近年DX推進の動きが広がり、必要不可欠な存在となっているのがクラウド活用です。クラウドサービスはメンテナンス不要の手軽さが強みで、現在もさまざまなクラウドサービスが誕生・活用しています。
とくに最近注目されているのが、クラウドサービスの特徴を生かした「マネージドデータベース」です。
マネージドデータベースを適切に利用すると、自社のクラウド・データベース・リソースの管理が不要になります。ビジネスにおける重要な部分に、多くの時間と労力を費やせるようになるでしょう。
本記事では、マネージドデータベースの必要性やメリット、導入する際のチェック項目などを解説します。
マネージドデータベースとは

マネージドデータベースは、データのマネジメントを自社内で行うのではなく、ITベンダーなどの外部リソースに代行してもらう形式のデータベースのことです。マネージド(managed)とはビジネスにおいて、「適正なコストでしっかりと管理された」という意味があります。
データを管理する際、サーバー管理だけでも必要な知識は膨大かつ専門性が求められます。
そのためデータベースの管理に慣れていないユーザーが、イチからデータマネジメントをはじめるのは非常に困難です。作業をはじめられたとしても、ミスが発生し、自社のビジネスに重大な危機を招くおそれがあるでしょう。
データマネジメントなどの専門性が求められる業務をITベンダーに代行してもらうことで、上記のような危険性を回避するのがマネージドサービスです。
ただし何も考えずに利用しても大きな効果は見込めないため、利用者はマネージドデータにかかるコストや委託の範囲などをしっかり検討したうえで、ITベンダーを選択することが大切です。
マネージドデータベースの必要性

マネージドデータベースの必要性は、データベースを管理する時間や人材、リソースの不足が背景にあります。
データベースを管理し、ユーザーの要望に合わせて調整するには、膨大な専門知識を要します。そのため各組織にデータベースを管理できる人材が不足しているケースが多い傾向です。
また人材が不足していなくても、データベースを運用するには多くの時間を要します。データベースの運用に時間と労力を費やし、ビジネスにおいて真に価値のあるデータの分析がおろそかになってしまっては本末転倒です。
そこでITベンダー(マネージドデータベース)に代行してもらうことで、新たに人材を採用する必要がなく、データマネジメントにかかる時間も大幅に短縮できます。本来のリソースを投下するべきところに専念できるようになります。
さらに自社でデータベースの運用を行うと、インフラの維持やサポート、新たな人材の雇用にコストがかかりますが、マネージドデータベースの利用によりこれらのコストが削減できる点も需要が高まった背景です。
マネージドデータベース提供者の業務範囲

ユーザーは、「何を」「どこまで」マネージドデータ提供者(プロバイダ)に委託するか適切に判断することが大切です。提供者がおもに請け負う業務を3つ紹介します。
- パッチ適用
- バックアップ
- データ監視
パッチ適用
パッチとは、ソフトウェアの修正や改良を行うために、修正点だけを抜き出したファイルのことです。そのパッチをプログラムに組み込み、適用状況を把握して管理する業務を「パッチ適用(パッチ管理)」といいます。
パッチ適用は、さまざまなOSやソフトウェアで発生する脆弱性に対応するため、持続的な管理が必要です。
自社で管理すると膨大な手間がかかってしまいます。作業負担を分散するために、マネージドデータベースのプロバイダに任せるケースが多い傾向にあります。
またパッチ適用には会社のセキュリティリスクが伴います。ITベンダーに運用を任せるのが最善策といえるでしょう。
バックアップ
扱うデータの種類や量が増えると同時に、人的ミスやウイルス感染によってデータが消失するリスクも高まりました。バックアップがその対処法として有効です。しかしバックアップよりも効率的な手段として、クラウドストレージが挙げられます。
クラウドストレージは物理媒体が必要なく、インターネットに接続できる環境であれば場所を問わず利用が可能です。容量の制限もなく、必要な分だけ使用できるのも強みです。
データ監視
データ監視ではおもに、ログやシステムの監視を行います。情報漏洩や不正アクセスの防止、業務効率化などの目的で利用されており、近年需要が高まりつつあります。
IaaSではログの監視を行い、PaaSではAWSやAzureなどの監視サービスを用いて監視されます。そのほかにWebサイトのURLの監視もデータ監視の役割のひとつです。
これらの情報は安全に運用できることが前提条件です。IT部門に任せると負担・責任が大きくなってしまうため、ITベンダーに委託するケースが多くなっています。
マネージドデータベースのメリット

マネージドデータベースを利用すると、運営や管理、メンテナンスをマネージドデータベースのプロバイダに移譲できます。
その結果、以下のようなさまざまな恩恵を受けられます。
- セキュリティ精度の向上につながる
- 運用コストを削減できる
- 自社のコア業務に専念できる
セキュリティ精度の向上につながる
セキュリティ問題はもっとも重要な課題のひとつです。
対策が複雑であり、自社内だけでは完璧に実施できていません。セキュリティが甘いと情報が漏洩するリスクなどがあるため、企業にとってはなんとしても解決したい課題といえるでしょう。
そこで必要となるのがマネージドデータベースの利用です。サイバーセキュリティの専門家が設計・管理をするため最良の選択といえます。
たとえば、以下のようなセキュリティ対策が可能です。
- 疑わしいログインやアクティビティの監視
- 転送中や保管時のデータの暗号化
- 一括ファイル削除やネットワークに対する保護
- アクセス制御システムの運用
これらはすべてサイバーセキュリティの専門家によって管理されているため、自社で実施するよりもセキュリティの精度が高いことがメリットです。
セキュリティの精度が向上すると、情報漏洩やハッキングの被害にあうリスクが低くなるため、顧客からの信頼を維持し、ブランドイメージを損なわずに事業を継続できます。また、セキュリティ対策によりリスクの特定や発生確率、そのリスクが与える影響などを評価できます。その結果、リスクマネジメントが容易になるでしょう。
運用コストを削減できる
マネージドデータベースを利用することで、以下のような運用コストの削減が期待できます。
- インフラストラクチャの管理コスト
- データベースのアップグレードコスト
- セキュリティコスト
- バックアップ・リカバリーのコスト
従来の自己管理型データベースの場合、ハードウェアやネットワークなどのインフラストラクチャの構築やメンテナンスが必要でした。
しかしマネージドデータベースの場合は、プロバイダがインフラストラクチャの管理を行うため、運用コストを削減できます。
そのほかにも、
- セキュリティ対策
- バックアップ・リカバリーの処理
- アップグレード
を行っているため、それらのコストが削減可能です。
運用コストの削減により、余剰資金を別の用途に有効活用できます。たとえば、新しい商品やサービスの開発、市場拡大のための広告宣伝費の増額、社員の研修・教育費の増額など、ビジネスの成長に必要な投資に充てられます。
自社のコア業務に専念できる
マネージドデータベースでは、
- パッチ管理
- データ監視
- セキュリティ管理
- バックアップ・リカバリー
- インフラストラクチャの管理
などのさまざまな業務をプロバイダが請け負います。
これにより、従来の自己管理型データベースに比べてユーザーが自社で行う業務が削減されるため、メンテナンス業務の負担軽減が期待できます。
負担の軽減によって生まれた時間で、サービス開発やデータ分析などの本来ウェイトをおくべき自社のコア業務に注力できます。
失敗しない!マネージドデータベースを導入する際のチェック項目

マネージドデータベースを導入する際には、いくつかの項目を確認し慎重に検討する必要があります。何も考えずに導入してしまうと、「コストはかかるが活用できていない」という状況に陥ってしまったり、最悪の場合「データの損失・消失」を招いてしまう恐れがあるからです。
後悔しないためにも、導入する際は以下のチェック項目を確認するようにしましょう。
- 目的が明確になっているか
- 予算が決まっているか
- 代行するITベンダーが信頼できるか
- 実績・事例が豊富か
- 高いパフォーマンスが期待できるか
- データの管理体制が安心できるか
目的が明確になっているか
マネージドデータベースを導入する際は、利用することで最終的に何を達成したいか、明確な目的を立てることが大切です。
マネージドデータベースには異なる性能を持った複数の種類があるため、最大限の性能を発揮するには、目的に最適なデータベースの種類を選択しなければいけません。
またマネージドデータベースの利用では、利用料や管理費用などが発生しますが、最適なデータベースを選択することで無駄なコストを削減できます。
たとえば、アプリケーションの開発者がデータベースの構築や管理をする目的で、アプリケーションのデータベースとして利用するケースがあります。また、IoTシステムやセンサーデータといった大量のデータを収集・管理する目的で、マネージドデータベースを利用するケースもあります。
予算が決まっているか
マネージドデータベースの利用により、インフラ管理やセキュリティにかかる運用コストを削減できます。しかし場合によっては、従来の自己管理型データベースに比べてコストが高くなるケースがあります。
プロバイダによって、料金や支払い方法、アップグレードに伴う追加費用などが異なるため十分に調査する必要があります。そのため、利用料や管理費用、アップグレードに伴う追加費用などは、サービスごとに比較して情報を集める必要があります。
そして、全体としてはどの程度の予算までならメリットが見込めるかを明確化しておき、慎重に検討することが大切です。
代行するITベンダーが信頼できるか
ITベンダーには社内の機密情報や個人情報を扱ってもらうため、それらの管理が安全に行われていて信頼できるかは、企業がマネージドデータベースを選ぶ際の重要な項目です。
ITベンダーを選定する際、信頼性を測る指標として以下の3項目があります。
- 機密性:データの安全性を確保するために適切なセキュリティ対策をとっているか
- 完全性:災害復旧の計画やデータが破損しにくい工夫がなされているか
- 可用性:サービスを常に動かし続けられる工夫がなされているか(冗長化など)
またプロバイダが、欧州連合の一般データ保護規則(GDPR)やニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)の規制の標準に準拠しているかなども、信頼性を評価するうえで重要な指標です。
実績・事例が豊富か
ITベンダーが過去に実施したプロジェクトや業績や事例を知ることで、そのITベンダーが自社の利用目的に対して適当であるか判断できます。
自社の業界によっては、専門性が求められるケースが多くあるからです。
たとえば医療業界であれば、患者情報の保護が非常に重要であり、HIPAA(医療情報のプライバシー保護に関する法律)などの法律や規制に準拠する必要があります。
したがってマネージドデータベースのITベンダーは、医療業界におけるデータ保護とコンプ
ライアンスの知識を持ち、適切なセキュリティ対策を講じることが求められます。
またITベンダーは、データの管理や分析においても各業界におけるニーズに対する理解を持ち、データの収集や処理、分析に適したシステムを提供することが求められます。
そのため、マネージドデータベースを最大限有効活用したいのであれば、各業界においてそのITベンダーが実績や経験が豊富であるか知っておくことが大切なのです。
高いパフォーマンスが期待できるか
マネージドデータベースの導入後、想定しているパフォーマンスが実際に発揮できるか確認しましょう。導入しても想定したパフォーマンスが発揮できていないと、満足のいく成果は得られていないがコストだけがかかってしまうという状態に陥ってしまう場合があるからです。
高いパフォーマンスが期待できるかどうかは、以下のポイントを参考にしてください。
- スケーラビリティ
- 需要に応じて、容易にスケールアップ・リソースの追加ができ るか
- バックアップと復元
- 自動的に定期的なバックアップが行われ、簡単に復元できる か
- セキュリティ
- プロバイダーが提供するセキュリティ機能や、アプリケーションと データベースの間のセキュリティ対策はどのようになっているか
- モニタリング
- リアルタイムでデータベースのパフォーマンスをモニタリングする 機能や、問題が発生した場合にはアラートを発行する機能が備わっ ているか
- サポート・メンテナンス
- プロバイダーのサポートスタッフの質や迅速な対応、アップグレードやパッチのリリースのスピードはどうか
マネージドデータベースを導入したのに「依然として専門知識やチューニングが必要」という状況に陥らないよう、高いパフォーマンスが期待できる最適なマネージドデータベースを選択しましょう。
データの管理体制が安心できるか
マネージドデータを利用するうえで、データの安全な管理は確実に担保されていなければなりません。データの管理体制を評価する際には、「セキュリティ対策」と「バックアップ・復元の体制」の2つの項目を参考にするとよいでしょう。
セキュリティ対策の観点では、不正アクセスや情報漏洩を防ぐため、どのような対策が取られているか調査します。たとえば、暗号化技術によるデータ保護やアクセス制限、監視機能などがあります。
バックアップ・復元の体制の観点では、自然災害や人為的な問題が起きた場合、データが損失した際にどのような復元の体制が取られるのかを事前に知っておきましょう。
以上の要素が整備されたマネージドデータにおいては、顧客は安心してデータを保管・管理することができます。
マネージドデータベースを活用して戦略的にビジネスを成長させよう

ビジネスを成長させるには、優れた人材や良質な商品・サービス、適切な資金調達(ヒト/モノ/カネ)が必要不可欠です。
これらには必然的に膨大なコストがかかりますが、マネージドデータをうまく活用すると不要なコストを削減でき、本来必要な場所にリソースを投下できるようになります。つまり選択と集中によって、より自社のビジネスを大きく成長させられるのです。
弊社の提供する「分析基盤総合支援サービスtrocco®」はマネージドデータ転送機能を搭載しており、データ型すら設定せずに転送ができます。
今後データベースのメンテナンスだけでなく、フルマネージドなデータ活用でラクに運用する予定がある場合は、trocco®のような先進的なサービスを導入しておくのがよいでしょう。

まとめ
本記事では、マネージドデータベースの必要性やメリット、導入する際に気をつけるべきポイントなどを解説しました。
マネージドデータベースの恩恵を最大化するためには、まず最適なサービスを選択することから始まります。導入の際には、本記事で紹介したチェック項目を参考にすると効率的に調査できるでしょう。
データベースのメンテナンスやセキュリティ対策などの業務の負担が大きく、本来ウェイトを置くべきコア業務に時間をさけていないと感じている方は、ぜひマネージドデータベースの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
弊社の提供するtrocco®はETLがメイン機能であり、データの抽出や変換、ロードなどのプロセスを自動化することで、データ処理の効率化を図ることができます。そのほかにもマネージドデータ転送機能などを提供しており、フルマネージドなデータ運用をしたい方に最適なツールです。
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