企業のミッション・パーパスに「再生可能エネルギーで世界を変える」を掲げ、太陽光や陸上風力、バイオマスなど再生可能エネルギー発電を手掛けるENEOSリニューアブル・エナジー株式会社。2023年4月現在、全国90数カ所で発電事業を展開する同社では、売電の入札調整や発電所の予防保全などに活用するデータ分析基盤の構築を検討していたものの、開発のスピードや手間に課題を感じていたという。そこでprimeNumber社のデータエンジニアリングソリューションサービスによって、一気通貫でデータ利活用の体制を整えることになった。取り組みの背景にあった課題や効果、データ活用における今後の展望についてお話を伺った。

導入のきっかけ

デジタル化で事業活動に付加価値を与えるため、データ活用を模索

コーポレート本部情報システム部 部長 丸 睦様
貴社事業の概要をお聞かせください。

丸 睦様(以下、敬称略):弊社は再生可能エネルギーの開発、運転をしている会社です。弊社のように発電所の開発から運転までを一気通貫で手掛ける会社は、実はそれほど多くはありません。2022年に石油元売で日本最大手のENEOS株式会社の子会社になったこともあり、弊社で所有している発電所は2023年4月現時点で大小合わせて90発電所ほどです。

お二人の業務内容をお聞かせください。

丸:情報システム部のミッションは、デジタル化で事業活動に付加価値を与えることです。経理やバックオフィスといったコーポレート部分の基幹システムだけではなく、利益を出すフロント側に貢献する仕組み作りを支援していることが特徴だと考えています。開発部門と連携しながらトライアンドエラーを繰り返し、事業ニーズに合わせたシステムを適切なサイズで、タイムリーに導入していくことが重要です。

なお、情報システム部は現在15名ほどが在籍しており、今回primeNumber社とデータ分析基盤の構築に携わったのはそのうちの3名です。

根津 本樹様(以下、敬称略):情報システム部はアプリ担当とインフラ担当に分かれており、私はアプリ担当側です。主に発電所の遠隔監視システムや電力需給管理システム周りのシステム開発に加え、データ分析基盤の構築を担当しています。

今回のお取り組み前に抱えていた課題をお聞かせください。

丸:課題は二つありました。

一つは気象予測会社から提供される発電所近辺の天候情報データと社内システムにある発電実績データを連携できておらず、太陽光発電や陸上風力発電などの発電量の予測データの精緻化ができていなかったことです。

売電価格は市場の状況によって変動するので、より需要が高いタイミングに売電できるようデータ分析をしたいと考えておりました。

また、2022年10月より、弊社のグループ会社であるJREトレーディング株式会社が弊社の長野大町太陽光発電所を対象に従来のFIT(Feed-in Tariff)に代わる新しい制度のFIP(Feed-in Premium)を用いた電力需給管理業務を開始しておりますが、その業務の要となるのが精緻な発電量予測データであり、短い期間で発電量予測データの準備と連携を確立する必要がありました。

この連携をシステム化しなければ、手作業でそれぞれのデータをダウンロードし、エクセルで結合・計算をして入札することになります。しかしその対応ができる人数が限られているため、効率的に運用可能な仕組みづくりが求められていました。

二つ目は、データ機器の故障などを予測する予防保全のためのデータ活用ができていなかったことです。発電量予測を安定させるために、紫外線で経年劣化する太陽パネルの補修時期や太陽光を遮る雑草刈りのタイミングの判断などを見極めたいと考えており、そのためにはすべての発電所のデータを元に分析する必要がありました。

まだ新しい事業ということもあり、社内の部長層からは「早めに結果を評価したい」「少しでも現場の判断スピードを上げたい」という要望もあったため、データの連携の実装もいち早く実現する必要がありました。

導入・構築について

開発要件に対して柔軟に対応できること、課題を汲み取った提案が決め手に

コーポレート本部情報システム部 アシスタントマネージャー 根津 本樹様
primeNumberと協働する前は、どのようにデータ活用を進めていたのでしょうか。また、弊社をお知りになったきっかけをお聞かせください。

丸:他社とのデータ連携ができる環境が弊社にはなく、APIでつないだりクラウドストレージサービスを経由したりといった工夫をしていました。いざ開発しようと検討しても、開発のリードタイムに4、5ヶ月かかる見込みで、開発が終わる頃には求められている環境が変わってしまっている恐れがありました。

しかし昨今の流れでは、クラウドでデータを連携することが当たり前になっていて、クラウド化する方が柔軟に対応できるのではと考えました。そうした考えに合うツールの導入を検討するにあたりいくつかセミナーを受ける中で、primeNumber社を知りました。

弊社にお任せいただいた決め手をお聞かせください。

丸:データエンジニアリングソリューションサービスでは、弊社の開発要件に柔軟にご対応いただけることが一番の決め手でした。最初から大きな投資が必要になってしまうと、どうしても決裁者は身構えてしまいます。社内稟議も通らなくなってしまう可能性があるので、ライトに始めてだんだんと増強できる柔軟性が高評価でした。

根津:最終的には2社からご提案をいただきました。他社の場合、「依頼主側が詳細まで要件を提示してください」というSIer的なご提案で、ノウハウも経験もない私たちでは完成形をイメージしにくかったのです。しかしprimeNumber社のご提案は、データ分析には明るくない私たちがお伝えした抽象度の高い要望を、どう実現するかシステム要件にまで落とし込んでご提案いただきました。それが非常に的を射た内容だったのです。

最終的にprimeNumber社のデータエンジニアリングソリューションサービスを契約させていただきました。

岩田(primeNumber 担当者):最初のお打ち合わせでは、現在抱えている課題と具体的なデータの流れを理解することに徹しました。そのお打ち合わせの内容を落とし込み、アーキテクチャを最適化していく、というイメージを持ってご提案させていただきました。

今回のお取り組みでは複数のプロジェクトが進行しました。その中で最初のお取り組みはどのように進行しましたか。

丸:最初の案件では、発電所側のスケジュールの都合で、急ぎの案件としてprimeNumber社にご協力いただきました。案件の概要と理想像をお伝えし、何度か定例会を重ねてデータ分析基盤を構築いただいています。初回の依頼では、目的の一つ目であった気象データと社内システムの連携案件です。

取り組みにあたっては、今回の案件だけではなく、今後も使用できる汎用的で拡張性のあるフォーマットをお願いしています。開発スピードが迅速で、アウトプットも私達のイメージがほとんどずれていませんでした。

現在では三つのプロジェクトが進行していますが、最初の案件同様に進行いただけています。

TROCCO®️に対する最初の印象をお聞かせください。

根津:非常にユーザーフレンドリーなサービスになっていると思います。たとえば、登録されているスケジュールの実行やアラート設定などはマニュアルを見ずに簡単に操作ができます。難しいことを本当に簡単な見た目で提供してくれている、すごくいいサービスだと思います。

データ分析基盤の構築・運用は
TROCCO®️におまかせ。

ETL/ELTパイプライン構築やワークフローなどを、SaaS上で実現。データエンジニアの工数を削減して、分析やクリエイティブな業務に集中しましょう。

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導入後の効果

primeNumberによるデータ分析基盤の構築で、開発とオペレーションの工数と手間が1/2に

今回のお取り組みでは、どのような成果が得られましたか。

根津:primeNumber社に依頼することにより、別のサービスの活用やフルスクラッチによる内製で実装した場合と比べて半分以下の工数でデータ連携が実現できました。

また、業務部門のオペレーションコストの削減にも効果がありました。手作業によるオペレーションで実現しようとした場合と比較して半分以下の工数で実現できました。もし今回のデータ分析基盤を構築せず同じことを実現しようとすると、データを手作業でダウンロードして入札情報を作成するといった面倒な作業が発生し、マニュアルも必要になり、人的ミスも避けられなかったでしょう。

丸:システム化によるメリットとして挙げられるのは、決められたロジックでデータが連携されるため、手動によるミスが起きないことです。今回のプロジェクトは最初から自動化していましたが、もしマニュアルで実行しようとしていたら大変なことになっていたかもしれません。

たとえば、数字の転記を間違えてしまい、入札量や金額を間違えてしまったり、最悪の場合は電力の販売価格を一桁間違ってしまったりすることもあり得ます。こうしたミスを防ごうとすると、ダブルチェックのための人員を採用しなければなりません。

発電所の予防保全におけるデータ活用の課題は解決されましたか。

丸:まだ開発の途上ではありますが、実装されれば、間違いなく解決されるものだと考えています。よりよいデータ活用をすることで、発電所や施設の状況を確実に可視化し、発電機会の損失を予防することができるようになるはずです。
根津:再生可能エネルギーの発電量は、主に天候のパラメータと機器の稼働パラメータによって変化します。今回の取り組みによってその両方のパラメータを統合、可視化できる目処が立ち、再生可能エネルギーにおける不安定要素を排除できる可能性が出てきました。

今後の展望

事業をデータ化、数値化し、今後は発電所の間接業務のデータも取得していきたい

今後の展望をお聞かせください。

丸:至極当然のことですが、事業をデータ化、数値化していくことはとても有意義なことです。数値化できていない要素を数値化し、検知できなかったものを検知することが、電力事業におけるデータ活用のファーストステップだと思います。

今回のprimeNumber社との取り組みで、このファーストステップはクリアしつつあります。データ活用の理想像に対する進捗としては、現在20〜30%あたりです。今後は発電所の間接業務のデータ、たとえば作業員が目視で確認しているメーターの数字をデータとして自動で取得できるようになると現場の業務が大きく改善されます。

今回の取り組みを振り返って、弊社のデータエンジニアリングソリューションサービスはどのような企業におすすめできるでしょうか。

丸:弊社にとってprimeNumber社は「伴走しながらコーチングしてくれる存在」でした。

データ分析基盤を実装したことがない、そしてイメージも沸かない企業でもおすすめできると思います。初心者でも気軽に相談に乗っていただけますし、かつ適切なご提案をいただくことができるはずです。

自社のデータ活用の仕方やソリューションサービスの利用について相談する

ENEOSリニューアブル・エナジー株式会社

https://www.eneos-re.com/

業種 電気・ガス
設立 2012年8月20日
従業員数 292名(2023年4月1日時点)
事業内容 発電プラント(風力発電、太陽光発電、バイオマス発電その他自然エネルギー発電)に関する事前調査、計画、設計、関連資材調達及び販売、土木工事、電気工事、建設、運転、保守点検事業並びに売電事業