大量のデータを効率的に処理するための手法として、トランザクション処理は重要な位置を占めています。この記事では、トランザクション処理の基本的な概念から、その適用シーン、メリット・デメリットまでくわしく解説します。
また、データ処理方法としてトランザクション処理と比較されるリアルタイム処理との違いについても説明します。
トランザクション処理とは
トランザクション処理とは、データベース内で複数の操作がからみ合った際にデータの整合性を保つための重要な仕組みのことを指します。
この処理では、関連する操作を1つのまとまった処理として取り扱い、全ての操作が正常に行われた場合にのみ変更を確定させます(コミット)。もし途中で問題があった場合には処理を取り消す(ロールバック)ことも可能です。
このように、トランザクション処理を行えば、データベース内の情報が一貫性を持ち、信頼性の高い情報提供が実現されます。
トランザクション処理は、しばしば、銀行口座からの引き出しにたとえられます。
銀行では、口座残高の減少と引き出し金額の記録が1つのトランザクションとして取り扱われます。
もし途中で問題が発生してトランザクションが途中で終了した場合、引き出し金額が正しく反映されず、データが整合性を欠く可能性があります。
しかし、トランザクション処理を使用することで、全ての操作が正常に完了した場合のみ変更を反映させることができます。その結果、データベース内の情報が常に一貫性を持ち、信頼性の高い情報提供が保証されます。
トランザクションの4つの条件
トランザクション処理にはACID特性という、データベースの安定性と整合性を確保するための基本的な要件があり、具体的には下記4つの条件を提供します。
それぞれについて見ていきましょう。
原子性(Atomicity)
原子性は、トランザクション内の操作が「完全に実行」するか「まったく実行しない」かのいずれかであることを確保します。
この原子性により、途中で何か問題が発生した場合でも、トランザクションは一部だけが実行されることはありません。もしエラーが起きれば、トランザクションは元の状態に戻され、データベースは変更されることなく保たれます。
一貫性(Consistency)
一貫性は、トランザクションの実行前後でデータベースが整合性を持つことを確認する条件のことを指します。
この一貫性により、トランザクションによる変更がデータベース内で正しく反映され、データの状態が矛盾しないように保たれます。具体的には、関連するデータが適切に更新され、整合性が維持されることが求められます。
独立性(Isolation)
独立性は、複数のトランザクションが同時に実行されても、お互いに影響を及ぼさないことを確認します。
これにより、一つのトランザクションが他のトランザクションによって中断されることなく、互いに干渉しないように管理されます。その結果、トランザクション同士の相互干渉を防ぎ、データの一貫性が保たれます。
永続性(Durability)
永続性は、トランザクションが完了した後もその結果が失われないことを確認します。
これにより、トランザクションの結果は、特別なログに記録され、データベース障害が発生した場合でも復元可能です。その結果、データの安定性が保たれ、信頼性のある状態が維持されます。
トランザクション処理とバッチ処理の違い
トランザクション処理 | バッチ処理 | |
特徴 |
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利用シーン |
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トランザクション処理は、特定のイベントや取引などの「トランザクション」を処理する、データ操作の方法です。
具体的には、売上や購入などのビジネス取引情報をデータベースに正確に記録する場合に用いられます。
この処理は、リアルタイム性とデータの一貫性が重要視されるシナリオで利用されます。証券取引所のような環境では、取引の完了やキャンセルが即座に行われなければならないため、トランザクション処理が採用されます。万一障害が発生すると業務への影響が大きいため、可用性がトップの優先事項となります。そのため、システムはハードウェアの冗長性とソフトウェアの迅速な回復機能を備えています。
一方、バッチ処理は、一定の期間に蓄積されたデータをまとめて一括で処理する方法を指し、主に大量のデータを集約・分析する際に役立ちます。
具体的には企業の売上高などを定期的にまとめて集計し、傾向やパターンを洞察する場合に、バッチ処理が活用されます。リアルタイム性はトランザクション処理に比べると劣るものの、データの集計や洞察獲得において高い効率を持っています。
それぞれの処理には向き不向きがあるため、システムにフィットした処理を採用することによって事業の確実性を高めることができます。
トランザクション処理が行われる場面
トランザクション処理は、ビジネスや日常生活において、データの整合性と処理の一貫性を確保するためには不可欠な仕組みです。トランザクション処理は具体的には下記の場面で利用されます。
銀行の取引
銀行の取引において、トランザクションは資金の移動における安全性と信頼性を担保します。顧客が一つの口座からお金を引き出す際、トランザクションは以下のように進行します。
まず、顧客の銀行口座に十分な残高があることを確認します。
次に、引き出しと同時に別の口座に入金する手続きを開始します。
この二つのステップは一貫して実行され、一つのトランザクションとしてまとめられます。
もし途中でエラーが発生した場合、トランザクションは元の状態に戻り、資金の移動は実行されません。
在庫管理
在庫管理を行う場合には、トランザクションが商品の生命周期全体を管理し、正確な在庫情報を維持します。具体的には、商品の発注から受注、在庫の更新、そして売上の記録まで、このワンセットのプロセスは一貫性を持って連動します。
もし在庫数が途中で更新に失敗した場合、トランザクションは元の状態に戻り、データの整合性が保たれます。
航空券や特急券の予約
トランザクション処理を航空券の予約システムに用いれば、顧客にスムーズな予約体験を提供できます。
具体的には、複数の顧客が同じ席を同時に予約しないように管理するため、トランザクションが競合を防ぎ、予約の一貫性を確保します。
もし競合が発生した場合、トランザクションは自動的に競合を解決し、一つの顧客に席を割り当てます。その結果、予約の整合性が保たれます。
ECサイトの注文処理
ECサイトの注文処理においても、トランザクションは注文から支払い、在庫管理までの一連の操作を一貫して実行します。
支払いが成功した場合、それと同時に商品の在庫数が減少し、顧客に正確な情報が提供されます。
もし支払いが失敗した場合、トランザクションは元の状態に戻り、顧客は誤った請求を受けないことが確保されます。
まとめ
トランザクション処理は、リアルタイム性とデータの一貫性が求められるシナリオでのデータ操作に欠かせない方法です。これは、銀行の取引や在庫管理、航空券の予約、ECサイトの注文処理といった場面で見受けられます。トランザクションの特徴として、エラーが発生した際には元の状態に戻す能力が挙げられます。
一方、バッチ処理は、大量のデータを一度に処理する際に利用され、主に企業の売上高の集計やデータ分析で活用されます。リアルタイム性はトランザクション処理に劣るものの、データの集計や解析には優れた効率を持っています。どの処理方法を選択するかは、システムの要件や事業のニーズによって異なります。
また、データの収集、変換、ロードのプロセスを効率的に行うためには、ETLツールの導入を検討することがおすすめです。これにより、バッチ処理の効率をさらに高めることができ、ビジネスの競争力を向上させるための一石となります。
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