データを管理する上で、唯一の正しい情報源を持つことが重要であることは周知の事実です。これがSingle Source of Truth(SSOT)と呼ばれる考え方です。SSOTを実践することで、企業がデータを正確かつ迅速に処理し、意思決定を行えるようになります。本記事では、SSOTの考え方やSSOTを実践するメリット、具体的な実践方法を解説します。
Single Source of Truth(SSOT)とは
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Single Source of Truth(SSOT)とは、情報の一貫性と正確性を確保するための概念であり、組織内の全員が同じデータに基づいてシステムの報告性を決定するために用いられます。SSOTでは、中央集権化された信頼できるただ1つのソースを確立した上で、そのデータソースを元にタスクを切ります。これにより、組織内の情報の一元化・効率的なデータの活用・迅速なシステムの方針決定が可能となります。データ主導の方針決定をすることで、多くのデータソースからの数値を一々議論する必要がなくなり、単一の信頼できる情報源を通じてメンバー全員で一貫したデータを利用できます。
このようなSSOTモデルは組織内の多くのシステムからのデータを1つの場所に集約し、企業が提供しているサービス全体のデータのステータスを管理します。たとえば、Googleが検索エンジンを通じてレストランの情報を提供するように、単一の信頼できる情報源として機能します。
SSOTが重要な理由

ビジネスの意思決定が速くなる
従来のシステムでは情報が分散しており、複数の情報源のデータを人間の手によって整合させる作業が必須でした。しかしSSOTでは、情報が一元化され信頼性の高いデータソースから直接情報を取得することが可能となりました。これによって情報収集や分析にかかる時間が短縮され、スピーディな意思決定ができるようになりました。さらに、誤った情報により誤った意思決定をするリスクも回避できます。
情報の透明性・信頼性が高まる
SSOTは正確な情報が一元的に管理されるため、情報の整合性や正確性が向上します。これによって、組織内の各部門や関係者が同じ情報を元に業務にあたれます。情報の透明性が高まることにより組織内のコミュニケーションや作業の質も向上するため、効率的な業務遂行が可能となります。
データのサイロ化を防げる
従来のシステムでは部門やプロジェクトごとに異なるデータソースが存在するため情報の共有や連携に難航していましたが、SSOTではデータが中央集権的に管理されるため、データの一元化が実現し、異なる部門間やプロジェクト間での情報の共有や連携が簡単になりました。データのサイロ化を解消することにより、組織全体の情報の一元性が確保され効率的な業務遂行が実現できます。
SSOTが活用されている3つの事例

検索エンジン
現代のインターネットでは誰もが膨大な情報にアクセスできますが、その中から正確な情報を見つけることは容易ではありません。検索エンジンはSSOTの原則に基づいて、膨大なデータソースから情報を収集し、最も関連性の高い結果をサジェストする仕組みで動いています。
たとえば、Googleは入力された検索キーワードを元に情報を収集し、インターネット上の様々なリソースを中央データベースにカタログ化しています。このカタログ化によって、ユーザーが求める情報に適切に応えられるようになっています。
ソフトウェア開発
ソフトウェア開発において、大抵の場合は複数の開発者やチームが協力して開発を進めます。しかし、分散した情報や不整合なコードベースは開発作業を複雑化させ効率を低下させるファクターになります。
このような場合にSSOTの仕組みを取り入れることで開発者間での情報の共有やコードの統合がスムーズに行えます。情報の共有やコードの統合が簡単になれば一貫性のあるコードベースに基づいて作業し、成果物の品質や効果的な開発プロセスの確保が可能となります。
法規制の遵守
システムのリリースにおいて、企業や組織は法的な要件や規制を遵守しなければいけません。しかし情報の分散やデータの不一致がある場合、法的な要件・規則に即した正確な情報の選択が困難になります。このようなケースでもSSOTを導入すれば必要な情報やデータを一元管理できるため、情報を正確かつ迅速に探し当てられます。
また、SSOTによるデータの一元化は将来の法的な要件が変化した際にも柔軟に対応できるため、今だけではなく未来に渡ってもデータの適合性が確保できます。
SSOTを確保するための5つのステップ

データの利用目的や活用シーンを明確にする
まずはデータの利用目的や活用シーンを明確にするステップが必要です。データは組織内のさまざまな部門や業務で活用されますが、それぞれの目的やシーンに応じて必要なデータの範囲や精度が異なります。
たとえば、経営陣が事業の方針決定に必要なデータでは戦略的な視点に基づく情報が求められ、営業チームが顧客データを活用する際には顧客情報や売上データが必要となります。データを活用する明確な利用目的を定義すれば、必要なデータの収集や整理をする際に的確な判断ができます。
データを集約する
次に、データを集約するステップが求められます。組織内でデータが散在していると一貫性や正確性の確保が困難になるため、異なるソースから集積されたデータを一元化し統合することが重要となります。データウェアハウスやデータレイクなどの技術を活用することにより、複数のデータソースからのデータを統合し統一的なデータベースの作成ができるようになります。
また、APIを叩くことにより異なるシステム間でのデータの受け渡しを効率化することも重要です。これらのステップを踏むことで情報の一貫性を確保し、組織全体で信頼性の高いデータを共有できる下地が作れます。
管理・運用ルールを定める
その次のステップとして、適切な管理・運用ルールを定めます。データのアクセス権限や更新手順、データ品質の管理などのデータに関するルール・ポリシーを策定し、それらを従業員や関係者に遵守させましょう。
たとえば、データのアクセス権限を明確にすれば機密性やセキュリティの確保ができます。また、データの更新や変更に対する手順を明文化することによりデータの一貫性・信頼性の向上が図れます。
データの品質管理をする
4番目に行うステップとして、データの品質管理を徹底します。データは常に変化し、入力ミスやエラーが発生する可能性があるため、データ品質の監視、データクレンジング、エラー修正などのプロセスを実施し正確性・一貫性を確保しましょう。このような管理を定期的に実施することでデータの信頼性が担保できます。
マスターデータを管理する
最後にマスターデータの管理を行います。マスターデータとは組織全体で共有される、システムの根幹を担うデータのことです。マスターデータには、製品情報、顧客情報、従業員情報などが含まれます。このような情報が含まれるマスターデータの管理を行い他のデータやシステムとの整合性を確保することで、SSOTの基盤が盤石なものとなります。データの管理をする際には、メタデータの管理や一意の識別子を使用しましょう。マスターデータに変更・追加などがあった場合には迅速に対応することで、SSOTの品質も担保できます。
SSOTの実践に必要な技術・知識・スキル

データモデリング
データモデリングはデータの構造や関係性を定義し、データの意味・用途を明確にします。正確なデータモデルを設計することにより、一貫性のあるデータが保持できるため、SSOTの構築に役立ちます。とくに、エンティティ関係図(ER図)の作成や関係データベースを設計する知識があるとよいでしょう。
データ統合とETL
データ統合とETL(抽出・変換・読み込み)とは、異なるデータソースからデータを集積する技術です。データの変換や統合を行い、一貫性のあるデータを作ります。データソースからのデータの抽出方法や変換ルール、データのロード手法などを理解することで効率的なデータ統合プロセスの構築ができます。とくに、Talend、Informatica、Apache NiFiなどの技術があるとよいでしょう。
データ品質管理
データ品質管理とは、データの正確性・一貫性・信頼性を担保するためにデータ品質の監視・データクレンジング・エラー修正などを行うことです。品質管理のプロセスにおける課題を特定し、改善策実施のための分析スキルやコミュニケーションスキルも必要となります。
マスターデータ管理
マスターデータ管理とは、組織内のマスターデータの一元化と管理を担う技術のことです。マスターデータとは前述の通り、組織全体で共有される重要なデータのことです。この技術によってマスターデータの正確性・一貫性を確保し、他のデータやシステムとの整合性をキープします。まずは、マスターデータの定義や整理、変更管理、データの統合と同期について調べることをおすすめします。
データセキュリティとアクセス制御
SSOTの実践においては、データセキュリティとアクセス制御についての知識も必要です。セキュリティ対策の設計を確実に行うことで、不正アクセスやデータ漏洩を防ぎ、システムの機密性や安全性を担保します。この領域ではとくに、セキュリティベストプラクティスや技術(例:LDAP、Active Directory、IAMツール)への理解が求められます。
API・データ連携
API(Application Programming Interface)を活用してシステム間のデータ連携を円滑にすることも、SSOTの構築に役立ちます。とくに、RESTful APIやSOAPなどのAPIスタイルやプロトコルを理解し、APIの認証・認可メカニズムやデータの取得・更新を行うためのAPIエンドポイントを設計する知識が必要となります。
クラウドテクノロジー
クラウドベースのデータストレージやデータ処理プラットフォームの活用など、クラウドテクノロジーを用いることによってデータの集約・管理・アクセスにおける柔軟性の向上が図れます。まずは、Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloudなどのクラウドサービス上でどのようにデータ統合ができるかについて調べることをおすすめします。
SSOTの実践を成功させるためのポイント

データの整合性の維持
SSOT構築の成功の鍵は、データの整合性を維持することです。異なるデータソースやシステム間でのデータの整合性を保つために、データバージョン管理の手順や統合手順を策定しましょう。
データの変更があった場合には、そのデータが関連するシステムやデータソースに直ちに正しく反映します。データの整合性を確保すれば情報の一貫性が保たれた信頼できるデータを保持できます。
アクセス範囲の管理
データへアクセスできる範囲を適切に管理することも重要です。データのセキュリティと信頼性を確保することで、適切なアクセス制御メカニズムが実現できます。
アクセス範囲の管理では、ユーザーやグループごとに適切なアクセス権を与え、一方では機密情報へのアクセスを制限するロジックを構築します。この設定によって堅牢なセキュリティインストラクチャを実現し、不正アクセスや重要情報の漏洩を防止します。
データガバナンスの実施
データガバナンスは、データの管理手順と品質を確保するためのフレームワークです。
このフレームワークに従ってデータの管理を実施する際には、データの管理責任やルールの策定も行いましょう。組織内でのデータの所有者や管理者などの因果関係を明確にすれば、データの整合性や品質を維持する一端となります。
データガバナンスについてはこちらの記事でより詳細に解説しています。ぜひご覧ください。
データガバナンスの全貌とは?必要性や取り組み方、事例をわかりやすくまとめました
協力体制の構築
上記のポイントの他にも、SSOTの実践には組織内での協力体制の構築が不可欠です。異なる部門やメンバーと普段から円滑にコミュニケーションを取りましょう。適宜、プロジェクト管理ツールやチャットツールを導入することでスムーズな連携が図れます。
まとめ

今回はSSOTについて解説しました。前述の通り、SSOTは構築に成功すれば事業の飛躍に非常に役立ちますがデータモデリングやELTの知識、API・データ連携やクラウドテクノロジーに対する理解などが必要であり始めるハードルは低くはありません。また、SSOTについてのドキュメントも英語がメインであり、日本語ユーザーにとっては若干学習コストが高いことも否めません。しかし弊社で提供しているtrocco®を活用すればこのようなデータの集約が非エンジニアでも簡単に実行できます。
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