データはビジネスを展開する企業にとって非常に重要なものです。また、その真価を引き出すためには適切な管理と分析が欠かせません。そのための有力な手段がETL(Extract、Transform、Load)です。
すでにその名を耳にしたことがあるかもしれませんが、具体的に何をもたらしてくれるのか、どのように活用すればよいのかを詳しく知りたいと思っている方もいるでしょう。
本記事では、ETLの概念からその重要性、企業での使用例、ツール選びのポイントまでを徹底的に解説します。そして、負担をそこまでかけずにETLを実践する手段として、データ分析基盤の構築のためのETL機能をそろえた「trocco®」を紹介します。
ETLの実践を検討している方、ETLツールの利用を迷われている方はぜひこの記事をお読みください。
ETLとは

ETL(Extract、Transform、Load)は、データ分析における重要な工程です。この一連の工程はそれぞれ、「抽出」「変換」「格納」という意味を持ちます。
「抽出」では、社内の多様なデータソースから必要な情報を取り出します。これは、主にデータウェアハウス(DWH)やデータマートに格納される前の初期段階です。抽出されるデータは、業務に必要な重要な情報であり、その質と正確性が分析結果の信頼性に直結します。データ抽出の際には、データの利用目的を明確にし、不要な情報は含まれないように慎重に選別します。
「変換」では、抽出したデータをデータウェアハウスに書き込む前に、扱いやすいフォーマットに変換する作業が行われます。データの形式や表記ゆれ、欠損値の処理など、さまざまな変換処理が行われ、データの一貫性と整合性が確保されます。この変換という工程はデータの質を向上させるために欠かせない過程であり、正確な分析結果を得るために重要です。また、変換処理はETLの中でも最も複雑で時間がかかる部分でもありますが、効率的な処理を行うためには適切なETLツールの活用が求められます。
「格納」では、変換されたデータをデータウェアハウスやデータマートに書き込む作業が行われます。データウェアハウスは企業全体のデータを一元管理する重要なデータベースであり、データの一貫性や可用性を保つことが求められます。データ格納はデータ分析において重要な要素であり、効率的で正確な格納が行われることで、データ利用のスピードと品質が向上します。
上記のようなETLの各工程は、データ分析において必要不可欠な要素であり、事業の意思決定や戦略策定において重要な役割を果たします。正確で信頼性のあるデータを迅速に取得できるよう、ETLのプロセス効率化や自動化が進められています。ETLツールの台頭により、煩雑なプログラミング作業を軽減し、ノンプログラマでも容易にデータ処理を行うことが可能になりました。
また、ETLの枠組みは進化し続けており、ELT(Extract、Load、Transform)というアプローチもあります。ELTではデータの変換を後段で行うため、柔軟性が高まり、大量のデータを効率的に処理できるとされています。ETLとELTの使い分けは、企業のニーズやデータの性質に応じて適切に選択される必要があります。こちらについては後述するセクションで詳しく説明します。
ETLはデータ分析の土台として、企業がビッグデータを効果的に活用するための重要なプロセスです。正確で信頼性のあるデータを得るために、ETLの効率化と適切なツールの活用が求められます。そして、変化するデータの要件に適応しつつ、ビジネスに価値ある情報を提供するETLプロセスの構築が重要です。
ETLが必要になる5つの理由

大量のデータを扱う企業が増えている昨今において、ETLはデータの管理、分析、レポーティングを効率的に行うことを実現します。
また、ETLはデータガバナンスの観点からも重要です。データの出所やその変遷を把握できるようにし、データの安全性を担保します。
ここでは、ETLが必要になる理由を5つの観点から具体的に説明します。
データの統一性
社内には多様なデータソースが存在し、それぞれデータ形式や構造が異なります。この多様性がデータ分析や意思決定を阻む素因となりますが、ETLのプロセスはこれを解決する鍵となります。ETLを行うことによって、異なるデータソースからのデータを統一されたフォーマットに変換し、一貫性のあるデータを取得できます。この工程で得られたデータにより、組織全体で共通の観点を持つことが可能となるため、結果として正確な分析と的確な意思決定が可能になります。
データクレンジングと品質向上
ETLのプロセスは、データの品質向上にも欠かせない役割を果たします。データソースから取得したデータには、欠損値やエラー、表記の揺れなどが含まれる場合があります。このような不揃いなデータをそのまま利用すると、事業の意思決定に深刻な影響を及ぼすリスクがあります。そのため、ETLプロセスによりデータクレンジングを行い、不正確な情報が修正・排除された正確性の高いデータの正確性を確保すれば、信頼できる分析結果を得られます。
パフォーマンスと効率の向上
データ量が増加し、多様なデータソースからのデータ取得が必要となる現代のビジネスを取り巻く環境では、データの処理速度と効率も重要な課題となります。ETLのプロセスはデータの抽出・変換・格納を最適化することによって、データ処理のパフォーマンスを向上させます。このパフォーマンスの上昇により、迅速なデータ分析やリアルタイムなレポーティングが可能となり、スピーディな戦略立案をサポートします。
履歴データの管理
過去のデータからトレンドやパターンを把握し、将来の市場や顧客の動向の予測に役立てることは、競争に勝つために非常に重要なファクターとなります。ETLプロセスは、このような過去の履歴データを適切に管理・保存し、時系列分析を行うことを可能にするので、長期的な戦略策定やリスク管理を強化できます。
データガバナンスとコンプライアンス
データの安全性とプライバシー保護は、企業にとって最重要課題の一つです。ETLプロセスは、データの取り扱いに関するルールとコンプライアンス要件を厳格に守るための有力な手段となります。データの抽出・変換・格納のプロセスは監査や法的コンプライアンスに対応し、データの信頼性を高めます。組織はデータガバナンスの要件を満たし、信頼性のあるデータを活用することで、リスクを軽減し競争優位性を築くことができます。
ETL以外のデータ処理の手法とETLとの違い

ここでは、ETL以外のデータ処理の手法としてELT、EAI、リバースETL挙げ、ETLとの違いについて説明します。
ETLとELTの違い
ETL(Extract、Transform、Load)とELT(Extract、Load、Transform)は、データ処理の順番において異なるアプローチを取ります。
ETLは、データの抽出からデータマートへの加工までの一連の処理を行い、加工済みデータをデータウェアハウスに格納します。一方のELTは、データをそのまま抽出してデータウェアハウスに保存し、必要な時にデータウェアハウス内で分析用の加工を行います。
ETLでは事前にデータを加工するために処理時間がかかる一方、ELTは抽出した生データを素早くデータウェアハウスに格納できるというメリットがあります。昨今のデータウェアハウスの機能向上により、ELT手法は注目されています。
ETLとEAIの違い
ETL(Extract、Transform、Load)とEAI(Enterprise Application Integration)は、異なる目的を持つデータ統合ツールです。
ETLは、データを単一のターゲットに集約・統合することを目的としており、高度なデータ分析やデータマイニングが主な用途で、バッチ処理が基本です。
一方、EAIは、企業内の複数の異なるシステムを統合してデータのやり取りを行い、リアルタイムな処理を重視します。
このように、ETLとEAIは、データ統合の手法や目的において異なるアプローチを取っています。
リバースETLとの違い
リバースETLは、ETLとは逆の手法であり、データウェアハウスやデータレイクからデータを抽出し、dbt(データモデリングツール)などを使ってターゲットとなる場所のデータモデルに合わせて変換します。
通常のETLでは、データウェアハウスやデータレイクにデータを抽出し、加工してから格納します。それに対して、リバースETLではデータウェアハウスやデータレイクから抽出したデータを、ターゲットのデータモデルに合わせて変換して保存します。この手法は、データウェアハウスやデータレイクを信頼できる唯一の情報源(Single Source of Truth; SSOT)として機能させ、データマートや分析用のデータをターゲットとなる場所に最適化して保存することができます。
リバースETLのアプローチは、ETLとは異なり、データの変換処理を後段で行うため、データベース内での変換が可能です。そのため、特定のツールを必要とせずにデータ変換を行うことができます。ただし、変換処理がデータベース内で行われるため、処理に大きな負荷がかかる可能性がある点に注意が必要です。
ETLの実践はツールを利用すると便利

自社開発と外部サービス導入の選択は重大な判断となります。自社での開発はニーズにフィットしたカスタマイズが可能ですが、これには高度な技術力と大量のリソースが求められ、さらには時間や予算の制約も抱えることとなります。
こうした課題を解決するオプションとして、ETLツールが役に立ちます。ETLツールは導入に時間がかからず、すぐに運用することができます。また、運用や管理のコスト効率を最大化します。
本章は、自社でETLを実装するメリット・デメリットにも触れながら、ETLツールを活用するメリット・デメリットを紹介します。
ETLをスクラッチで実装するメリット・デメリット
まずは、自社でETLを実装するメリット・デメリットを紹介します。
自社でETLをスクラッチ開発をするメリットとして挙げられるのは、カスタマイズ性が高い点です。自社の要件に合わせて柔軟なデータ処理を行えるため、企業固有のニーズに最適化したシステムを構築できます。
また、開発から運用まで全ての段階を自社で管理できるため、変更や拡張にも対応しやすくなります。長期的にはライセンス料などの費用を削減できる可能性もあります。
一方、デメリットとしては、時間とリソースの負担が高いことが挙げられます。開発には通常、まとまった時間とリソースが必要であり、他の重要なプロジェクトや業務に対応する余裕が減ります。
また、新たなシステムの開発には技術的なリスクが伴い、不具合やエラーの発生などがあり、その解決に追加コストが発生する可能性もあります。自社開発にはリリースまで時間がかかる場合があり、既存のETLツールを利用するよりも開発スピードが遅くなるリスクも考えられます。
ETLツールを利用するメリット・デメリット
続いて、ETLツールを利用するメリット・デメリットを紹介します。
ETLツールを利用するメリットにはデータ管理の効率化や改善ができることが挙げられます。ほとんどプログラミングを必要とせずデータ処理を自動化できるため、データの統合・整理が簡単になり、結果としてデータ管理業務の効率化を図れます。
また、ETLツールを利用することで、ビジネスサイドのメンバーでも業務を遂行できるため、業務効率が向上します。
さらに、データの正確性と一貫性を向上させるため、信頼性の高いデータを維持できます。高度な専門知識が不要であり、直感的な操作が可能なため、データ操作やメンテナンスを効果的に行うこともできます。
それ以外にも、自動化により人為的なエラーを削減できるため、データ品質を維持しつつ人的資源を有効活用できます。
デメリットには、基本的なデータサイエンスやETLの概念の理解、操作に関する基礎的なリテラシーが求められることが挙げられます。
また、ツールの導入・運用にはライセンス費用やメンテナンス費用などの一定のコストがかかることが見込まれます。異なるツール間での使い勝手や操作性の違いがあるため、ツールごとに学習コストがかかる可能性もあります。
上記の二つの要素を考え、メリットとデメリットを比較するに従い、特別な理由がなければETLツールを用いることをおすすめします。
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ETLツールの活用事例3選

ETLツールの活用事例として、ETL機能を備えた分析基盤の総合支援ツールtrocco ®を導入した企業を3社紹介します。
具体的にどのようにETLツールが使われているのかを知りたいという方はぜひ参考にしてください。
株式会社スタジオレックス
株式会社スタジオレックスでは、従来の業務でデータ更新頻度の低さが課題となり、データ分析業務の脱属人化と効率化を目指してETLツールの活用を検討しました。
従来の業務ではデータ更新の頻度が低く、リアルタイムのデータ分析が難しい状況でした。ETLサーバーの継続的なメンテナンスが負担になっていたことが課題でした。そこでETLツールの導入を検討することになり、GUIで簡単にパイプラインを定義できるtrocco®︎を選択しました。
trocco®︎を導入したことにより40%のコスト削減とデータ分析の効率化が実現し、リアルタイムなデータ検証が可能になりました。
それ以外にも、ゲームアプリを横断して分析の幅を広げるためのリソースが確保できるようになりました。
株式会社スタジオレックスの事例について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
株式会社キュービック
株式会社キュービックは、スピーディな意思決定と効果的なデータ活用を実現するため、trocco®︎をETLツールとして導入することを試みました。
trocco®導入以前、ビジネスサイドの要望に柔軟に対応できる環境を構築することが求められていました。デジタルメディア事業を支えるSREチームでは、売上データや広告データなどを活用した効果的な戦略立案が重要でした。このような理由からETLツールとしてtrocco®︎を導入するに至りました。
trocco®︎を導入したことにより、データ運用における工数が40%削減される見込みが立ち、システムの保守運用に関わる工数も70%削減できると予想されています。また、全体の工数を半分以上削減し、データ活用にかかる時間を大幅に短縮することが期待されています。データ分析結果のレポーティングもスピーディになるため、ビジネスの意思決定がより迅速に行える環境が整いました。
株式会社キュービックの事例については以下の記事で詳しく紹介しています。
株式会社 ALL CONNECT
株式会社ALL CONNECTは、ETLプロセスを含んだデータ分析基盤を見直すことで大きく業務を改善し、デジタル広告からの集客データやWebサイト上のユーザーアクションをコールセンターの管理情報や顧客データベースにあるデータをもとにした多様な分析を実現しています。
リニューアルされたデータ分析基盤では、trocco®︎を利用してGoogle BigQueryに顧客にまつわる情報が集約されるようになっています。trocco®︎とGoogle BigQueryを利用してデータの一次加工を行い、Tableauのインメモリ集計を活用することで、膨大なデータの集計を迅速に行えるようになりました。
データ加工の可能範囲も広がり、必要な加工データを漏れなく行うこともできるようになりました。
株式会社ALL CONNECTのtrocco®導入の詳細については以下の記事をご覧ください。
ETLツールの選定で確認すべき5つのポイント

ETLツールの選定をする際は、下記5つのポイントをチェックすることをおすすめします。
一つ目はETL機能の充実度です。自社が既に利用しているサービスと新しいETLツールが連携できるかを確認し、操作しやすいUIを持つツールを選ぶとよいでしょう。ツールの対応範囲やバージョンアップの頻度、サポート対応も重要な要素です。
二つ目はELTに対応しているかという点です。ELTにも対応しているような、最新のデータエンジニアリング手法をサポートしているツールを選択することをおすすめします。
三つ目は、リバースETLに対応しているかという点です。リバースETLは、全社でデータを活用する場合に重要な工程です。データウェアハウスで加工されたデータを元のサービスでも使えるようなツールを選びましょう。
四つ目はデータ分析の自動化のサポートの有無です。定期的なデータ転送が必要な場合、データ転送や更新を自動化できるツールを選択すると運用の負担を軽減できます。常に最新のデータで分析できる環境を整えればぐっと作業効率が上がるでしょう。
最後に、メタデータのサポートがあるかをチェックしましょう。メタデータを活用することでデータマネジメントが効率的に行えます。
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ETLを実践するならtrocco®がおすすめ

今回は、ETLの概要や導入するメリット、導入する際のポイントなどについて紹介しました。信頼できるETLツールを用いることによって、少ない時間で大きな成果を上げることができ、またビジネスにおいてもスピーディに意思決定をすることができます。
本記事で紹介したtrocco®︎はETL機能を備えており、データ分析基盤の構築において非常に有用です。
trocco®︎にはクレジットカード登録や契約が不要のフリープランがあります。まずは使い心地を知りたいという方はぜひお気軽にお申し込みください。
