オンライントランザクション処理(OLTP)は、データ駆動のビジネスが注目される現代において、ますます重要性を増しています。

私たちの日常における銀行の取引やオンラインショッピング、航空券の予約といった行動がスムーズに進むのは、データベースの背後で重要な役割を担っているOLTPの存在があるからです。

本記事では、OLTPの基本的な概念、活用される具体的な場面、背後の技術についてくわしく解説していきます。

オンライントランザクション処理(OLTP)とは

近年、データ駆動の意思決定を目指し、社内のデータを整理する企業や、データ収集方法を見直す企業が増えてきました。データ駆動型の経営や営業活動を効果的に行うためには、リアルタイムでのトランザクション処理が必須となります。このようなデータのトランザクション処理を効率的に取り扱うためのシステムが、オンライントランザクション処理(OLTP)です。

OLTPは、日常の業務活動をサポートするシステムで、大量のトランザクションを高速で処理することを主な目的としています。データベースの読み取りよりも書き込みの操作が頻繁に行われる傾向があります。

日常の生活の中では、銀行の取引やオンラインショッピング、航空券の予約など、私たちが行う多くの活動がOLTPの恩恵を受けています。

OLTPは、短期間で大量のトランザクションを正確に処理する能力が求められるため、データの整合性や信頼性が非常に重要です。OLTPシステムは高い可用性を持ち、障害が発生した場合でも迅速に復旧することが期待されます。

OLTPの特徴

オンライントランザクション処理(OLTP)は、多数のトランザクションを短時間で処理することを目的としたシステムです。OLTPには、トランザクション処理の効率性を向上させるための特徴がいくつかあります。

以下では、OLTPの主要な特徴についてくわしく解説します。

リアルタイムでの高速処理

OLTPシステムの中心的な特徴は、リアルタイムでの高速なトランザクション処理能力です。顧客がATMでの取引やオンラインショップでの商品購入、航空券の予約などの際、システムは即座にレスポンスを返し、トランザクションを確実に処理します。OLTPの迅速な処理能力は、ユーザーエクスペリエンスの向上とビジネス効率の改善に直結しており、OLTPの重要な特性の一つです。

データの整合性と正規化

OLTPシステムでは、データの整合性を保つことが極めて重要です。トランザクションが同時に多数発生する状況で、矛盾や重複を生じさせないようにするため、データベース設計の段階で正規化が行われます。正規化は、データの冗長性を排除し、効率的なデータの更新や追加を可能にする技術です。正規化により、OLTPシステムは継続的なトランザクション処理においても、データの信頼性を維持します。

高い信頼性と可用性

OLTPシステムは、多くの業務プロセスで中心的な役割を果たしているため、動作の高い信頼性が求められます。障害が発生した場合でも、迅速に復旧し、業務の中断を最小限に抑えることが重要です。システムの可用性が高く、24時間365日の安定した運用が期待されます。要件を満たすため、冗長化やバックアップ、障害復旧の対策が取られます。

OLTPとOLAP・DWHの比較

データ処理の世界には多様なアプローチが存在します。OLTP、OLAPDWHは、それぞれ異なる目的と特性を持ったデータ処理の手法です。各データ処理の違いを理解することは、データ駆動のビジネス戦略を効果的に進める上で不可欠です。

  OLTP OLAP DWH
定義 日常のトランザクションをリアルタイムで高速に処理するシステム 大量のデータを集約し、ビジネスの意思決定をサポートするための分析を目的とするシステム 企業のさまざまな情報源からデータを集約し、統一的な形式で保存する大規模なデータベースシステム
主要操作 書き込みが主 読み取りが主 長期的な分析やレポート作成のためのデータ提供
特性
  • データの正確性と整合性が重要
  • リアルタイムでの処理が重視
  • 多次元的なデータビュー
  • 複雑なクエリ実行の高速化
  • さまざまな情報源からのデータ集約
  • 時系列にわたるデータのトレンドやパターン分析のためのデータ保存

OLTPとOLAP

オンライントランザクション処理(OLTP)は、日常のトランザクションをリアルタイムで高速に処理することを重視しています。一方、オンライン分析処理(OLAP)は、大量のデータを集約し、ビジネスの意思決定をサポートするための分析を目的としています。

OLTPは書き込み操作が主であり、OLAPは読み取りが主となります。また、OLAPは多次元的なデータビューを提供することで、複雑なクエリ実行の高速化を実現しています。

OLTPとDWH

データウェアハウス(DWH)は、企業のさまざまな情報源からデータを集約し、統一的な形式で保存する大規模なデータベースシステムです。

OLTPは日常のトランザクションをリアルタイムで処理するのに対し、DWHは長期的な分析やレポート作成のためのデータを提供します。OLTPはデータの正確性と整合性を保つことが重要であり、DWHは時系列にわたるデータのトレンドやパターンを分析するためのデータを保存します。

OLTPが活用される場面

日常の多くのシーンで私たちが行うトランザクションは、背後のOLTPシステムによって処理されています。OLTPのシステムがリアルタイムでの高速なトランザクション処理を提供することで、スムーズなサービスや業務が実現できます。銀行取引からオンラインショッピング、旅行の予約まで、多岐にわたるシーンでOLTPの力が発揮されています。

銀行の取引処理

銀行業界では、顧客がリアルタイムでのサービスを求めるため、OLTPシステムの導入は不可欠です。ATMでの引き出しや振り込み、モバイルバンキングでの送金などのトランザクションは、OLTPによって即座に処理され、顧客の要求に応えます。取引のデータ整合性やセキュリティも保たれるため、顧客は安心して銀行サービスを利用できます。

ECサイトの注文処理

オンラインショッピングは今や日常の一部となっています。顧客が商品をカートに入れ、購入ボタンをクリックすると、在庫の確認から決済・注文情報の保存まで一連のトランザクションがOLTPシステムで処理されます。OLTPによって顧客は迅速な購入体験を得られ、企業は効率的な業務運営を実現できます。

航空券やホテルの予約システム

旅行の計画を立てる際、多くの人々はオンラインで航空券やホテルを予約します。旅行の予約システムも、OLTPの恩恵を受けています。顧客が希望する日時や席を選択した際、システムはリアルタイムで空席情報を確認し、トランザクションを確定できるのです。OLTPにより、ユーザーはスムーズな予約体験を享受できます。

OLTPシステムの構築・運用で利用される主要データベース・ツール

OLTPシステムの性能と信頼性は、使用されるデータベースや関連ツールの選択に大きく依存します。適切なデータベース技術の選択は、高速なトランザクション処理、データの整合性、システムの可用性を保証する上で極めて重要です。

以下では、OLTPシステムの構築と運用において一般的に使用される主要なデータベースとツールについて解説します。

リレーショナルデータベース(RDBMS)

リレーショナルデータベース(RDBMS)は、データをテーブル形式で整理し、関連性のあるデータを定義できるシステムです。OLTPにおいては、トランザクションの整合性と効率的なデータアクセスが要求されるため、RDBMSが頻繁に採用されています。

主要なRDBMSには、Oracle Database、Microsoft SQL Server、MySQL、PostgreSQLなどがあり、それぞれが独自の特徴と機能を持っています。

RDBMSの高い信頼性、スケーラビリティ、パフォーマンスによって、多くの企業や組織でOLTPシステムのバックエンドとして利用されています。

NoSQLデータベース

NoSQLデータベースは、リレーショナルデータベースとは異なるデータモデルを採用しており、スケーラビリティと柔軟性を重視して設計されています。NoSQLは、大量のデータを高速に読み書きする必要があるOLTPシステムに適しています。

MongoDBは、文書指向のNoSQLデータベースとして知られ、JSONライクな形式でデータ保存が可能です。

Cassandraは、高い可用性と分散処理を特徴とするカラム指向のNoSQLデータベースです。

NoSQLデータベースは、従来のRDBMSに比べてスキーマの変更が容易であり、アプリケーションの変更やスケールアウトを容易に実施できます。NoSQLにより、動的なOLTP環境においても高いパフォーマンスの維持が可能となります。

OLTPシステムの監視・管理ツール

OLTPシステムの適切な監視と管理は、システムの健全性を維持し、迅速なトラブルシューティングに不可欠です。

New Relicは、アプリケーションのパフォーマンスモニタリングに特化したツールで、トランザクションの追跡やエラーレートの監視が可能です。

DataDogは、クラウドスケールのモニタリングサービスを提供し、システム全体の監視やアラート通知機能を持っています。

SolarWinds Database Performance Analyzerは、データベースのパフォーマンス問題を特定し、最適化のための洞察を提供するツールです。OLTPシステムの監視やトラブルシューティング、最適化のための有効な手段として広く採用されています。

まとめ

オンライントランザクション処理(OLTP)は、ビジネスや日常生活に必要なデータ処理を支える中心的な役割を果たしています。

リアルタイムでの高速なトランザクション処理を可能にするOLTPは、銀行取引、オンラインショッピング、航空券の予約など、さまざまなシーンで活用されています。

OLTPの成功の鍵は、データの整合性、高速性、信頼性です。OLTPを支えるデータベース技術や監視・管理ツールの正しい選択は、システムの性能や信頼性を向上させる上で不可欠です。

このOLTPのデータをさらに有効に活用するためには、ETLツールの導入が欠かせません。ETLツールを使用することで、データの抽出、変換、ロードを効率的に行い、データ駆動のビジネス戦略をさらに強化することができます。

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