データは今や組織の競争力を左右する重要な要素ですが、その活用方法が問われています。組織全体でデータを最大限に活用するためには、データの標準化や管理方法の確立、そして組織の体制づくりが重要です。

データ分析基盤はあるものの組織として活用できておらず、もったいないと感じている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、組織でデータ活用を促進するための具体的なステップと戦略を紹介します。また、その手段としてメタデータの整備を挙げ、メタデータの整備をするには必要となるデータカタログの活用についても触れます。本記事が、組織のデータ標準化を推進する一助となれば幸いです。

組織全体でデータ活用を推進すべき理由

まず、組織全体でデータ活用を推進すべき3つの理由について説明します。

意思決定の裏付けができる

現代の組織運営において、組織運営を成功させるには的確な意思決定が不可欠です。
しかし、感覚や経験などの定性的な事象にのみ頼ることは、成功が限定的でなおかつリスキーです。
このような場合にデータ活用が重要な裏付けを提供します。

データは主観を排除し、具体的かつ客観的な情報を提供するため、堅実な判断を可能にします。そのため、日々のオペレーショナルな判断から戦略的な方針の設定まで、データを基にした意思決定によって、組織全体の効率と精度を向上させることができます。

パフォーマンスを最適化できる

競合他社との激しい競争の中では、組織の持続的な成長と卓越したパフォーマンスが求められますが、データ活用は、このような目標を達成するための強力なツールとなります。

組織内の各部門やプロセスのパフォーマンスを評価し、改善するためにデータは不可欠です。KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定し、定期的なデータに基づく評価を行うことで、成功要因と改善のポイントを特定し、戦略的な意思決定を行うことが可能となります。これにより、組織全体の効率性が向上し、競争力を維持しながら進化することが実現できます。

新たなインサイトやビジネスチャンスを発見できる

未知の領域を探求し、新たなビジネスチャンスを発見することは、事業の成長に不可欠です。

データ活用は、このような革新と競争力の向上をサポートします。データは市場の動向や顧客の行動パターンなど新たなインサイトの掘り起しにつながり、それらをもとに、組織は既存の範疇を超えて戦略を調整し、競合他社から差別化を図ることができます。

データを活用することで得られるインサイトは、組織が迅速かつ効果的に変化する市場に対応するための貴重な資源となります。

データ活用の推進はメタデータの整備・活用がキーとなる

データ活用推進のためには、データの整備が重要ですが、その中でも特に「メタデータの整備」が重要になります。

メタデータとは、データの背後に潜む情報であり、データの本質や文脈を解明するための手がかりを提供するからです。

メタデータはさまざまなカテゴリに分類されます。テクニカルメタデータ、ビジネスメタデータ、オペレーショナルメタデータなどのカテゴリが存在します。

たとえば、本をデータと見なす場合、そのジャンルや著者名、出版年などがメタデータとなり、本の内容や特性を明確に示します。同様に、ファイルや業務に関するデータも、その属性や関連情報を通じてメタデータが明らかにされます。

テクニカルメタデータ 物理的なデータに関する情報を提供します。データベース内のテーブルやカラムのプロパティ、アクセス権などが含まれ、データの構造やアクセス方法を明確にします。
ビジネスメタデータ 業務に関する情報を示します。業務ルール、計算方法、業務用語の定義などが含まれ、ビジネスプロセスの理解や最適化を支援します。ビジネス上の意義や利用法を示す役割を果たします。
オペレーショナルメタデータ システムの運用に関する情報のことです。バッチ処理の実行ログ、データの変更履歴などが含まれ、運用プロセスの監視や改善に寄与します。システムの動作と結果のトレーサビリティを提供します。
メタデータの代表的なカテゴリ

メタデータの適切な整備は、データ活用の成功と品質向上のカギを握っています。メタデータを効果的に整備するには、以下のステップが必要です。

  • データの活用目的を明確にする
  • 必要なデータを作成・収集する
  • データの管理方法を確立する
  • 組織づくりを行う

ここからは、4つのステップをくわしく解説します。

データの活用目的を明確にする

データマネジメントの舞台において、メタデータは無視できない要素となっています。

その理由として急速なデータの増加と多様化が挙げられ、これらの要因が情報の鮮度や信頼性を保ちながら適切な分析と意思決定を行うことを難しくしています。このような状況下で、メタデータはデータの背後に潜む意味や関係性を解明する役割を果たしています。

しかし、明確な目的が存在しないままメタデータを活用しても、データの価値を十分に利用できるとはいえないでしょう。そのため、メタデータの真価を発揮し、データ活用を最適化するには、その活用目的を明確に定義することが不可欠です。

必要なデータを作成・収集する

メタデータのパワーを最大限に発揮するためには、データの収集目的や必要性を明確に理解することが肝心です。

データを収集する際、その目的を明確に定義することで、必要なメタデータの種類と範囲を確定することができます。このステップにより、メタデータの正確な作成と収集が実現でき、データの品質と価値を向上させることができます。

ただし、必要なデータを作成・収集するには課題も伴います。たとえば、データ作成者や管理者の情報を手動で入力・管理するのは効率的ではありません。
この課題を解消するためには、システムを整備してメタデータの生成・収集を迅速に行い、その負担を軽減させることが重要です。
とくに、組織が拡大しデータの複雑さが増すと、適切なメタデータの整備がより一層重要になります。

データの特性や関連性を把握し、データ分析や意思決定をスムーズに行うためには、早い段階での的確なメタデータを生成・収集することをおすすめします。

データの管理方法を確立する

データの標準化するためにはメタデータの整備が必須です。そして、メタデータ管理にはツールを用いることをおすすめします。

大まかに、2つの主要なメタデータ管理ツールが存在します。

データカタログと推奨エンジン

現代のデータ駆動型ビジネスにおいて、データカタログと推奨エンジンを備えたメタデータ管理ツールは欠かせません。このタイプのツールは、データのインベントリ管理を自動化し、データアクセスと分析のプロセスを効率化しています。

代表的なものにはAlationやアレックス ソリューションがあります。これらはデータカタログの構築と管理を支援するための強力な機能を提供しており、データの検索や理解を容易にします。さらに、推奨エンジンを通じて、データの関連性や利用可能なデータセットに関する提案を行い、効果的なデータ活用をサポートします。

また、国内のツールには、データカタログ機能を備えたtrocco®もメタデータ管理ツールとして挙げられます。trocco®はETL機能をメイン機能として備えたツールですが、そのほかにも、データソース/DWHから自動でメタデータを取得する機能も用意されており、メタデータが自動で取得・蓄積されていくため、 メタデータ管理にかかる工数を大幅に削減できます。

エンタープライズデータ管理

エンタープライズデータ管理ツールは、組織全体でのデータ管理とガバナンスを強化を目的としています。これらは、データ品質の向上やデータガバナンスの確立に貢献し、大規模の企業や複雑な組織が持つニーズを満たすよう設計されています。

たとえば、ASGテクノロジーやCollibra、データム、IBM、Informatica、Oracleなどのツールが挙げられます。これらのプラットフォームは、異なるデータドメインや業界に適用可能な柔軟性を備えており、データ管理とガバナンスのプロセスを一元化し、データの可視性と信頼性を向上させます。

それ以外にも、高度な分析やデータ関連のプロジェクトを支援するためのツールや機能も統合されており、データの質と価値を最大化するための総合的なアプローチを提供します。

上記2種類のメタデータ管理ツールは、データの重要性がますます高まっている現代において、効率的なデータ活用とデータ管理をサポートするために欠かせない存在となっています。

組織づくりを行う

メタデータの整備・活用には組織全体を巻き込むことが重要です。ここでは、atama plus株式会社の事例を参考に、メタデータの整備やデータカタログの活用における組織づくりの方法を紹介します。

atama plus株式会社は、教育カリキュラムの最適化を目指しており、学習ログやメタデータが重要だと考えていました。

しかし、データ活用の限界やメタデータの不足、ドメイン知識の属人化などのデータ基盤の整備と活用に課題がありました。データの問題を解消するため、データサイエンティストがデータ基盤の強化と社内の意識改革を推進しました。

このように、組織のトップが直接関与し、リーダーシップを発揮することは、データの整備や活用の推進において非常に重要な要素だといえるでしょう。

さらに、社内でのデータ活用を実現するための具体的なステップとして、trocco®のデータカタログの導入が行われました。適切なツールの選択と導入は、データのアクセスや管理を効率化するだけでなく、組織全体のデータ活用を大きく加速させる要因となります。

atama plus株式会社では、メタデータの重要性を伝えるための取り組みも実施しました。定期的な研修やワークショップを通じて、メンバーはメタデータの価値やデータカタログの利用方法についての理解を深めることができました。そして、この取り組みの成果として、データの利用が大幅に増加し、BigQueryの利用者数も5倍に増加したという結果が得られました。このような成功事例を共有することで、組織全体のデータに対する意識やモチベーションが向上することは間違いありません。

メタデータの整備やデータカタログの導入に留まらず、その価値を組織全体で共有し、活用する文化を築くことがデータ活用の成功の鍵となるでしょう。

atama plus株式会社の事例をくわしく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

データカタログならメタデータ取得・蓄積が簡単

データの標準化にはメタデータの管理が必須となり、メタデータを適切に管理すれば、組織内のデータ活用に目覚ましい変化が見られます。

手動でメタデータの管理をするには限界があり、また膨大な工数がかかりますが、データカタログを利用することで、これらの課題を解決できます。

データカタログは、組織内のデータを効率的に管理する目録やカタログの役割を果たします。

これは、図書館のカタログの仕組みに似ており、利用者が必要なデータをスムーズに見つけるための手段として活用されています。

データカタログは、図書館のカタログの仕組みのように、データセットやデータソースの詳細情報(データの属性、取得方法、更新頻度など)を文書化し、容易に検索・参照できるようにします。このような構造によって、組織はデータの所在や特性を正確に把握し、効果的なデータ活用を実現するのです。

データカタログの導入によるメリットとしては、以下の5つが挙げられます。

データの増加と複雑化への対処

近年、さまざまなデータが組織内で生成・蓄積されており、適切なデータを特定することが難しくなっています。その際に、データカタログを利用すれば、データの一元管理を提供し、容易なデータ探索を実現できます。

データガバナンスの強化

データの利活用をする際には、データの保護やガバナンスが不可欠です。メタデータ管理を通じて、データの取得元や使用方法を明確に把握することができ、規制遵守やセキュリティ強化に寄与します。

データ品質の確保と信頼性の向上

メタデータ管理を通じて、データの品質評価や信頼性の向上が可能となります。正確で信頼性のあるデータを活用することで、的確な意思決定をサポートします。

データ利活用の迅速化

データを利用する際の時間と手間を削減するためにも、データカタログは活用されます。データカタログを用いれば、必要な情報を素早く見つけてアクセスできるため、意思決定のスピードが向上するということです。

統一的なデータビューの提供

上記以外にも、データカタログを用いれば、組織全体のデータに対する包括的なビューが提供されます。これにより、データの全体像が把握でき、インサイトが高まります。

データカタログ機能がメタデータ管理を担うことで、データ活用の効率向上や課題解決に貢献できるでしょう。

データの大量化や複雑化に立ち向かい、良質かつスピーディーな意思決定を支援するために、データカタログは不可欠なツールとなっています。

まとめ

データの標準化にはメタデータの整備が欠かせません。メタデータの整備のためにデータカタログを用いることで、組織として迅速な意思決定を行うことができるようになります。

trocco®にはメタデータ管理をサポートするデータカタログ機能があります。trocco®のデータカタログ機能なら、エンジニアを支援する充実したプレビュー機能と便利なクエリエディタにより、データの理解から活用にかけての障害を排除し、導入から課題解決までの所要時間を短縮します。誰もが容易に利用できるデータ分析プラットフォームによって、データのアクセシビリティを向上することができるでしょう。

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trocco® ライター

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