現代では、企業において、データは最も価値のある資産であるといえ、データの効果的な活用はビジネス成功の鍵となっています。そしてデータを効果的に活用するには、適切なETL(抽出、変換、読み込み)ツールの導入が欠かせません。
ETLツールでは、データの抽出から変換、そして読み込みまでの一連の流れを効率的に行えます。多様なデータ分析において不可欠な存在ですし、データの安全性を保つ上でも重要な役割を果たします。
本記事では、ETLツールの活用事例を13のケースに分け、それぞれのポイントについて詳しく解説します。また、ETLの導入が重要である理由や選定のポイントについても紹介するため、ETLツールへの理解を深める一助となるでしょう。
ETLツールとは

データ分析基盤の構築には、大きく分けて以下の3つの要素が必要です。
- 分析に用いるデータ:広告データや営業データ、ログデータなど
- データウェアハウス(DWH):データの高速処理に長け、分析に特化したデータベースシステム
- BIツール:DWHと連携し、データの可視化を手助けする
これら3つの要素をつなぐのがデータのETL(E:抽出、T:変換、L:格納)であり、ETLツールとはETLプロセスを自動化するソフトウェアやプログラムです。
従来の自前でのETL実装は、各種サービスのAPIに関する知識が必要であったり、転送用のプログラムを構築する必要があったりしました。さらに一旦構築したデータ分析基盤も、サービスのバージョン変更やAPIの仕様変更、エラー対処など、保守運用に非常に大きなコストがかかりました。
そこで、これらの課題に応えるかたちで登場したのがETLツールです。ETLツールでは、データのETLを自動化し、大量のデータの効率的な処理を可能にします。これにより、データの正確性が向上したり、ビジネス上の意思決定が迅速かつ効果的にできたりと、さまざまな恩恵を受けられるのです。
企業がETLツールを導入すべき3つの理由

データ処理を自動化できる
データ量が増加し、多様なデータソースからのデータ取得が必要となる現代の環境では、データ処理の効率が非常に重要な課題です。
ETLツールを導入することで、データ処理を自動化でき、データ処理にかかる時間を大幅に削減できます。また、ETLツールの導入によって開発環境を整えられ、開発工数の削減にもつながります。結果として、分析などの本質的な業務に時間やコストを割けるようになるのです。
データ処理のパフォーマンスが向上すれば、迅速なデータ分析やリアルタイムなレポーティングが実現でき、スピーディな戦略立案が可能となります。
データの正確性と一貫性、品質担保できる
社内には、データ形式や構造の異なる多様なデータソースが存在します。この多様性がデータ分析や意思決定を阻む要因となりますが、ETLツールはこれを解決する鍵となります。
ETLツールでは、異なるデータソースからのデータを、統一されたフォーマットに自動で変換し、一貫性のあるデータを取得できます。また、データクレンジングや品質管理も自動化できるため、データの正確性や品質の維持も可能です。
これにより、信頼性の高いデータを基にした定量的な分析が行えます。さらに、この工程で得られたデータにより、組織全体で共通の観点を持てるようになり、結果として効果的な意思決定が可能になるのです。
人為的なエラーを削減できる
ETLツールの導入により、データ処理の多くのステップを自動化できるため、人為的なミスや誤変換、データの逸失などを削減できます。また、データ処理のプロセスが自動化されることでデータ処理の手順が統一されることも、人為的なエラーの削減に効果的です。
人為的なエラーの低減によって、データの品質が維持され、信頼度の高い分析が行えます。また、その他の業務への人的資源の有効活用が可能になる点も大きなメリットです。
課題別ETLツールの活用事例13選

データを活用できる人材が不足している
電気・ガス事業での活用事例
大阪ガス株式会社では、データ分析に強い社員を増やすための教育が必要でした。その際、データ分析のスピードを上げたり属人化を防ぐために、BIツールやSaaSの導入を重要視したのです。
ETLツール「trocco®」の導入により、データのETLや分析基盤の構築にかかっていた時間と手間を、データ分析やより高度なプロダクトに割けるようになったといいます。結果的に、データ分析の範囲とプロジェクトの実績数をスケールさせることに成功しました。
本記事の詳細はこちらをご覧ください。
教育系プロダクト開発事業での活用事例
atama plus株式会社は、専属のデータエンジニアが不在であったため、データ分析基盤が整備されていませんでした。さらに、データのドメイン知識が一部の社員に属人化してしまっていたため、将来的には標準化する仕組みを作らなければならないと考えていました。
trocco®の導入後は、「データカタログ機能」の利用によるメタデータの整備によって、BigQueryを自立的に活用できる社員が10人ほどから52人に増えました。データに詳しくないメンバーでも、データカタログ上に書いたり、データウェアハウスを作ったりすることで、ナレッジが蓄積されていく好循環が作られているといいます。
本記事の詳細はこちらをご覧ください。
ソフトウェア開発事業での活用事例
株式会社オープンエイトでは、データ分析関連の業務に時間がかかっていたことが課題のひとつでした。そのため、「データの民主化」をキーワードに掲げ、非エンジニアにも権利を移譲し、簡単な分析レベルは誰でもできる状態を目指しました。
trocco®の導入後は、意思決定に必要な指標を自動で出力できるようになり、非エンジニアの人たちにとってもデータがより身近な存在になったといいます。実際、4人/月分の作業時間を削減でき、データ活用のスピードが飛躍的に向上しました。
本記事の詳細はこちらをご覧ください。
複数のデータソース/システムを連携・データ統合をしたい
精密機器事業での活用事例
京セラドキュメントソリューションズ株式会社では、SQL Server内の社内マスターデータから異種のデータベースへデータ連携が必要でした。社内ではさまざまなデータソースを扱っているため、データソースに追加対応するためには毎回開発しなければならず、多大な手間を要していました。
trocco®の導入により、20〜30本ほどのデータをつなぎ込んでおり、データ転送量は右肩上がりに増えています。社内SQL Serverの5.6GB(5,000万件)のテーブルをBigQueryへ転送する場合、たったの35分しかかからず、サーバーにモジュールや機能を組み込む手間もありません。社内全体として、より積極的にデータ分析業務に貢献できるようになったといいます。
本記事の詳細はこちらをご覧ください。
教育系サービス事業での活用事例
株式会社明光ネットワークジャパンでは、APIを実装していない基幹システムのデータを、どのようにしてシームレスに連携させるかが課題のひとつでした。そのため、データを統合・流通させ、連携アプリにつなぎこめる状態が実現目標でした。
trocco®の導入後は、セキュアかつシームレスなデータ連携を実現することで、教室業務の事務作業および業務改革が実現しました。実際、作業効率化により2人日かかっていたデータ特定作業が削減できたといいます。
本記事の詳細はこちらをご覧ください。
製品プロデュース支援事業での活用事例
株式会社マクアケでは、エンジニア不足により、SaaSや自社サービスにデータが点在しており、活用できていませんでした。そのため、非エンジニアでも画面を操作してデータを連携でき、データのコネクタが豊富であるETLツールを必要としていました。
そこでtrocco®を導入すると、毎月5時間を費やしていたスプレッドシートの更新が不要になり、自動で最新の情報が更新されるようになりました。そしてデータ分析基盤が整えられたことで、データの転送から分析・可視化の流れがスムーズに行えるようになったといいます。
本記事の詳細はこちらをご覧ください。
データガバナンスが効いていない
小売事業での活用事例
株式会社アイスタイルでは、部門ごとにデータパイプラインが量産されていたため、再利用性・保守性が低い点が課題でした。同時に、ワークフローの作成者本人にしか復旧できない、属人的な保守体制も問題でした。
trocco®の導入により、173のワークフローと237のデータマートの可視化に成功し、誰もがデータパイプラインの作成者と目的がわかる状態になりました。さらに、Slack連携や適切なSLAの選定により、ワークフローの作成者以外でもエラー検知・復旧が可能になり、脱属人化を実現したといいます。
本記事の詳細はこちらをご覧ください。
リーガル系サービス事業での活用事例
弁護士ドットコム株式会社では、4つの異なるサービスを運営していましたが、サービスごとにデータを集める仕組みが異なっており、データ管理の属人化が進んでいました。また、データ分析業務でも同様に属人化の傾向があり、「知識の断絶」に課題感を抱いていました。
trocco®の導入後は、分析の前処理業務を1/4程度まで削減できており、浮いたリソースは本来のデータ分析業務に回せています。さらに、クエリが書きやすくなったことで、他部署の人でも一部の業務ができるようになり、属人化の解消が見込めるといいます。
本記事の詳細はこちらをご覧ください。
データの処理作業を最適化したい
インターネットサービス事業での活用事例
株式会社ギフティでは、サービスのリニューアルに伴いデータベースを2つに分ける必要が生じました。しかし、データ処理作業の最適化ができておらず、2つのデータベースから情報を出力するために、非常に大きな手間と時間を要していました。
そこでtrocco®を導入していただくと、2つのデータベースはすべてBigQueryに集約し、データ統合を実現できました。そして課題であったデータ出力は、手間と時間が導入前から1/5になりました。さらに、誰でもデータにアクセスできるようになり、施策のスピードが向上したといいます。
本記事の詳細はこちらをご覧ください。
インターネット広告事業での活用事例
株式会社キュービックでは、売上データの更新に必要なデータのダウンロードや、基幹システムへのインポートを手動で行っていました。多くの媒体のデータ連携も手動で行っており、自動で連携できるツールを必要とされていました。
データ分析業務の効率化を目的にtrocco®を導入していただき、自社データ分析基盤をリニューアルすることで、データ連携の自動化やデータ分析にかかっていた社内リソースの削減を実現します。インタビュー時の段階では、データ運用における工数が40%削減、システムの保守運用に関わる工数が70%削減できる見込みが立ったとのことです。
本記事の詳細はこちらをご覧ください。
企業向けデジタル活用支援事業での活用事例
アンドデジタル株式会社では、スプレッドシートで数万件のデータを処理する必要があり、処理が遅くなったり止まったりしていました。また手作業の工程が発生しており、それが原因で不具合が起こるケースがありました。
BigQueryをすでに導入されていたため、ETLツールとして「trocco®」を選択していただきました。スプレッドシートで処理していた時と比べ、データのエラーが大幅削減に成功しています。今まで50時間かけていたサービスも30時間で作れるようになり、ほかの業務に時間をさけるようになりました。そのため、より多くのサービスを提供したり、サービスの質向上が実現できたといいます。
本記事の詳細はこちらをご覧ください。
脱属人化・スピード感のあるデータ活用を実現したい
ソーシャルゲーム事業での活用事例
株式会社スタジオレックスでは、データ更新が1日1回しかできておらず、また、プロジェクトの意思決定を迅速に行うためデータ分析のスピードを上げることも課題でした。さらに、業務の属人化や作業効率の問題が浮き彫りになっていました。
少人数でもメンテナンスがしやすいデータ分析基盤を構築するため、「trocco®」を導入していただきました。導入後は、データ分析にかかっていたコストの40%削減を実現しました。また、データ転送にかかっていた担当者の手間と時間が2割に抑えられたのです。これにより、依頼に対して迅速に対応できるようになったり、浮いたリソースを新しいサービスの分析に投じられるようになったりしたといいます。
本記事の詳細はこちらをご覧ください。
DtoCブランド事業での活用事例
株式会社Waqooでは、手動で各媒体のデータを管理していたため、集計に時間がかかっていました。リアルタイムで広告運用の数値を確認し、スピーディーに意思決定できることが理想でしたが、広告運用におけるデータ集計作業が属人化してしまっていたのです。
trocco®導入により、集計の自動化が実現でき、1日3時間かかっていた集計作業が0になりました。また、広告に関する意思決定スピードの向上と、迅速なPCDAサイクルを実現させました。それにより、クリエイティブ制作や施策の提案に注力する時間を創出できたといいます。
本記事の詳細はこちらをご覧ください。
ETLツールを選定するときの5つのポイント

ETL機能が充実しているか
まず自社が既にして利用しているサービスとETLツールの互換性を確認しましょう。自社のサービスがそのツールで転送できるかを重視し、データベースやファイル、APIなどからの抽出機能が備わっているか確認する必要があります。
また、新規サービスへの対応やバージョンアップの頻度、サポート対応なども考慮しましょう。操作しやすいUIを備えているかも重要な判断材料です。
最新のデータエンジニアリング手法にも対応しているか
最新のデータエンジニアリング手法への対応は、企業が迅速なデータ処理を行い、競争力を維持するために必須の要素です。
たとえば、ストリーミングデータの処理やリアルタイム処理などの、最新のデータエンジニアリング手法は企業にとって重要な競争要素となっています。そのため、選定するETLツールがこれらの手法に対応しているかどうかは、将来的なデータ処理の拡張性や効率性を確保する上で重要な判断材料なのです。
リバースETLに対応しているか
ETLは通常、データをDWHに統合する作業ですが、DWHからデータ元のサービスにデータを逆流させるリバースETLという手法があります。全社で用いる汎用的なデータ活用を実施する場合には、リバースETLに対応しているかについても検討しましょう。
リバースETLに対応していると、DWHで加工されたデータを元のサービスでも活用できます。これにより、データの正確性・一貫性の維持や、再利用性の向上が期待でき、データ品質の保持に欠かせない役割を果たします。
データ分析の自動化のサポートがあるか
常に最新のデータを用いて作業するためには、定期的なデータ転送が必須となります。ツール選定の際には、データ分析基盤構築のみならずデータ転送や更新の自動化もサポートしているかを確認しましょう。
これによって運用の負担を軽減し、分析結果を常に最新の状態に保つことが可能となります。これにより、データの活用価値が最大限に引き出され、分析がより高度なものとなるでしょう。そして、迅速な意思決定にもつながり、競争力を維持する観点からも重要な役割を果たします。
メタデータのサポートがあるか
メタデータを活用したデータマネジメントができるかについてもチェックしましょう。
メタデータによりETLプロセスのトレーサビリティ(追跡可能性)が向上し、データの変換や加工の経緯を容易に把握できます。ETLプロセスに限らず、データの所有者や利用者の特定も容易になり、データの品質を維持するために大きな効果を発揮します。
trocco®ならETL・データ統合が簡単に

本記事では、ETLツールの概要やメリットを踏まえ、ETLツールの活用事例を業種・課題別に分け、詳しくご紹介しました。
今日の社会では、いかに優良なデータを抽出し、有効活用できるかが事業の明暗を分けるといえます。そしてデータを有効的に活用する鍵を握っているのが、ETLツールなのです。本記事で紹介した数々の活用事例からわかるように、自社にフィットしたETLツールを導入し適切に活用すれば非常に大きな効果をもたらします。
分析基盤の総合支援ツール「trocco®」は直感的に理解しやすいGUIを採用しており、ETL機能以外にもジョブ管理機能やマネージドデータ転送機能など、データ活用を行うにあたって欲しい機能が一通り揃っています。データ転送・統合は工程が多く手間がかかる作業ですが、trocco®はそれらに必要な工程を自動化し、また、さまざまな機能・サポートにより工数を90%以上削減することが可能です。
trocco®は、ETL/データ転送・データマート生成・ジョブ管理・データガバナンスなどのデータエンジニアリング領域をカバーした、分析基盤構築・運用の支援SaaSです。trocco®について詳しく知りたいという方は、以下より資料をご請求ください。
