データは企業活動において非常に重要なものであり、その価値と活用方法は組織の競争力を大きく左右します。その中でも、形式にとらわれない非構造化データは、その取り扱いと活用が急速に重要になっています。

この記事では、非構造化データの基本から、どのように活用されているのかについて解説します。非構造化データについての理解を深めるのにぜひご活用ください。

非構造化データとは

非構造化データの定義と特性

非構造化データとは、定められた形式に整理される構造化データに対し、一定のスキーマや形式、構造にとらわれないデータを指します。X(Twitter)の投稿などのテキストデータや画像、動画などさまざまな形式のデータが一例です。

非構造化データは形式にとらわれないデータであるため、定量的に評価できない複雑な情報を正確に表現するのに役立ちます。たとえば、ツイートに含まれる感情や音声の微妙なニュアンス、画像の表す内容などです。これらの情報には、数値化できない隠れた情報が含まれている可能性があるため、ビジネス上のインサイトを得るうえで価値のあるデータといえます。

また、事前に定められた形式に整理される構造化データに比べ、非構造化データは柔軟性が高い点が特徴です。構造化データは特定の目的にのみ効果を発揮しますが、非構造化データは自由な形式で保存されるため、活用目的に応じてデータを整形できます。

非構造化データの主要な形式

前章で解説したとおり、非構造化データは特定のスキーマや構造にとらわれず、多様な形式で保存されます。本章では、その中でも主要な形式を6つ紹介します。

テキストデータ

Word文書、E-mail、PDF、ウェブページのテキストコンテンツなどが該当します。自然言語処理を用いることで、文の意味や情報を抽出します。

画像データ

JPEGなどの写真、図、グラフ、イラストなどの視覚的な情報が該当します。画像認識技術やコンピュータビジョン技術などを用いて、情報の特徴やパターンを解析します。

音声データ

録音データやmp4などの音声ファイルが含まれます。音声認識技術を用いて、音声から文字起こしをしたり、音声コマンドの解釈に利用したりします。

動画データ

動画ファイルなどの、映像と音声が組み合わさった情報が該当します。動画の解析により、さまざまな用途に活用できます。

ログデータ

システムログやアプリケーションログ、ネットワークログなどが含まれます。トラブルシューティングやセキュリティ分析に活用されます。

ウェブデータ

ウェブサイトのコンテンツやHTMLファイルなどが該当します。トレンドの分析や、ウェブマイニングに使用されます。

非構造化データには、このほかにもさまざまなデータ形式が存在します。データ形式によって必要な処理や解析が異なり、場合によっては高度な技術が求められますが、適切な処理や解析が行われれば、非常に有用なインサイトを得られるでしょう。

非構造化データの活用が重要な理由

非構造化データの活用が重要視される理由は、簡潔に言うと、「非構造化データの活用が、企業のデジタル戦略の決定において重要な役割を果たすから」です。

そもそも現代では、ビッグデータのうち、非構造化データの占める割合は構造化データよりも圧倒的に多くなっています。さらに、非構造化データには、ドキュメントや電子メールなど日常で触れる機会の多いデータや、研究データやログデータなどの現代のトレンドをおさえたデータが多く含まれています。そのため、効果的なビジネス上の意思決定をするうえで、非構造化データを活用するのは必要不可欠なのです。

また非構造化データは、含まれる情報量が多いため、新たなインサイトを得るのに役立つ可能性があります。たとえば、ウェブデータを分析することで顧客のニーズを把握し、ニーズに沿った商品を企画したり、LTVなどの付加価値向上が望めたりするでしょう。

非構造化データは、新たなインサイトを得られる可能性や、新しいビジネス機会を発見できる可能性を持っているため、他社との競争力を高めるうえで重要な存在となるのです。

非構造化データのメリット

さまざまな形式やタイプのデータを保存できる

非構造化データは、テキストデータや画像データ、動画データなど多様な形式の情報を含むため、多角的な視点からデータを収集できます。

また非構造化データでは、構造化データだけでは見逃していた情報をピックアップできるため、新しいインサイトを得られる可能性があります。ツイートの内容や画像の背景、動画の音声などの、微妙なニュアンスに有益な情報が含まれている可能性があるため、新たなビジネス機会や経営戦略を得るために、非構造化データの活用は欠かせないのです。

テキストや音声データは数値データなどの無機質なデータより、感情が含まれたデータが多いため、正確にデータを抽出することで、顧客のニーズを深く理解するのに役立ちます。顧客のニーズを把握することにより、効果的なマーケティング戦略を立案できるため、他社との差別化を図れます。

大量のデータを効率的に保存・取得できる

非構造化データは、構造化データよりも大量のデータを効率的に収集するのに優れています。

構造化データでは、定められた形式に整理する作業が必要であるため、データを保存するのに手間と時間がかかります。一方、非構造化データは、形式の縛りがなく自由に保存できるため、大量のデータを整形処理せずにそのまま保存・取得できるのです。

現代において、大量のデータに対して分析をできることは、データドリブンな経営をするうえで非常に大きな強みになります。さらに、データを効率的に保存することで、リアルタイム処理が可能になったり、データの整合性を高めたりとさまざまな恩恵を受けられます。

したがって、非構造化データの利用により大量のデータを効率的に保存・取得するのは、組織内のデータの価値を最大限に引き出し、競争力を高めるために必要不可欠なのです。

非構造化データのデメリット

専門知識が求められる

非構造化データは、定義された形式に整形されていないため、そのまま利用することは難しく、一般的に構造化データへの変換が必要となります。

そもそも、構造化データに変換する前には、データクレンジングやデータの正規化、特長の抽出などの前処理が必要です。また、データの変換には、データの種類に応じて、テキストマイニングや、画像処理、音声認識、自然言語処理などの専門的な技術が必須となります。

非構造化データから構造化データへの変換において、直接的な変換技術だけではなく、そのデータの意味や背景を理解するためのドメイン知識も求められます。非構造化データに内在している価値を適切に抽出するには、特定の領域やデータに関する知見や、データ同士を関連付けるための知識が不可欠なのです。

専用のツールが必要になる

基本的なデータ処理や分析であれば、プログラミングスキルを用いて対処できるケースもありますが、非構造化データを扱う際には、専門的なツールを使わなければならないケースも少なくありません。

たとえば、テキストデータから文書の解析や感情の分析などを行う際には、自然言語処理のツールが効果的です。また画像データを分析する場合、画像処理技術を用いて、特徴抽出や顔認識、物体検出などを行います。

非構造化データをビジネス戦略の材料として活用するようになったのは最近のことであるため、専門的なツールが豊富ではないのも現状です。さらに、一部の非構造化データに関しては、具体的な分析手法が確立していないため、データ分析の難易度は依然として高いといえます。

効率的なクエリが難しくなることがある

非構造化データは、テキストや画像、動画などさまざまな形式で存在し、それぞれのデータの形式に応じて適切な分析手法やクエリの方法を選択する必要があります。そのため、効率的にクエリを行うのが難しくなるケースがあるのです。

また、非構造化データから構造化データに変換する際、特徴抽出やデータの次元削減などの過程を経て、元データの情報の一部が失われることが多々あります。これもまた、クエリの効率を低下させる要因になります。

一方、データの前処理を行ったり機械学習を有効的に使ったりすることで、クエリの効率低下を軽減できる場合もあります。非構造化データを扱う際には、事前にデータの前処理や機械学習など、効率的なクエリを促進させるソリューションを検討しておくことが大切です。

データの一貫性・正確性を保ちにくい

非構造化データは、多様な形式で存在するため、データを統一的なフォーマットで管理するのは難しく、結果としてデータの一貫性を保ちにくい特性があります。非構造化データは大量に生成される場合がありますが、膨大なデータ量を扱うとなると、一貫性を保つのはさらに困難となります。

非構造化データは、数値データのような定量的なデータではないため、データの意味を正確に抽出するのが難しいです。たとえばテキストデータの場合、文章の文脈や背景を正確に理解するのは困難であり、特徴抽出の際に情報が欠落したり誤って解釈したりする可能性があります。

また、ノイズが多く含まれているのも、データの正確性を低下させる要因のひとつです。テキストデータであればスペルや文法のミスが、画像や動画であれば不要な情報が大量に含まれている可能性があります。

非構造化データの一貫性や正確性を保持するためには、データクレンジングを行ってデータのノイズを削減したり、メタデータを利用してデータの内容や背景を理解しやすくしたりする必要があります。非構造化データを扱う際は、データの信頼性を確保するためにも、適切な前処理や専門知識を導入しておくことが重要です。

非構造化データと構造化データの違い

非構造化データとは、構造化データとは反対に、整形されずにそのまま格納され、使用時まで処理されないデータを指します。テキストや画像、動画など、特定の形式に制限されない、多様なデータ形式を持ちます。

データが取得された状態のまま保存されているため、目的に応じて柔軟に活用できる点が最大の特徴です。ただ、データが整理されていないため、構造化データに比べて処理や分析が難しく、専門知識や技術を要するデメリットもあります。

以下の表は、構造化データと非構造化データの特徴とその違いを比較した表です。

構造化データ非構造化データ
データ形式テーブルや行列で整理されている特定の形式に制限されず、多様な形式
データの格納方法フィールドやカラムごと自由な形式で、格納方法に制約はない
データ処理の難易度処理や分析は比較的容易処理や分析に専門知識や技術が必要
データの例顧客データ、売上データツイート、テキスト、写真、動画など
データの柔軟性ないある

データを活用する際には、これらの特徴の違いを理解したうえで、どちらのデータ形式を選択するか慎重に検討することが大切となります。

半構造化データとは

半構造化データとは、構造化データと非構造化データの中間に位置するデータ形式を指します。代表的な表現形式に、XMLやJSONなどがあります。

どちらかといえば非構造化データに分類されますが、ある程度は構造が決まっているため、さらに整理すれば構造化データへの変換が可能です。このように、構造化データと非構造化データの中間に位置することで、それぞれのメリットを取り入れつつ、独自の特徴を持っています。

半構造化データでは、一部が構造化されているため、構造化データよりもデータの要件変更が容易であり、データモデルの柔軟性と拡張性があります。また、一部の属性やフィールドが明確な構造を持つことで、非構造化データよりもデータ処理や分析が容易です。

ただ、中間的な存在であるが故に、構造化データと非構造化データの両方のデメリットも併せ持ちます。そのためデータ活用の際には、目的と照らし合わせて慎重に検討し、適切な選択をする必要があります。

非構造化データの活用例

非構造化データが活用される具体例のひとつに、ソーシャルメディア分析が挙げられます。ソーシャルメディア分析では、X(Twitter)上での投稿やFacebookの投稿などのテキストデータから情報を抽出し、感情の分析を行います。そして、感情から顧客満足度やニーズを判断し、サービスの向上に役立てるのです。

また、ソーシャルメディア分析にはテキストデータだけでなく、投稿に対しての「いいね」の数や共有の数も含まれます。これらにより、特定のユーザーの嗜好を把握し、有効的なマーケティングにつなげられます。

非構造化データは、メディアコンテンツの分析にも活用が可能です。たとえば、特定の商品画像について、画像認識技術を用いて、商品の特徴や属性の抽出を行います。これにより、顧客の嗜好・ニーズに合った商品を提案するのに役立ちます。また、ポッドキャストや番組の音声データを分析し、感情分析を行うことで、リスナーの関心を推測できるのです。

ソーシャルメディア分析やメディアコンテンツの分析は、あくまで非構造化データの活用例の一例であり、そのほかにも活用できる領域はさまざまです。非構造化データは多くの価値を内在しているため、適切な処理や分析を行うことで、幅広い分野での活用が期待できるでしょう。

非構造化データの分析

一般に、非構造化データは、構造定義をもたず自由な形式で保存されますが、その中でも大きく分けて2種類のデータが存在します。

まず一つは、ある程度の規則性があり、構造化データへの変換が比較的容易なデータです。たとえば、XMLやJSONはどちらもテキスト形式のデータですが、ともに書式と文法に関するルールが存在します。これにより、表形式の構造化データに変換しやすく、分析の難易度はあまり高くないです。

もう一つは、規則性がなく、構造化データへの変換が困難であったりそもそも変換ができないデータです。これらのデータは前章でも紹介した、自然言語処理や画像認識技術、音声認識技術で対処します。ただし、非構造化データは膨大な量となるケースがあるため、メタデータで管理しておくなど、必要な情報を素早く見つけるための取り組みが必要です。

どちらのデータを扱うにしても、分析を行うためには構造化データへの変換が必須となるため、適切な変換を行うための知識や、データを管理するうえでの知識などを持っておくことが重要です。

非構造化データの管理方法

変換が難しい非構造化データを活用するための技術が発展している一方、「非構造化データをどのようにして適切に管理するか」が問題となっています。

非構造化データは膨大なデータ量になるケースが多く、データによって活用目的がさまざまです。そのため、「どのように分類し、どこに保管するのか」などを社内で明確に規定し、共有しておく必要があります。価値あるデータをデータスワンプの状態にしないためにも、検索のしやすさや更新性を維持するための仕組みを確立しておくことが大切です。

また非構造化データは、誰でも自由にファイルの作成やデータの保存、編集が可能であるため、データガバナンスに細心の注意を払う必要があります。データの中には、個人情報や企業の機密情報が含まれている可能性があるため、セキュリティ対策も同時に行わなければなりません。

まとめ

本記事では、非構造化データの概要や活用事例、構造化データとの違いについて解説しました。非構造化データは、構造化データには含まれない、ユーザーの感情や文脈の裏にある背景などを内在しており、新たなインサイトを得たり効果的な意思決定をするのに有効です。

デジタル化が進む現代では、ソーシャルメディア上でのコメントや音声データなどの媒体を発信手段として用いることも多くなります。そしてこれらには、構造化データでは表せない微妙なニュアンスを含んだ、価値あるデータが多く存在します。非構造化データを分析するための技術も進化しているため、自社に点在している非構造化データを活用して、新しいビジネスチャンスやさらなる競争力を獲得しましょう。

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