日常やビジネスのスタイルが変化する中で、オフライン・オンラインの両方で商品を購入できるという顧客体験はすっかり当たり前のことになっています。さまざまな場面でその両立が行われていますが、とくに小売業界では、オンラインとオフラインの購買データの取り扱いが焦点となっています。店舗での販売が減少する中、オンライン販売の重要性が増しているのは明らかです。しかし、これらの異なるデータをどのように統合し、より洗練された販売戦略を構築するかは、業界の大きな課題となっています。
本記事では、小売業界のある企業の事例を取り上げ、どのようにデータを活用し、売上向上を目指した取り組みをしているのか紹介します。
また、オフライン・オンライン両方の店舗を展開する企業はどのようにデータを活用するべきなのか、ポイントを解説します。
クライアントの課題
小売業界の某企業は、これまで主軸であった店舗販売での売上が、COVID-19の影響によりECの売上が増加したことでECにも注力する方針転換をしました。
これに伴い、EC、店舗販売のデータを活用・統合し、より販売戦略に生かす必要性が増しました。今後のビジネスを踏まえたうえで、EC・店舗の一気通貫でのデータ活用が課題となりました。
解決方法
店舗(オフライン)とECサイト(オンライン)のデータの統合にあたり、各システムに保管されているデータの転送パイプラインを整備し、基盤となるDWH、BIを構築しました。

オンプレミスに保管されているDBより取り出されたCSVとWebサイト行動データを、trocco®を使用してGoogle BigQueryにETLを実施。
Google BigQuery内でデータマートを作成後、ここでもtrocco®を使ってBIツールやMAツールに転送し、解析やマーケティング活動に活かせるようにしました。
データソース | 扱っているデータ |
基幹データ:CSV | ECサイト・店舗の売上や会員・購買情報、商品情報、メールキャンペーン情報など |
ログ:Webサイト行動データ(Webサイトへアクセスしたユーザの行動ログ(Cookie) | ページ遷移情報、タイムスタンプなど |
BIツールでは、主に以下の解析ができるようにデータを可視化しました。
- EC、店舗を横断した解析
- 会員登録前の動きの解析
- 会員ID毎にEC、店舗の売上、動向の解析
- メールキャンペーンの状況解析
また、オンライン接客ツールとして活用するMAツールを活用し、登録された顧客リストからグループを作成したり、アプリのPush通知やメール送付など顧客リストに基づいたマーケティング施策を実施できるようにしました。
導入効果
ETLツールの導入により、購入者が店舗購入とオンライン購入のどちらを選ぶのか、また、購入者が店舗での購入を続けるのか、オンラインでの購入を続けるのかなどの動向が明確になりました。これにより、ターゲットに合わせたマーケティング戦略の展開が容易となり、施策の強化やLTVの改善を図ることができるようになりました。
小売業界の企業がデータ活用をする際のポイント
データの一貫性を保つ
オフライン(店舗)とオンライン(ECサイト)から収集されるデータの一貫性は極めて重要です。それぞれのデータソースが異なるフォーマットや基準を持つことが一般的ですが、このような不整合は分析の際に誤解や誤った洞察を引き起こす可能性があります。
そのため、データを収集する際の基準やフォーマットを統一することが求められます。
たとえば、商品IDや顧客ID、販売日時などの基本的な項目は同じ形式や命名規則で保存する必要があります。
リアルタイム分析をする
現代の消費者のニーズや期待は刻一刻と変化します。変動的な環境に対応するために、データをリアルタイムで解析し、迅速な意思決定を下すことが求められます。そのため、リアルタイムでデータ収集・分析ができるようにすることは必須です。
パフォーマンスの高いデータベースやストリーミング解析ツールを導入することで、その時々のインサイトを得ることが容易になるでしょう。
顧客理解を深める
顧客を深く理解することは、より適切なサービスや製品を提供するための土台です。顧客の購買履歴やオンラインでの行動を把握することで、顧客のロイヤリティ向上やリピート購入を促進することが期待できます。CRMツールの活用や顧客セグメンテーションは、こうした理解をさらに深めるための手法となります。
セキュリティを確保する
データセキュリティは、現代のビジネス環境において避けては通れない課題です。情報の流出や不正利用は企業のブランドを大きく損なう可能性があります。
そのため、先進的な暗号技術やアクセス権限の管理、定期的なセキュリティチェックは不可欠です。継続的な教育や研修を行い、内部からのリスクを予防することも重要です。
まとめ
本記事では、オフライン・オンラインの購買データや顧客データを統合し、販売戦略やマーケティング活動を効率化するためのデータ分析基盤を紹介しました。
限られたリソース内でデータ分析基盤を構築することは容易ではありませんが、ツールを用いれば少ない時間・工数でも実現することは可能です。
データ分析基盤の構築支援サービス「trocco®」を活用すれば、効率的なデータ活用ができる環境を構築できるでしょう。
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