データ活用は、ECサイトが競争力を維持し、カスタマーエクスペリエンスを向上させ、売上を増加させるためには不可欠です。しかしながら、ECサイトでは毎日大量のデータが生成され、その全てを適切に利用し分析するのは簡単な課題ではありません。適切なデータ収集と解析には専門知識と時間が必要で、これらが欠けると購買体験や顧客体験の向上が困難となる企業も少なくないでしょう。
顧客理解を深めるためには、多種多様なデータを一元化し管理することが重要です。MAやCRMなどのマーケティングツールを活用していても、データが散在しサイロ化されていると、適切な顧客分析が行えません。
本記事では、ECサイト運営のためのデータ分析基盤の構築の必要性や、それを実現するためのツールの活用方法について紹介します。これを通じて、顧客理解の精度を高め、カスタマーエクスペリエンスを向上させるためのヒントを提供します。
ECサイトにおけるデータ分析の課題

ECサイトの運営において、顧客データの分析は購買頻度向上やサイト改善など、重要な方針決定の基盤となります。しかしデータ分析には大別して3つの課題が存在し、これらを克服することが運営成功の鍵となります。
大量かつ複雑なデータを活用するためのリソース・知識が不足している
ECサイトのデータベースには膨大なデータが蓄積されますが、この大量かつ複雑なデータを効率的に活用するためには、データ分析に必要な専門知識と十分なリソースが欠かせません。
多くの中小企業やスタートアップ企業は、データ分析に特化したエンジニアを雇う余裕がない場合が多々あり、また社内の専門的な知識の不足も課題となっています。
この問題を解決するためには、外部のデータ分析会社との提携が有用な手段となります。
また、データ分析ツールやプラットフォームの導入により、収集・整理・解析のプロセスを効率化し、リソース削減が期待できます。
データがサイロ化されている
データのサイロ化もECサイトの分析における課題のひとつです。
各部門・部署やマーケティングツールが独立してデータを管理している場合、顧客の全体像を把握することが難しくなります。たとえば、在庫管理や生産計画に多くの工数がかかるため、データ統合や分析のために十分なリソースを割くことが難しくなります。
この問題を解消するためには、カスタマー・データ・プラットフォーム(CDP)の導入が有効です。CDPは、異なる部署やマーケティングツールで収集されたデータを一元管理し、顧客の全体像を正確に把握するプラットフォームです。
CDPにより、データのサイロ化を解消し、全体的なデータ統合を実現できます。
データウェアハウスを活用するのも良いでしょう。
データの質や定義がバラバラになっている
データの質や定義の不一致も課題です。
異なるデータソースから収集されたデータを統合して分析する際には、データの整合性を確保することが重要ですが、データが不揃いなため、正確な分析が行えません。
たとえば、購買頻度や利用者ステータスの定義が部門・部署ごとに異なる場合、統一的なデータ分析が困難でしょう。
この課題を解決するためには、データ品質の向上に注力する必要があります。
具体的には、データの収集方法や定義を統一し、データの整合性を確保するルールやガイドラインを策定することが重要です。
また、データ品質管理のための仕組みを整備し、定期的なデータクリーニングやデータ検証を行うことで、正確なデータ分析を実現できます。
ECサイトの分析にデータ分析基盤が重要である理由

データ分析基盤はECサイトで成果を出すために不可欠な技術的基盤です。ECサイトの分析にデータ分析基盤が重要な理由をくわしく説明する前に、まずはデータ分析基盤について説明します。
データ分析基盤は大きく分けて4つの工程で構成されています。
まず、データの収集です。データの収集では、顧客の行動履歴、購買データ、セールス情報などのデータを一元的に収集・管理します。
次に、データの蓄積が行われます。データを効果的に保存するためのデータレイクとデータウェアハウスを構築します。データレイクは多種多様な形式のデータを保管でき、また、データウェアハウスは要件に応じてデータを加工・統合でき、分析に適した形式で保管します。
そして、データの加工です。データを分析に適した形にするためデータの集約やデータクレンジングが行われます。この工程があることでより高度な分析をしたりインサイトの発見につながるようなデータの抽出ができます。
最後はデータの可視化です。分析結果を視覚的に理解しやすいように整える工程です。また、リアルタイムなデータ分析が可能になり、意思決定のスピードを上げることができるようになります。
データの収集 | 顧客行動や購買データなどを収集・一元管理 |
データの蓄積 | データレイクとデータウェアハウスを用いたデータの保管 |
データの加工 | データの集約やクレンジングなど自動化による前処理 |
データの可視化 | ビジュアライズによるリアルタイム分析や迅速な意思決定 |
それでは、ここからECサイトの分析においてデータ分析基盤が重要である理由を説明します。
さまざまなデータを一元化できる
データ分析基盤ツールを用いれば、前述の通り、異なるソースからのデータを一元化することが可能です。これにより、ECサイトの様々なチャネルや接点からの情報を統合し、より包括的な視点から分析を行うことができます。
具体的には、顧客行動データや購買パターンデータなどを一元管理することによって、顧客の行動をより詳細に理解し、効果的な施策の立案に役立てられます。
データ分析の効率性が向上する
また、データ分析基盤ツール導入によって、これも前述したようにデータの収集・蓄積・加工・可視化の一連の工程が自動化されます。これによって、データ分析に必要なリソースを大幅に削減し、データサイエンティストは他の業務に集中できるようになります。
このように、煩雑なデータ処理作業から解放されることで、根拠に基づいた迅速な意思決定を行なえるようになります。
より深いインサイトを得られる
それ以外にも、高度な統計分析や予測モデリング、マシンラーニングなどのアルゴリズムを用いた分析をサポートできるのがデータ分析基盤ツールのメリットです。このメリットによって、未来予測やパーソナライズなどにおいて、より深いインサイトを得る助けとなります。顧客の嗜好や行動のトレンドを把握することで、より効果的な商品提案やマーケティング施策の立案につなげつことができます。
リアルタイムで分析ができる
上記の他にも、データ分析基盤ツールはリアルタイムでのデータ分析を可能にします。
特にECサイトの場合、競争が激しいため、素早い対応が求められますが、顧客行動や市場環境の変化に迅速に対応できるようになり、リアルタイムな方針策定ができます。
ECサイトにおけるデータ分析基盤の活用例
本章では、Shopifyを使用し、分析基盤の総合支援ツール「trocco ®」とデータウェアハウスのGoogle BigQueryを用いてデータを統合・可視化する方法を紹介します。
ECサイトプラットフォームであるShopifyは、トラフィック、販売、注文、お客様などの情報をリアルタイムで追跡し、分析する機能があります。
しかし、リアルタイムで何千何万という膨大なデータの分析は負荷がかかることもあるでしょう。また、Shopify以外の別のプラットフォームで収集したデータと組み合わせた高度な分析を行いたい場合、追加でデータウェアハウスへのデータ統合が必要になります。
そこで、おすすめするのがtrocco®を使ったデータ分析基盤の構築です。
trocco®とBigQueryを使ってShopifyで蓄積しているデータや広告データ、売上データなどを統合したあと、LookerStudioやTableauなどのBIツールを用いて可視化をすれば効率的に高度な分析を行うことができるようになります。
通常、データの転送は複雑な処理や運用コストが必要となります。しかし、trocco®を用いることにより簡単に転送が実現でき、メンテナンスの手間も省くことができます。trocco®はデータソースのあらゆる変更に追従できます。そのため、ETLのパイプラインを構築した後に発生する変更対応に追われることもありません。
Shopifyのデータの統合・可視化の詳しい手順を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
まとめ

今回は、ECサイトのデータ分析における課題や、データ分析基盤をECサイトに導入すべき理由、活用事例について解説しました。
昨今のビジネスではデジタルをメインとしており、取得したデータを有効活用できているかが事業成功の鍵となっていることは言うまでもありません。
しかし、前述の通り、ECサイト運営にあたってはさまざまな課題があり、その課題を効果的に解消するのがデータ分析基盤です。
データ分析基盤を用いることで、多様かつ不揃いなデータの一元化やデータサイエンティストの業務を効率化できます。また、リアルタイムでのデータ分析やその分析したデータに基づいた根拠ある意思決定ができるようになり、業務のクオリティとスピードが格段に上昇します。
本記事で紹介したtrocco®を用いれば、簡単にデータ分析基盤の構築ができ、高度で精緻な分析を行えるようになるでしょう。
trocco®ではクレジットカード登録や契約が不要のフリープランを提供しています。実際にtrocco®でどのようなデータを転送できるのか、どのような使い心地であるかを知りたい方はぜひお申し込みください。
trocco®で他にどのようなデータ転送ができるかご関心がある方はtrocco(トロッコ)活用事をご覧ください。
