リテール業界では競合との競争がますます激化しています。また、この業界では成果に厳しいため、堅実に施策を策定できるかがKPI達成の鍵となります。

本記事では、2024年3月12日に行われたセミナーをもとに、昨今標準となったデジタルコミュニケーションを実践する際に抑えておきたいポイントや、TROCCO®でデータ活用をするメリット、リテール業界でTROCCO®を活用した事例についてご説明します。

なお、当日のセミナーはこちらからご覧いただけます。

※本イベントレポートの内容は2024年3月当時のものです。
TROCCO®の利用や接続オプション等の利用の詳細について知りたい方は
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講演者紹介

後藤 淳志 / 株式会社電通クロスブレイン 執行役員CKO(Chief Knowledge Officer)

2006年株式会社ブレインパッド入社 入社後は、EC・流通の他、金融等、幅広くデータ分析を支援するプロジェクトに従事。 また、企業様の分析部門の分析スキル向上を支援するプロジェクトも担当。 2022年に関連会社の電通クロスブレインに出向、マーケティング領域を中心にデータ活用を支援。

塚本翔太 / 株式会社primeNumber アカウントエグゼクティブ

株式会社レゾナック、吉積株式会社入社。Google Cloud専門のSlerとしてクラウドエース株式会社の立ち上げとGoogle Cloudの技術を使った『Cmosy』の新規事業立ち上げを経験。2023年primeNumber入社。現在は、Snowflake・AWS・GCPのSlerの企業を中心としたアライアンス業務を担当。

ID-POSとLINEを活用した顧客分析とは

はじめに、株式会社電通クロスブレインの後藤氏より、リテール業界の現状について解説していただきました。

リテール業界で標準となったデジタルコミュニケーション

後藤:「本日は、リテール業界の現状についてクローズアップしています。

リテール業界では競合他社との競争が激化しており、顧客のニーズも多様化しています。以上のグラフが表すように、人口は減少しつつも、スーパーマーケットの店舗数は増えているという現状が挙げられます。顧客のニーズも多様化しているため、お客様に店舗がなかなか選ばれにくくなっているという現象も見られます。

リテール業界が取ってきた従来のコミュニケーション手段は、テレビCMやチラシ、その他のメディアが主体でした。テレビとか新聞広告、チラシなどのマス媒体でのコミュニケーションは、広範囲にアプローチでき、商品やブランドなどの認知獲得に有効であるというメリットがあります。その一方で、若年層へのリーチがしづらいというデメリットもあります。

また、デジタルデバイスの普及により、EmailやLINEなどのデジタルコミュニケーションが増えているという現状も挙げられます。デジタルコミュニケーションは、各客ごとに情報のカスタマイズが可能である溜め、商品購入などの行動変容を促しやすく若年層にもリーチできるというメリットがあります。」

後藤:「メディアの接触時間の時系列推移を計測した結果をご覧ください。赤い部分が携帯電話やスマートフォンの接触時間で、青い部分がテレビCMやチラシなどのマスメディアの接触時間を表しています。

スマートフォンなどのデジタルコミュニケーションに接触する割合は年々増加しており、今やテレビなどのマスコミュニケーションを凌駕している状態です。このことから、デジタルコミュニケーションで有利になるための戦略を策定する重要性が高まっています。

そしてデジタルコミュニケーションで有利になるためには、顧客に合わせてカスタマイズしてコミュニケーションを実現するということがポイントです。その際に、顧客の行動データを分析することが必須となります。特に、ポイントカードによって取得されたデータはID-POSデータと見なされますが、このID-POSデータを活用できるかが鍵となります。」

後藤:「デジタルコミュニケーション実現に向けた具体的なアプローチとしては、顧客のデータ分析によりその顧客のペルソナを策定し、策定したペルソナにアプローチできるデジタルコミュニケーションを企画・実施していくことが挙げられます。

一方で顧客の状況は時間の経過とともに常に変化していくため、施策結果はデータ用いて定期的に検証する必要があります。そうすることで、施策改善や顧客のペルソナ理解につながることも考慮に入れるとよいでしょう。」

デジタルコミュニケーションの各プロセス

後藤:「デジタルコミュニケーションの各プロセスについてご説明します。顧客分析については4点挙げられます。

1点目には、KPIを策定することで何が目標かを明確にするということが挙げられます。これにより、施策の良し悪しを評価できる状態にできます。たとえば、売上という成果目標を起点に目標を分解してKPIを策定します。施策を評価できる環境にすることで、顧客ペルソナの深い理解につながります。

2点目に、顧客セグメントの定義をすることが挙げられます。これは、顧客ごとに情報をカスタマイズし、データで顧客を表現するということです。

このセグメント定義の際には、目標とするKPIを軸に定義し、目標に連動したデジタルコミュニケーションを実施する土台作りをするということが重要です。」

後藤:「3点目が、分析した顧客セグメントごとの特徴を分析することです。顧客性世代、店舗来店数、購買商品の特徴など、それぞれの顧客セグメントを深く理解し顧客が求めていることを知る必要があります。

その上で、それぞれのセグメントに属する顧客ペルソナを策定し、各顧客のセグメントに対する認識を統一することが4点目です。」

後藤:「施策方針の立案に関しては以下2点が挙げられます。

施策方針立案は、売上などのビジネス上の成果獲得が根幹にあります。その際のセグメントを、より高次なものへ成長させていく際に課題を導出する、ということが1点目として挙げられます。

弁当屋のKPIを例に見てみましょう。まず、レシート数と単価で分けてマトリクス整理し、セグメントを分けます。それから、惣菜・弁当の購入などの上位のセグメントと、ある商品のリピート数などの下位のセグメントを比較します。そうすることで、弁当屋の売上向上のためにはどのようなことが課題として浮かび上がるのかを導き出します。

その上で、施策の方針を立案していくことが2点目として挙げられます。セグメントを整理したことにより明確化されたターゲットに対して、どういうタイミングでどういう内容を訴求していけばいいのか、どのような訴求内容を策定すればいいのか、といった施策の方針を固めていきます。

闇雲に行動を起こすのではなく、課題を整理し、整理した課題へのソリューションを考えることがデータ活用を成功させるポイントとなります。」

具体的な施策の実行

後藤:「ここまでの内容を踏まえ、デジタル媒体を用いて、施策のターゲットに対してコミュニケーションを実施します。今回は、LINEを使ってセグメントごとに配信を実行します。。

例としてLINEを出しているのは、日本人の多くが携帯電話やスマートフォンで利用しているメディアであり、より多くのお客様に、それぞれにカスタマイズされた内容を配信しリーチできるという利点があるためです。

また、LINEはEmaliと比べて開封率も高く情報が伝播しやすいこと、アプリ開発やメールアドレスの収集を必要とせずQuickスタートが可能であるということもLINEを使いたい理由として挙げられます。」

後藤:「コミュニケーション実施後の、施策効果の検証ついても解説します。施策は実施しただけでその後のフィードバックを失念しがちですが、どのぐらい施策の効果があったのか定量的に評価することは重要です。例としてA/Bテストを用いて購入率を比較しています。このように、効果を定量的に比較するプロセスを行うことで、次の施策に向けての改善点が浮かび上がります。

また、配信した顧客の中で反応した顧客と反応しなかった顧客の特徴を分析することも重要です。例として、反応した顧客と反応しなかった顧客を性年代で分けて比較しています。このような比較をすることで、次の施策改善や顧客の深い理解につながります。

このように、顧客セグメントの分析から効果検証までの一連の流れを行うことで、顧客の理解をアップデートしていくことも重要なポイントです。

顧客の理解は非常に難しいテーマです。徐々にデータが変容していく、データが増大していくということも視野に入れた顧客分析や、デジタルコミュニケーションの改善を継続していくことが必須になるのです。」

後藤:「また、顧客理解を深める際には、先ほど触れたID-POSデータ以外の多様なデータを収集し分析に利用していくことも大切です。具体的には、

  • データベースに保存されている顧客・会員データ
  • ID-POS以外にもログに保存された購入データ
  • MA・CRM・LINEに存在する配信済みのデータ
  • 3rd Partyなどに保存された外部データ

なども収集し、顧客を多面的に理解するということです。このデータを補強するためにアンケートやユーザーインタビューなども行うとよいでしょう。」

マーケティング業務の予算配分

後藤:「マーケティング業務を行うにあたって、どのように予算を分配するかということがテーマになる局面もあります。

具体的には、先ほどのLINE配信はデータ販促費としてコストを投下しますが、それ以外にも広告宣伝やポイント付与などにコストは投下されます。売上を向上させるために、優先的にどこにコストをかけるかもテーマになる場合があります。」

後藤:「このコストの配分をシミュレーションするのも、マーケティング成功に必要な一要素です。具体的には、以下のような流れです。

  1. ポイントカード作成
  2. ID-POS連携
  3. CRM策実施

以上の3ステップに工程を分けて、それぞれに対してどの程度コストをかけると、どのぐらい売り上げが変わるのかをモデル化します。その上で、そのモデルを用いて売上の最適化を図る、ということをします。

このようにシミュレーションした結果、売上向上に失敗するコスト配分が可視化されるため、全体としては意思決定の確実性が上がることが期待できます。」

データ基盤を支えるTROCCO®とは

次に、株式会社primeNumberの塚本より、データ基盤を支えるツールTROCCO®について解説しました。

TROCCO®のご紹介

塚本:「後半は、株式会社primeNumberの塚本の方から、データ分析基盤を支えるTROCCO®についてご説明します。

ビジネスサイドメンバーの業務内容の重要性を理解するということは、難しい領域であるという肌感覚を覚えます。この業務をシステムに落とし込んでいく作業が業務遂行の上で必要になります。この際に、TROCCO®でデータ基盤を構築することをおすすめいたします。」

塚本:「データ利活用に関して、『2025年の壁』と呼ばれる、データサイロ化による課題が叫ばれています。具体的には、昨今の人口減少によって人的リソースが減少していく中で、データを管理するコストの増大や意思決定の鈍化、売上機会の損失などの問題があるということです。

これに対して、株式会社primeNumberは、データ基盤の構築が2025年の壁を解消する足がかりとなるのではないかと考えています。」

後藤:「実際にお客様が行っている施策としては、データ分析サイクルと業務サイクルを融合し、ビジネスサイドメンバーとシステムサイドメンバーが一丸となってアクションを起こす、ということが挙げられます。

具体的には、行ったマーケティング施策に関するデータをデータ基盤に取り込み蓄積することで、自動的かつスピーディーにPDCA回転をさせ施策の精度を上げるということが可能になります。」

後藤:「データ利活用をすることのメリットは3つあります。

  • データ収集からBIなどでの可視化までを自動化できるため管理コストが削減できる。
  • 属人化された運用や手作業で行われていた操作を自動化できるため、入力ミスの防止やアウトプットの均一化が可能となり、正確なデータによる意思決定ができる。
  • 正確なデータを扱うことで、施策の精度が向上するため結果として売上機会が創出される。

上記のようなメリットがあります。」

塚本:「データ活用のベストプラクティスとしては、サイロ化されたデータを、TROCCO®をDWHとしてデータを転送し可視化する、という一連の動作を取るとよいでしょう。業種業態により用いるデータソースが異なる、可視化の仕方が異なるなどの細かいチューニングが必要ですが、基本的なデータ基盤構築やデータ活用にはこの構図を満たせば十分と言えます。」

TROCCO®の機能

塚本:「次に、TROCCO®の機能についてご紹介します。

TROCCO®はデータ統合を自動化し、データエンジニアリングにかかるコストを削減するフルマネージドのETL/ELTサービスです。TROCCO®は、EmbulkというオープンソースソフトウェアをGUIで扱えるようにしたサービスなので非エンジニアでもデータ転送やデータ格納やデータ整形などを簡単にできるのが特徴です。

プログラミング不要で基本的なデータ加工ができるため、マーケターが分析用にデータを参照するなども可能です。

連携のイメージとしてはDWHからTROCCO®を通じてデータの分析・可視化を可能としています。

パイプラインを都度開発しなくても、TROCCO®であれば参照元とするデータソースと連携したいDWHを選択すればデータ連携が可能であり、スピーディにデータ活用が実現できます。

TROCCO®の導入によって従来のデータ統合における作業工数を90%以上カットでき、非常に経済的です。

塚本:「TROCCO®が選ばれる理由は大きく3つあります。

  • データソースや連携先の選択先が多く130種以上あり、拡張性が高いこと
  • 競合他社のサービスに比べて安価に始められるということ
  • 直感的に理解しやすいUIであり、なおかつ日本語サポートが充実していること

こちらは公式サイトで詳しくご説明しています。

TROCCO®にはワークフロー機能やデータマート機能など多くの機能が備わっていますので、ぜひこちらも公式サイトでご確認ください。」

TROCCO®の活用事例

塚本:「最後に活用事例をご紹介します。

今回はリテール業界に関するシステム構成図についてご説明します。リテール業界は特に売上の増減に非常にシビアな業界なので、施策の意思決定が遅いことは致命傷となり得ます。そのため、データを使った自動連携が常に求められます。連携先としては前半パートでご紹介したID-POSデータや、LINEやFacebookなどのSNSツールを組み合わせるパターンが多いです。」

塚本:「TROCCO®とDWHで構築するCDPパッケージについてもご紹介させてください。こちらは、共通IDを組み合わせて、データウェアハウス(DWH)で分析した事例についてです。導入結果として、コストパフォーマンスが向上したこと、将来のインフラ拡張・サービスの拡充にも柔軟に対応できるようになったことが挙げられます。」

本記事のまとめ

昨今の日本では人口減の傾向がありつつも店舗数は増加しているため、リテール業界での生存競争は激化しています。厳しい環境を生き抜くには施策を着実に成功させていくことが必須ですが、もし施策に綻びがあった場合、早急に改善し、次の施策につなげていく必要があります。

このようにPDCAをスピーディに回すには、デジタルコミュニケーションのあり方においても顧客セグメントを正確に設定し、上位のセグメントと比較し改善を繰り返していくという努力が重要です。

堅実に施策を成功につなげていくには、デジタルコミュニケーションなどのデータ活用の際に用いるデータに誤りがないこと、いつでもデータを利用できる状態であることが肝要となります。

TROCCO®であればデータ活用のためのデータ連携をGUI上で簡単に行うことができるため、プロジェクト全体のコストや手間暇を削減することができます。

TROCCO®にはクレジットカード登録不要のフリープランもあるため、ぜひ一度お試しください。

TROCCO® ライター

TROCCO®ブログの記事ライター データマネジメント関連、TROCCO®の活用記事などを広めていきます!