オンライン分析処理、通称「OLAP」は、データ駆動の時代において、多次元的なデータ分析を可能にする強力な手法として注目されています。

データをどのように分析し、価値を引き出すかはビジネスの成功の鍵です。

本記事ではOLAPとは何か、OLAPの重要性、特徴から実装方法、他のデータ分析手法との比較まで幅広く解説します。データサイエンスやデータエンジニアリングに興味をお持ちの方、基本を固めたい方に向けて、OLAPを分かりやすく解説します。

オンライン分析処理(OLAP)とは

データは現代ビジネスの新しい石油とも言われており、データ分析は経営戦略を成功に導く重要な手段となっています。OLAPは、多次元データ分析の強力なツールとして、多くの組織で採用されています。

オンライン分析処理、通称OLAPは、複雑なデータベースのクエリを高速に処理する技術の一つです。OLAPにより、ユーザーは大量のデータから必要な情報を瞬時に取得し、ビジネスの意思決定を助けるインサイトを得られます。

OLAPの主な特徴は、多次元データモデルを使用し、データをさまざまな観点や角度から分析できることです。たとえば、時間・地域・製品カテゴリなどの異なる次元を組み合わせて、市場の売上を分析するなどの複雑なクエリを素早く実行できます。

OLAPが重要な理由

データ駆動の時代において、迅速かつ正確な情報の取得と分析は企業の競争力を左右します。データ全盛の中で、OLAPはデータ分析の主要な役割を果たしていますが、なぜOLAPが重要なのでしょうか。

OLAPの重要性は、OLAPの能力に起因しています。大量の情報をリアルタイムで分析し、多角的な視点からの洞察を提供できるのです。従来のデータベースシステムでは、複雑な分析には時間がかかり、リアルタイムの意思決定には対応できませんでした。しかし、OLAPはその障壁を取り除きました。

OLAPは、ユーザーが技術的な知識を持たずとも、直感的にデータを探索し、必要な情報を得られるツールを提供します。OLAPにより、ビジネスのステークホルダーは迅速な意思決定が可能となり、市場の変化に柔軟に対応できるのです。

OLAPの特徴

OLAPはビジネス分析の領域で非常に人気がありますが、背後にある特徴の理解が重要です。ここでは、OLAPが他のデータ分析手法とは何が違うのか、独自の特性をくわしく説明します。

データを複数の切り口で分析しやすい

OLAPの最も顕著な特徴の一つは、多次元的な視点からデータを分析する能力です。たとえば時間、地域、製品といった異なる次元を組み合わせて、データを深堀りできます。多次元的な視点は、ビジネスの複雑な問いに迅速に答えを見つけ出すための鍵となります。

クエリ性能が高い

OLAPはとくに大量のデータを扱う場合に、高速なクエリ実行性能を持っています。この特性は、OLAPがデータを効率的な構造で格納し、特定の分析操作に特化して最適化されているためです。高速なクエリ応答は、リアルタイムの意思決定をサポートします。

ニーズに合わせてデータのビューをカスタマイズできる

OLAPは、ユーザーが必要に応じてデータのビューをカスタマイズできます。カスタマイズにより、特定のビジネスニーズや問題に対する解答を得るためにデータの視点を変えたり、データ範囲の絞り込みなどが容易になります。

OLAPの3種類の実装方式

OLAP技術は、データの格納とクエリの効率性を向上させる実装方法を提供しています。これらの実装方法は、異なる特性と利点を持ち、使用するデータや要求される性能に応じて最適なものを選択できます。

OLAPにはMOLAP、ROLAP、HOLAPの3つの主要な実装方法があります。

  MOLAP ROLAP HOLAP
特徴 多次元OLAP。データはキューブ形式で保存。 リレーショナルOLAP。リレーショナルデータベースを使用。 ハイブリッドOLAP。MOLAPとROLAPの組み合わせ。
メリット 高速なクエリ性能。予め計算された集計データを使用。 大量のデータを効率的に扱える。リアルタイムのデータ分析に適している。 大量のデータの柔軟性と高速なクエリ性能。
デメリット 静的な構造。データの変更や追加の柔軟性が低い。大量のデータではDBのサイズが大きくなる。 クエリ性能がMOLAPに比べて劣ることがある。 設計と実装が複雑。高度な技術が必要。

ここでは、それぞれをくわしく説明します。

MOLAP

MOLAPは、多次元OLAPの略で、多次元データベースにデータを格納します。データはキューブ形式で保存され、それぞれの次元はキューブの辺を形成します。キューブ構造のおかげで、MOLAPは高速なクエリ性能を実現できるのです。予め計算された集計データを使用するため、複雑なクエリも迅速に処理できます。

しかし、MOLAPは静的な構造を持っているため、データの変更や追加には柔軟性が低く、大量のデータを扱う場合には、データベースのサイズが非常に大きくなる可能性があります。

ROLAP

ROLAPは、リレーショナルOLAPの略で、リレーショナルデータベースをベースとして使用します。ROLAPは、従来のリレーショナルデータベースのテーブル構造を利用してデータを保存し、特別な中間ソフトウェアを使用して多次元的なクエリをサポートします。ROLAPの主な利点は、大量のデータを効率的に扱える点と、データベースの更新が容易であるため、リアルタイムのデータ分析に適している点です。

しかし、クエリ性能はMOLAPに比べると劣ることがあるため、適切なインデックスや集計戦略の設計が重要となります。

HOLAP

HOLAPは、ハイブリッドOLAPの略で、MOLAPとROLAPの特徴を組み合わせたものです。HOLAPは、詳細データはリレーショナルデータベースに格納しつつ、集計データや頻繁にアクセスされるデータは多次元キューブの形式で格納します。HOLAPにより、大量のデータの柔軟性と高速なクエリ性能の両方を実現できます。

しかし、HOLAPの設計と実装は複雑であるため、システムの設計と運用には高度な技術が求められます。

OLAPキューブと分析オペレーション

OLAP分析の中心には「キューブ」という概念があります。キューブは多次元のデータ構造を持ち、さまざまな観点からデータ分析を可能にする技術です。

キューブを効果的に利用するための一連のオペレーションが存在し、これらの操作によってデータの詳細度や視点を変更しながら分析できます。

ここでは、主要な分析オペレーション「ロールアップ」、「ドリルダウン」、「スライス」、「ダイス」、「ピボット」について解説します。

ロールアップ

ロールアップは、データをより高い階層レベルで集計する操作です。たとえば、日次の売上データが存在する場合、ロールアップを使用して月次、四半期、年次といったより高い時間階層での売上データを表示できます。ロールアップにより、トレンドの確認や、特定の期間におけるパフォーマンスの評価など、大局的な視点からの分析が容易になります。

ドリルダウン

ドリルダウンはロールアップの逆の操作で、データをより詳細な階層レベルで表示できます。年次の売上データを元に、特定の月、週、日といったより詳細な時間階層でのデータを探ることが可能です。ドリルダウンにより、特定の期間に何が起こったのか、どの商品や地域のパフォーマンスが良かったのか、などを分析できます。

スライス

スライスは、OLAPキューブの特定の次元に沿ってデータを切り取る操作です。たとえば、全国の月次売上データのキューブがある場合、特定の月や特定の地域だけを取り出して「スライス」表示します。スライス操作により、特定の条件下でのデータを瞬時に確認できます。

ダイス

ダイスは、キューブから特定の範囲を選択して新しいサブキューブを作成する操作です。たとえば、特定の期間と特定の商品カテゴリに関するデータだけを取り出して新しいキューブを形成できます。ダイス操作により、関心のある特定のデータセグメントに焦点を当てて分析できます。

ピボット

ピボットは、データの視点を変更する操作で、キューブの次元を回転させてデータを異なる角度から観察します。月次の地域別売上を商品カテゴリ別の月次売上に変更できるなどは、ピボットの一例です。ピボットにより、同じデータセットをさまざまな視点から分析でき、多角的なインサイトを得られます。

OLAPと他のデータ分析手法との比較

データ分析の分野は多岐にわたり、手法やアプローチはさまざまです。OLAPは、データ分析の中でも独自の強みを持つツールとして知られています。では、OLAPは他のデータ分析手法と何が異なるのでしょうか。

ここでは、OLAPと他の代表的なデータ分析手法である「データマイニング」、「OLTP」と比較します。

  OLAP データマイニング OLTP
特徴 データの探索や集計を多次元の視点から分析 大量のデータから隠れたパターンや関連性、トレンドを抽出する技術 リアルタイムのトランザクション処理に特化したシステム
目的 既知のデータからのインサイト抽出 未知の知識の発見 高速なトランザクション処理、データの整合性や信頼性
主な用途 データ分析、探索 予測分析、クラスター分析 銀行の取引、オンラインショッピング等の業務処理

データマイニング

データマイニングは、大量のデータから隠れたパターンや関連性、トレンドを抽出するための技術です。データマイニングは、主に予測分析やクラスター分析に使用されます。

一方、OLAPはデータの探索や集計に重点を置き、多次元の視点から分析します。データマイニングは未知の知識の発見を目的としているのに対し、OLAPは既知のデータからのインサイト抽出が目的です。

OLTP

OLTP(Online Transaction Processing)は、リアルタイムのトランザクション処理に特化したシステムです。OLTPは、銀行の取引やオンラインショッピングなどの日常的な業務処理に使用されます。OLTPは高速なトランザクション処理を目的としており、データの整合性や信頼性が重要です。

一方、OLAPはデータの分析と探索を目的としており、大量のデータを多次元的に分析できます。OLTPとOLAPは、それぞれ異なる目的のために最適化されており、一般的に異なるシステムとして構築・運用されます。

まとめ

データは現代のビジネスにおいて重要な資源となっており、活用方法は日々進化しています。OLAPは多次元的なデータ分析に特化した強力なツールとして、ビジネスの意思決定をサポートします。OLAPの特徴や利点を知り、データを活用することで、ビジネスの競争力が高まります。

データマイニングが未知の情報を発掘するのに対し、OLAPは既知のデータを多角的に探索し、深いインサイトを提供します。また、日常のトランザクション処理を担当するOLTPとは異なり、OLAPは純粋にデータの分析と探索に特化しています。

そして、これらのデータ分析ツールを最大限に活用するためには、データの質とその整備が不可欠です。ここでETLツールの重要性が浮かび上がります。

ETLツールはデータの抽出、変換、ロードを効率的に行い、高品質なデータの提供をサポートします。正確な分析を行うためには、信頼性の高いデータ基盤の構築が必要です。ETLツールを導入することで、データの整合性や品質を維持しつつ、迅速なデータ処理を実現することができます。データの時代において、ETLツールの導入はビジネスの競争力を一段と高める鍵となります。

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