がないような企業でも容易にデータ連携を実現してくれるのがEAIツールです。本章では自社のオンプレミス環境へのインストールが不要なSaaS型のEAIツールを紹介します。
EAIツールを理解するうえで押さえておきたいのが以下の2つのメリットです。
ノーコードでのデータ連携を実現
EAIツールはプログラミングの知識がなくとも、画面上の設定やドラッグアンドドロップなどのノーコードの設定だけでデータ連携できる点が最大の魅力です。
ノーコードによる直感的な操作ができるようになったおかげで、セールスやマーケティングなどの非エンジニア圏の人も活用できるようになりました。
部署・部門を問わずEAIツールによってスピーディーにデータ連携されるため、リード獲得からのアプローチまで商談の流れを加速させます。また社内の経費申請処理が会計ソフトで速やかに処理されるなど、社内のあらゆるデータの流動性が高まります。
くわえて、EAIツールのワークフロー機能により複雑な依存関係のデータ連携も、ノーコードで実現できるようになります。
開発負担を減らし、技術者の教育や人件費などのコストを削減できる
データ連携基盤は連携するデータの量や自社で利用しているサービスの数に比例して、連携システムの開発コストが跳ね上がり、運用するためのデータエンジニアの採用・教育が必要になります。
利用しているサービスのバージョンアップなど、仕様変更によりエラーが発生した際にはそのエラーへの対処も必要です。
つまりこれまでは社内のデータ活用を進めるほど、運用コストが上昇し人件費などのコストがかさむというジレンマを抱えていました。
しかしEAIツールの導入によってエンジニアの開発負担を軽減できるようになったのです。運用基盤の保守もEAIツールのベンダーに任せることができるため、データ連携基盤の省コスト化が実現できます。
小規模なデータエンジニアリングチームしかいない場合や、中小企業であってもデータ連携基盤の導入が可能です。
EAIツールを導入するデメリット2つ

メリットの一方で、EAIツールの導入には押さえておくべきデメリットもあります。ここではそのうち大きく2つのデメリットを取り上げます。
ツールの導入にコストがかかる
EAIツールはベースとなる基本料金に加えて、連携するデータの量や利用するサービスの数などに比例した従量課金であるケースが多いです。
すでに社内のデータが複数のサービスに分散している状況でEAIツールを導入しようとすると、予想より大きな導入コストが発生する可能性があります。
EAIツールには専任のカスタマーサポートが受けられるものもあるため、導入する際に初期コストがどれくらい発生しそうかなるべく確認しておくとよいでしょう。
ツールを導入した後に、「こんなにコストがかかる想定じゃなかった」と後悔しないためにも、事前確認は必須です。
使いこなすのに時間がかかる
EAIツールは異なるサービス間でのデータ転送を実現しますが、データの転送元・転送先サービスではそのようなデータの移動は本来想定されていません。
セールスで利用されるSFAツールのSalesforceを例にすると、MAツールで取得したリードデータに対応するオブジェクトを用意しないままEAIツールでの転送を試みてもSalesforce上への連携は失敗してしまいます。
EAIツールを導入しても各ツールでオブジェクトの共通化など連携の準備をする必要があり、スムーズなデータ連携の実現には時間がかかってしまうケースがあります。
EAIツールを導入する前のチェック項目

メリット・デメリットをふまえ、EAIツールを導入するうえでチェックしておきたい項目を3つ挙げます。EAIツールを有効に活用するには、この3つの項目をきちんと理解しておくことが重要です。
また無料のトライアルが受けられる場合にも導入の判断に役立ちます。
導入する目的は明確か
EAIツールは文字通りツールであるため、EAIツールが解決する課題が明確でなく、活用イメージが具体的でないまま導入しても有効に活用できない可能性があります。
たとえば、「自社セミナーで得たデータが速やかにセールス部門に連携されないためにセールス部門によるアプローチが遅れてしまっている」など、自社が抱える課題が具体的にしておきます。
EAIツールの導入によってその課題の解決が期待できるか、明確な課題ありきでツールの導入を判断する必要があります。
EAIツールの導入に対する費用対効果を計算できているか
EAIツールは導入にあたって初期コストが発生します。
ただし、オンプレミスで環境を整えるコストや、専任のデータエンジニアを用意するコストと比べれば、安価であることが大半です。
この初期コストに対して削減できるコスト、ツールの導入によってどの程度の業務の効率化が図れそうかという点を事前に検討しておくと、EAIツール導入後の成果に対して納得感を持てます。
EAIツールを扱える人材が社内にいるか
EAIツールはプログラミングの知識が不要でも扱えるツールですが、最大限に活用するにはある程度データエンジニアリングに関する知識は必要不可欠です。
したがってEAIツールを導入する前に、EAIツールを有効に活用できる人材が社内にいるか検討しておくとよいでしょう。
具体的には、非データエンジニアの人であればSQLの記述に抵抗がないというのがひとつの目安になります。そのような人材がいない状況であれば、EAIツールのベンダーに対して並走型のカスタマーサポートや、初期導入支援のサポートを依頼するのが有効です。
またEAIツールを運用する責任者、データエンジニアチームは社内のさまざまなサービスのデータにアクセスします。運用チームがサービスにアクセスできるよう、導入後の権限周りも検討しておきましょう。
代表的なEAIツール3選

代表的なEAIツールを3つ解説します。いずれも多様なコネクターを提供しているほか、単なるEAI機能だけでなく特徴的な機能を備えています。
利用料金や対応コネクタの数だけでなく、各ツールの機能を比較しながらEAIツールの導入を検討するとよいでしょう。
ASTERIA Warp
ASTERIA Warpは、アステリア株式会社が提供しているノンプログラミングでのデータ連携基盤の構築できるEAIツールです。
システム障害に対して復旧の負担を軽減する「チェックポイント機能」や複数のサーバーで構築されるシステム環境での監視、管理を補助する「Web API」を搭載しており、大規模なシステムへの導入を特徴としているツールです。
Magic xpi Integration Platform
Magic xpi Integration Platformもノーコード、ノンプログラミングでのEAIが可能な点が特徴です。
100種以上のサービスとの連携を提供していますが、無償で提供される開発キット(SDK)を利用することで対応していないサービスとのコネクタを独自開発することが可能です。
Boomi
Boomiも多様なサービスとの連携、ノーコードでのデータ連携が可能です。
またBoomiはユーザーコミュニティを有しており、Boomiの機能を利用して作成されたワークフローが有志によって公開されているほか、入門的なユーザーに対するヘルプドキュメントを提供しているなどユーザーナレッジの共有が図られています。
海外発のEAIツールはkintoneやe-セールスマネージャーなど国内サービスへの対応が追いついていないケースがありますが、他のユーザーの知見を借りることでこのようなサービスへの対応ハードルを低下させられます。
まとめ

データの活用に欠かせないEAIという考え方、EAIツールについて、導入に先立ってチェックしておきたいポイントを解説してきました。
EAIツールを有効に活用するには各ツールの特徴や料金を比較する前に、EAIツールの活用イメージを明確にしておくことが重要です。また、EAIツールの用途がデータの分析中心であれば、データ分析基盤の構築を支援するETLツールのほうが適しているかもしれません。
弊社のデータ分析基盤構築サービスtrocco®は、ノーコードでデータ転送が実現できます。くわえてDWHへのETL機能だけでなく、100種以上のコネクタに対応しており、EAIツールとしての運用も可能です。
EAIツールとETLツールに興味がある方、EAIツールとETLツールのどちらが適切か悩んでいる方は、ぜひ弊社に一度ご相談ください。
また、trocco®では、クレジットカード不要のフリープランをご案内しています。ご興味がある方はぜひこの機会に一度お試しください。
