ビッグデータ時代において、データの解釈と活用は組織の競争力を左右する重要な要素となりました。その中でも、整理された形で保存、アクセス、分析が可能な構造化データは、その効率的な管理と活用が求められます。

この記事では、構造化データの基本から、どのように活用されているのかについて解説します。構造化データについての理解を深めるのにぜひご活用ください。

構造化データとは

構造化データの定義と特性

構造化データとは、行と列の概念を持ち、定められた構造に整形されたデータを指します。

データは、テーブルやスキーマに基づいて整理されており、各列にはデータの意味や関係性が明確に定義されています。たとえば、数値や文字列、日付などの異なる種類のデータを正確に表現でき、データ型によって各データに対して適切な演算や処理が可能になるのです。

構造化データは、文字通り、データが「構造化」されているため、検索や集計、分析などを効率的に行うのに適しています。また、データが整形されているため、SQLでデータの検索や更新、分析を容易に行えるのが特徴です。

構造化データの主要な形式

構造化データには、いくつかの形式が存在し、データの使用目的やプラットフォームなどに応じて適切な形式を選択する必要があります。本章では、その中でも主要な5つの形式を紹介します。

テーブル形式

行と列の格子状の構造になっており、各行はレコードを表し、各列は属性やフィールドを表します。おもに、MySQLやPostgreSQLなどのリレーショナルデータベースに使用されます。

CSV

コンマやセミコロンなどでデータを区切り、テキストファイルとして表現します。主にデータのエクスポートやインポート、データの交換に利用されます。

スプレッドシート

行と列による構造で、セル内にはテキストや日付、数値などを入力できます。ExcelやGoogle Sheetsなどにより作成され、データの整理や計算、グラフ作成などに利用可能です。

XML

タグや要素によって表現しており、データの構造と階層関係を明確に定義できます。おもに、データの交換やウェブ上でのデータ表現に使用されます。

JSON

階層構造を持つキーと値のペアから形成され、オブジェクトや配列を組み合わせてデータを表現します。アプリケーションやAPIに広く利用されています。

これらの形式が、構造化データに代表される形式です。それぞれ、データの表現方法が異なり、特性やユースケースも異なります。導入の際には、各形式の特徴を理解したうえで、目的に沿った形式を選択することが大切です。

構造化データのメリット

機械学習での利用がしやすい

機械学習が非常にしやすい点は、構造化データの大きなメリットであるといえます。

テーブルや行列などのように、データが定められた形式で整理されているため、データのパターンをモデルが理解しやすく、データの操作が容易になるのです。

また、SQLデータベースとの親和性が高い特徴も、機械学習に利用しやすい理由に直結しています。構造化データは、SQLの活用により、データの前処理や特徴の抽出を行えます。そのほかにも、SQLによってデータの品質管理や整合性の維持も可能で、機械学習のプロセスを補完するのに最適なのです。

誰でも扱いやすい

一般的に、構造化データは専門知識を持たない人にとっても、理解しやすく、扱いやすいデータ形式だといえます。

構造化データは、テーブルや行列などの事前に定められた形式で整理されているため、直感的にデータのパターンを理解しやすいです。また、データがあらかじめ整理されているため、扱うデータの内容や関係を理解している必要はない点も、多くの人が利用しやすい要因の一つです。

さらに、テーブルや行列が多くのビジネスユーザーになじみやすい形式である点も、扱いやすい理由に起因しています。現代では、Google スプレッドシートやExcelなどの、行と列を用いたソフトウェアが普及しているため、構造化データを利用したデータの編集や分析も同じ要領で行えるでしょう。

利用できるツールが多くある

利用できるツールが豊富である点も、構造化データの大きなメリットです。

構造化データを利用できる代表的なツールは、やはりExcelやGoogleスプレッドシートなどのスプレッドシートソフトウェアです。これらはテーブル形式でデータを表現しており、基本的な計算や分析ができます。

BIツールも構造化データを利用できるツールのひとつです。TableauやPower BIなどのBIツールは、おもにデータの分析結果の可視化やレポートの作成に役立ちますが、構造化データの加工や統合にも利用されます。

また、MySQLやPostgreSQLなどのSQLデータベースは、構造化データを効果的に管理できます。構造化データはテーブル形式で格納されているため、SQLクエリによって、容易にデータの操作が可能です。そのため、データの前処理や分析によく利用されます。

構造化データのデメリット

意図された目的以外で利用しにくい

構造化データは、定められた目的に応じて事前にデータが整形されるため、反対に、その目的以外でデータを利用するのは難しくなります。

意図された目的以外で利用するのも不可能ではないですが、特定の目的に合わせた利用を行うためには、適切な前処理やモデルの選定が不可欠です。さらに、データの内容の意味理解やコンテキストの理解も求められ、必然的に専門知識が必要となります。

データの利用目的が絞られている分、データ分析の柔軟性や活用例は限られるため、構造化データを利用する際には、慎重に目的を選定する必要があります。

要件変更にコストや手間がかかる

データの要件に変更があった場合、基本的に構造化データの更新が必要です。データの更新には膨大なコストがかかり、要件によってはストレージの拡張を強いられるケースもあります。

そのほかにも、要件変更に伴う影響はいくつか考えられます。たとえば、既存のデータを新しい要件に合わせて再処理する必要があるかもしれませんし、データベースのスキーマに影響を与える場合は、データベース設計から変更しなければならない場合もあるでしょう。

そのため、データベースやアプリケーションの設計段階から、要件変更の可能性を加味し、柔軟性を持たせておくことが求められます。また、クラウドベースのストレージを使用していると、後からでもサイズを拡張できるため、膨大なコストをかけずにストレージの拡張に対応できるケースがあります。

構造化データと非構造化データの違い

非構造化データとは、構造化データとは反対に、整形されずにそのまま格納され、使用時まで処理されないデータを指します。テキストや画像、動画など、特定の形式に制限されない、多様なデータ形式を持ちます。

データが取得された状態のまま保存されているため、目的に応じて柔軟に活用できる点が最大の特徴です。ただ、データが整理されていないため、構造化データに比べて処理や分析が難しく、専門知識や技術を要するデメリットもあります。

以下の表は、構造化データと非構造化データの特徴とその違いを比較した表です。

構造化データ非構造化データ
データ形式テーブルや行列で整理されている特定の形式に制限されず、多様な形式
データの格納方法フィールドやカラムごと自由な形式で、格納方法に制約はない
データ処理の難易度処理や分析は比較的容易処理や分析に専門知識や技術が必要
データの例顧客データ、売上データツイート、テキスト、写真、動画など
データの柔軟性ないある

データを活用する際には、これらの特徴の違いを理解したうえで、どちらのデータ形式を選択するか慎重に検討することが大切となります。

半構造化データとは

半構造化データとは、構造化データと非構造化データの中間に位置するデータ形式を指します。代表的な表現形式に、XMLやJSONなどがあります。

どちらかといえば非構造化データに分類されますが、ある程度は構造が決まっているため、さらに整理すれば構造化データへの変換が可能です。このように、構造化データと非構造化データの中間に位置することで、それぞれのメリットを採り入れつつ、独自の特徴を持っています。

半構造化データでは、一部が構造化されているため、構造化データよりもデータの要件変更が容易であり、データモデルの柔軟性と拡張性があります。また、一部の属性やフィールドが明確な構造を持つことで、非構造化データよりもデータ処理や分析が容易です。

ただ、中間的な存在であるが故に、構造化データと非構造化データの両方のデメリットも併せ持ちます。そのためデータ活用の際には、目的と照らし合わせて慎重に検討し、適切な選択をする必要があります。

構造化データの活用例

構造化データは、その整理された形式から幅広い分野で利用されています。構造化データのおもな活用例を紹介します。

ビジネス分析とレポート作成

数値や日付、文字列など属性ごとに整理できる特性を生かし、顧客データや売上データの分析に利用されます。ビジネスのパフォーマンス分析やトレンドの特定、売上レポートの作成などに用いられます。

在庫管理

商品の在庫データや配送データを利用し、在庫の最適化や供給の効率化を図ります。また分析により、需要予測をし、在庫の調整に役立てます。

カスタマーサポート

顧客からの問い合わせやチャット履歴を構造化データとして保管し、顧客対応の履歴やトレンドを追跡できます。これにより、顧客の傾向を分析したり、カスタマーサポートに役立てたりします。

医療・教育分野

医療分野では、患者の診察記録や治療履歴を構造化データとして管理して、患者の病状の傾向や治療の効果を評価するのに役立てます。教育分野では、学生の成績や試験の結果などを構造化データとして管理し、進路や成績の予測に用いられます。

このほかにも、多くの分野で構造化データがデータの整理や分析に用いられています。構造化データの特性を活かすことで、ビジネスにおいて効果的な意思決定が可能です。

構造化データの分析

構造化データは、管理しているデータが属性ごとに分かれているため、活用目的に応じて、さまざまな分析をしやすい点が特長です。構造化データを活用した分析のおもな事例を紹介します。

記述統計分析

構造化データは数値を正確に表現できるため、データの中央値や平均などを計算し、データの概要を可視化するのに役立ちます。そして、集計や集約により、データのパターンやトレンドを把握できます。

時系列分析

取得したデータを時系列に整理することで、時間の変化に伴う変化を把握するのに役立ちます。たとえば、売上データの予測やウェブ上での追跡などに利用されます。

機械学習を用いた分析

構造化データが機械学習に利用しやすい特徴から、機械学習によるデータの予測も行われます。購買の傾向を分析し、特定の商品を購入する確率を求めることが可能です。

相関分析

構造化データは属性が明確に分かれているため、異なる変数間の相関関係を調べるのにも適しています。たとえば、顧客の購買履歴とその商品の評価の関連性を分析できます。

地理空間分析

地理的な情報が組み込まれたデータを分析することにより、地理的な傾向を把握できます。たとえば、特定の地域の販売データや人口のデータを用い、その地域の購買傾向を読み取るのに役立ちます。

構造化データを用いたデータ分析の種類は様々ですが、そのデータの特性によって適切な分析手法は異なります。また、ビジネスのニーズによっても求められる分析は異なるため、効果的な意思決定につなげるには、最適な分析手法を選択することが大切です。 

まとめ

本記事では、構造化データの特長やメリットデメリット、また非構造化データや半構造化データとの違いについて解説しました。構造化データは、あらかじめ定められた方式で整理されているため、活用目的に沿って効率的にデータを利用するのに長けています。

一方、活用目的が絞られえているがゆえに、「柔軟性に乏しい」欠点も併せ持っているため、データを活用する際には事前に綿密な計画を立てておくことが重要です。構造化データの利用はビジネスにおいて非常に重要なキーとなりますが、データのETLに多くの時間を割いてしまっては、分析結果の活用などの本来ウェイトを置くべき業務に注力できず、本末転倒な結果となってしまいます。

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