「最新のテクノロジーを、多くの人へ」をビジョンに掲げ、日本のデジタル競争力を向上するために、AIソフトウェアの開発とデジタル組織の構築支援を通じてAIソリューションを提供する株式会社AVILEN。2018年創業の同社では、事業と組織が急拡大する一方、経営層が案件ごとの状況すべてを把握することが難しくなり、経営判断にも支障がでるようになったという。そこで案件ごとの状況やカスタマーサクセス業務の可視化を目的にデータ分析基盤を整えることになり、「trocco®」が導入された。取り組みの背景にあった課題や効果、データ活用における今後の展望について、ご担当者様にお話を伺った。

課題・問題

3年で組織規模は約5倍に。勘と感覚だけでの業務改善に限界がきていた

執行役員 CTO 吉川 武文様
お二人の業務内容をお聞かせください。

吉川 武文様(以下、敬称略):弊社には大きく二つのサービスがあります。まず一つがデジタル組織開発で、組織のリテラシーレベルを可視化し、データ活用できるDX/AI人材を育成するサービスです。もう一つが、AI技術実装というお客様の課題感にあわせたカスタマイズ型のAIソフトウェアやパッケージ型のSaaSを開発する事業です。

私自身は、CTOとして技術面の全体戦略を担当しています。お客様に向けた技術支援だけでなく、社内のDX推進やデータ活用も私の業務範囲です。なお、今回の取り組みで実際に「trocco®︎」を操作しているのは全体で4名ほどです。

渡部 加奈子様(以下、敬称略):私はDXタレントデザイン部に所属しておりまして、デジタル組織開発で提供した研修サービス(eラーニング)のカスタマーサクセスを担当しています。カスタマーサクセスチーム全体は10名ほど在籍しており、お客様からのお問い合わせに対応するだけでなく、サービス改善や講座の運営を担っています。

カスタマーサクセスチームでは、どのような指標を追っているのでしょうか。

渡部:NPS®(ネットプロモータースコア)を採り入れ、顧客満足度の向上を目的に取り組んでいます。たとえば、受注後に講座内容に関する質問を受け付けたり、採点結果へのフィードバックをしたり、プランによっては無料カウンセリングを提供したり、といった取り組みをしています。

貴社のデータ活用には、どのような課題があったのでしょうか。

吉川:2、3年前は10名ほどしか社員がいなかったこともあり、経営陣全員が全分野の状況を把握できていました。しかし事業規模の拡大とともに現在では社員数で50名規模にまで成長し、次第に事業の全容を把握できなくなった結果、​​最近では経営判断にまで影響するようになったのです。

自社のどこに課題があるのか議論しようとしても、活用できるデータがまとめられておらず、感覚で話してしまうことも多々ありました。

渡部:カスタマーサクセスチームでは、お客様の状況をデータとして把握しきれていないという課題を抱えていました。お客様のNPS®はGoogle Formsのアンケートで取得こそしていたものの、スプレッドシートに回答をまとめて簡単なグラフを作成するだけだったのです。また、研修パッケージの販売実績も社内システムからCSVを出力し、その結果をスプレッドシート上にまとめ、関数を組んで集計していました。

私自身、日々のお客様対応に追われている状態で、データを集計して活用するまでリソースが回っておらず、業務を改善する際にも勘と感覚値でしか考えることができませんでした。

吉川:こうした状況に対して経営陣が危機感を持ち始め、お客様の情報を一元管理し、BIツールで分かりやすく可視化しようと取り組むことになりました。

なぜtrocco®を選んだのか

シンプルな操作性や豊富なドキュメント、カスタマイズ性を高く評価

DXタレントデザイン部 プロダクトマネージャー 渡部 加奈子様
ETLサービスの比較検討は、どのように進めたのでしょうか。

吉川:「Google BigQueryにデータを入れれば何とかなるだろう」という考えで調べていたところETLツールの存在を知り、まずは3社のツールで比較検討することになりました。

年間どのくらいのコストがかかりそうなのか、やりたいことを実現できる機能は揃っているかなど、さまざまな観点から比較検討をしました。その中で最も重視した軸が「使いやすさ」です。分かりやすいUI/UXか、ベンダー側の公式ドキュメントが充実しているか、丁寧なサポートを受けられるかといった要素が「使いやすさ」に直結すると考え、その要素から比較検討を実施しています。

なぜ「使いやすさ」を重視していたのでしょうか。

吉川:一部の社員しかETLツールを操作できず、データを自由に得られないという状況を避けたかったからです。理想としては、事業部の社員であっても、気になったらいつでもデータを閲覧でき、日々の業務にデータを活用している状態だと考えていました。

他社のETLツールにも「使いやすさ」を感じたのですが、正直なところやや物足りないなという印象を受けたのです。非エンジニアが使うにしても、ある程度はカスタマイズ性があり、業務改善に効果的なデータ分析ができなければ意味がありません。

一方で「trocco®︎」の「使いやすさ」は、シンプルで操作が分かりやすく、かつカスタマイズ性があったため、エンジニア・非エンジニアの双方で活用できるなと感じました。

trocco®選定のポイント

また、私が求めていた以下の要素もしっかり押さえていたことも高評価で、最終的に「trocco®︎」の導入を決定しています。

  • Google BigQueryで一元管理できること
  • データを簡単に加工できること
  • データ・機密情報を暗号化できること

導入までのスケジュール・過程

検討から導入まで約4ヶ月。最も苦労したことはデータ活用の重要性を受け入れてもらうこと

trocco®導入までの流れ
「trocco®︎」導入までの流れを教えてください。

吉川:契約から現場で活用できるまで、およそ4ヶ月ほどかかりました。データ転送の設定とデータマート作成、「Tableau」につなぎ込んでのダッシュボード作成、そして「LearningWare」とのつなぎ込みという大きく3つのステップでした。「LearningWare」のデータつなぎ込みだけはイレギュラーでしたので、想定よりも時間がかかってしまった印象です。

「trocco®︎」の導入で、最も苦労したことをお聞かせください。

吉川:「わざわざダッシュボードにする必要がありますか」というメンバーに対して、データ活用の重要性を受け入れてもらうことが大変でした。つまり、現状として、スプレッドシートでだいたいは把握できているなら必要はないのでは、という考えです。それが普通の感覚なのかもしれませんが、私はどうしてもスプレッドシートでのデータ管理に違和感を覚えてしまうのです。

言語化が難しいのですが、スプレッドシートはデータ保管やグラフ作成、表計算など幅広い用途があるツールであるため、ひとつの目的のために最適化された、ソリッドなツールではないのです。また、誰でも手を加えることができます。

たしかに、冗長性や幅広さを持たせたほうがよいシステムもありますが、データの取り扱いのように確実なフローが決まっているのであれば、それに適したツールを使うべきです。こうした考えをメンバーに理解してもらうのはなかなか難しく、今でもデータ活用を浸透させることに苦労しています。

導入後の効果

研修状況を可視化し、月38万円の人件費を削減。適切かつ迅速な経営判断にも貢献

「trocco®︎」導入後、どのような変化や成果がありましたか。

渡部:「LearningWare」と「Zendesk Support」、Google スプレッドシート上の顧客の受講に関するデータを、ひとつのダッシュボードにまとめて反映できるようになったことで、カスタマーサクセス業務が大きく可視化されました。例えば、以下のようなダッシュボードを作成しています。

  • 質問対応に対するSLA(Service Level Agreement)
  • 面談枠の空き数
  • 未採点の課題数
  • 日々の提出された課題数
ダッシュボードで対応状況を把握している

業務が可視化されたことで新たな発見がいくつかありました。一番印象に残っているのは、受講者から提出される課題数の推移です。今までは、連休は勉強する受講者が増えるだろうと予測を立てていたため、特にゴールデンウィークの時期には、通常よりも多くの採点担当のスタッフをアサインしていたのです。

しかし蓋を開けてみると、ゴールデンウィークに受講する人は多くないことが分かったのです。代わりに、試験前に勉強する人が急増することが判明しました。この気づきによって、過剰だった連休中のスタッフを削減し、試験前の時期に配置するようになりました。これだけでも、1ヶ月で38万円ほどの人件費を削減できている計算です。

お問合せ・質問対応数を可視化することで、繁忙期がいつかわかるように

吉川:今回のような現場の気づきを、経営層もデータとしてしっかり理解し、適切かつ迅速な経営判断につなげています。明確なデータが示されるようになり、迷う余地がなくなったのです。

今回のようなデータ活用の体制を、もしスプレッドシートや既存のツールだけで構築する場合、どのくらいの期間がかかりそうでしょうか。

渡部:想像しただけで震えてしまいますね…。そもそも「LearningWare」からCSVをダウンロードするだけでも、1~2日もかかってしまいます。スプレッドシートを組んで、そこにデータを流し込んでいくのも一苦労です。

吉川:システムに対する安心感が全く違います。スプレッドシート上でグラフを作成することはできるはずですが、絶対にいつかはバグを起こすでしょう。

データ分析基盤の構成の変化
「trocco®︎」で連携した対応データソースを教えてください。

吉川:顧客管理として導入している「Salesforce」、問い合わせ管理の「Zendesk Support」を「trocco®︎」で「Google BigQuery」につなぎ込み、BIツールの「Tableau」にデータを出力しました。

特にインパクトが大きかったのは「LearningWare」というeラーニングシステム(LMS)のデータをつなぎ込めたことです。プリセットの対応データソースにはありませんでしたが、RPAを活用することでCSVを自動で出力してデータを格納し、そこからデータを「trocco®︎」でGoogle BigQueryへつなぎ込むことができています。

主に利用しているコネクタ 入っている情報
Salesforce 顧客情報
Zendesk Support 問い合わせ情報・問い合わせ内容
Google Spreadsheets

LearningWareの顧客活動情報(RPAで取得したものをGoogle Spreadsheetsに格納)

データ分析基盤の構築・リプレイスやダッシュボード作成についてお悩みの方はこちらよりご相談ください。

今後の展望

経営判断を高めていくため、カスタマーサクセスの次は経理業務を可視化していきたい

データ活用における、今後の展望についてお聞かせください。

吉川:カスタマーサクセスを可視化できたので、次は経理業務も可視化できれば、さらに経営判断が効率化されると考えています。加えて、ダッシュボード作成までのスピードも速くしていきたいですね。仮説を立て、その検証のためにサクサクデータを表示できるようにすれば、業務のPDCAがますます加速するでしょう。

渡部:長期的な展望としては、研修を受講されているお客様がリアルタイムで現在の進捗やデータを確認できる、つまりお客様向けのダッシュボードをご用意したいなと思っています。現在も定期的に進捗レポートはお送りしていますが、リアルタイムではないのです。

お客様がいつでも自分たちの学習進捗を確認できるようになれば、研修の修了率や完走率、そして顧客満足度の向上につながるはずです。

「trocco®︎」の導入を検討している企業へ、アドバイスをお願いします。

渡部:エンジニアではない方でも充分扱えるツールだと思っています。ひるまず、ぜひ一歩踏み出してみてください。

吉川:「まず使ってみよう」の一言です。社内に溜まっているデータを吸い上げ、ダッシュボード化したいという要望やニーズはとても高いと思います。たしかに、スプレッドシートでも充分のように感じてしまい、ETLツールの必要性は感じにくいでしょう。

しかし、データをビジネスで活用していくためには、データレイクとデータマート、データウェアハウスの使い分けが本当に重要なのです。そのためにも、まずはprimeNumber社の担当者の話を聞き、理解ができたらぜひ「trocco®︎」を使ってみてください。

株式会社AVILEN

https://corp.avilen.co.jp/

業種 IT業界
設立 2018年
従業員数 正社員:46名 (2022年12月時点)、AVILEN DS-Hub:197名 (2022年12月末時点)
事業内容 AIおよびデータ活用技術の開発によるビジネス課題の解決、デジタル組織構築の戦略立案およびDX/AI人材の育成による組織変革支援、AI技術を活用したSaaSプロダクトの開発、提供および導入支援