データは現代ビジネスの生命線と言っても過言ではありません。そのデータがどのような過程を経て、価値を生むのかを知ることは極めて重要です。

データライフサイクルとは、データが生成される瞬間から消滅するまでの一連の過程を指します。主な目的は、データの価値を最大化し、管理を効率化することです。

本記事では、データライフサイクルとは何か、そして各フェーズでどのようなことをするのかを説明します。

データライフサイクルとはデータ活用の一連の流れのこと

データライフサイクルとは、データが生成されてから廃棄されるまでの、データが活用される一連の流れを指します。データライフサイクルを意識することで、質の高いデータ分析や効率的な管理が実現可能です。

一般的に、データは以下のような流れで生成から廃棄へと至ります。

  1. 作成
  2. 収集と保存
  3. 前処理とクレンジング
  4. 分析
  5. 共有と配布
  6. アーカイブ
  7. 廃棄

私たちも自らの人生設計において、ライフサイクルを意識し、「どのような生き方をするのか」「そのためにはどのような準備が必要か」といったことを考えます。データに関しても同様に、データを効率的に活用したりセキュリティを遵守したりするために、データの正しい扱いや管理について考える必要があるのです。

データライフサイクルを把握・管理する目的

データの効率的な活用やセキュリティ遵守のために、データライフサイクルを把握し、管理することは重要です。ここでは、一般的にどのような目的をもって把握・管理をするのかを説明します。

データ品質の保持・向上

データライフサイクルを意識し管理することで、データ品質の保持・向上が期待できます。

データライフサイクルの各フェーズでは、データの正確性や信頼性、整合性などが保持されるよう、適切な対応が行われます。たとえば、データクレンジングにより不正確なデータや重複を削除したり、データの収集・保存時にメタデータを付与することでデータの意味や属性を明確にしたりします。

さらに、データライフサイクルの適切な管理により、データ品質の保持・向上を実現させるプロセスの継続的な実施が可能になります。データ品質を維持するためには、単発的な対応だけでは不十分です。データライフサイクルを把握し、適切な管理を継続的に行う必要があるのです。

効率的なデータの活用

組織としてデータライフサイクルを意識的に管理することで、「現在、データがどのフェーズにあるか」が明確になり、データの効率的な活用が促進されます。

データの現在位置を把握できていると、必要な情報のスムーズな発見や各フェーズに応じた適切な活用が可能になります。たとえば、新しく生成されたデータはリアルタイム分析に利用したり、既に保存されたデータは履歴分析などに活用したりできるでしょう。

また、データライフサイクルを意識し、各フェーズのポリシーに則った管理方法を把握していれば、データの可用性が確保されます。データの可用性が保たれていれば、必要としている人が当該データにスムーズにアクセスでき、業務効率化の促進につながるでしょう。

コンプライアンスとセキュリティの遵守

データライフサイクルを意識することは、各フェーズにおける適切な扱い・管理を把握することに等しいです。そのため、データライフサイクルの把握・管理は、組織としてのデータセキュリティの向上やコンプライアンスの遵守につながります。

たとえば、日本におけるデータセキュリティに関する法律として、個人情報保護法やサイバーセキュリティ基本法などがあります。これらの法律を遵守するためには、保管や廃棄のフェーズにおいて厳重な注意を払う必要があるのです。

また、データの可用性を確保することで、データセキュリティを向上させることも可能です。データの可用性が確保されていなければ、誰でも容易にデータへアクセスでき、データへの安易な侵入や攻撃を許すこととなります。セキュリティの観点からも、データライフサイクルを把握し、データの可用性を確保することが大切です。

データライフサイクルの各フェーズと管理のポイント

ここまでは、データライフサイクルの目的や管理する意義を説明しました。この章では、データライフサイクルの各フェーズにおいて具体的にどのようなことをするのか、またその際にどのようなことに留意すべきかを解説します。

データ作成

データライフサイクルは、データ生成から始まります。データ生成は、あらかじめ定められたルールや実装されているシステムに沿って行うことが大切です。たとえば、ETLツールの「Extract」機能により、データソースからのデータ抽出を自動化し、効率化を図れます。

データ生成時のポイントは、データの生成元や生成方法をあらかじめ明確化しておくことで、データの質を最初から確保することです。初期段階から高いデータ品質を確保しておくことで、各フェーズにおけるデータ品質の水準が高まり、これからの処理の手間が軽減されるでしょう。

データ収集と保存

データライフサイクルの2つ目のフェーズとして、生成されたデータを収集し、保存します。複数のデータソースからデータを収集し、一元的に集約・保存します。

データ収集と保存時のポイントは、データを一元的かつ効率的に収集し、安全で持続可能なストレージを選定することです。収集したデータが構造化データであればリレーショナルデータベースを用い、非構造化データであればNoSQLや非リレーショナルデータベースを利用します。

データフォーマットに応じた適切なストレージを選定し、悪意のあるアクターやマルウェア攻撃から保護したり、データセキュリティに関する法律を遵守したりする必要があります。

データの前処理とクレンジング

データ収集・保存が完了したら、前処理とデータクレンジングを行い、データ分析ができる形へと変換します。データは分析によって活用されることで初めて価値を生みますが、収集しただけの生データのままでは、信頼度の高いデータ分析は行えません。

このフェーズでのポイントは、データの欠損値や重複を除去し、分析に適した形へと整形することです。前処理によって不正確な情報を除去したり、データクレンジングをしたりして、データ品質を維持する必要があります。その際、ETLツールの「Transform(変換)」機能を用いることにより、データの変換や結合、フィルタリングなどの前処理を効率的に行えます。

データ分析

前処理とデータクレンジングが終われば、本格的にデータ分析を実行できます。データ分析によって得られたビジネスインサイトにより、今後の意思決定やビジネス戦略の立案に役立てます。

データ分析の際には、分析の目的を明確化し、適切な手法やツールを使用することが大切です。分析目的が明確化していれば、得られた結果をスムーズに意思決定へつなげられ、分析による成果を出しやすくなるでしょう。

分析の手法においては、時系列分析や機械学習などがあり、分析ツールは、PythonやR、SQLなどが存在します。分析の際には、データの種類や目的に応じて、適切な手法やツールを選択することが非常に重要です。

データ共有と配布

データ分析が終わると、その分析結果を組織内外のビジネスユーザーへ共有します。ETLツールの「Load」機能を利用して、変換されたデータをターゲットのデータベースやデータウェアハウスに転送・配布すると、効率的に分析結果の共有が行えるでしょう。

データの共有・配布時のポイントは、必要な情報を適切な関係者へ安全かつ効率的に提供することです。分析結果には、新たなビジネスインサイトや機密情報が含まれるため、適切な関係者へと安全に共有することが求められます。

データのアーカイブ

分析に用いられ一定の時間が経過すると、そのデータは日常的に使われることはなくなります。しかし、データを利用しなくなったからといってすぐに廃棄してしまうと、後日再確認が必要になったときや、万が一訴訟が提起された場合に、トラブルを引き起こしてしまう可能性があります。

長期的な保存のために、データを安全かつ効率的にアーカイブすることがポイントです。再度必要性が生じたときに迅速にアクセスできるよう、適切なバックアップや冗長性の確保、メタデータによる管理などを徹底する必要があるでしょう。

データ廃棄

最終的に、使用する機会がなくなり、アーカイブとして保管しておく期間も経過したデータは、適切に廃棄される必要があります。これ以上使用することのないデータを冗長的に保管しておくと、データベースを不要に圧迫することになりますし、情報漏洩・流出のリスクも高まります。

データ廃棄は、プライバシー保護やコンプライアンス遵守の観点から、安全に実施されることが非常に重要です。廃棄されるデータには、個人情報や機密情報が含まれるケースがあるため、不正利用やコンプライアンスの違反をさけるために、安全にデータを破棄することが求められます。

データライフサイクルの管理で意識すべきこと

データライフサイクルの管理においては、必要なデータの取捨選択が大切です。バックアップをとっていないデータを必要となったときに復元することは難しいですが、すべてのデータを冗長的に保管しておくと、無駄な管理コストがかかってしまいます。

保管すべきデータや廃棄すべきデータを正しく選択するためには、これまでの経験に基づき、起こりうるトラブルを想定することが大切です。また、「そのデータが将来どのように利用されるか」といった観点を持つことで、分析に必要なデータの取捨選択が可能になるでしょう。

「備えあれば患いなし」といった考え方はもちろん大切ですが、膨大なデータを不必要に保管しておくことは、非効率性を招く恐れがあります。無駄なコスト削減やデータ分析の精度向上のために、必要なデータを取捨選択する必要があります。

まとめ

本記事では、データライフサイクルの意味や目的、管理する際のポイントについて解説しました。

データライフサイクルを意識し、各フェーズにおいて適切な管理を行うことで、データ品質の保持・向上や効率的なデータ活用などのさまざまな恩恵を受けられます。また、データセキュリティやコンプライアンスの遵守の観点からも、データライフサイクルを意識した管理は非常に重要です。

一方、データライフサイクルにおける、「データ収集」や「前処理・クレンジング」などは、手間と時間がかかってしまうフェーズであり、肝心のデータ分析業務に注力できないケースがあります。その場合には、ETLツールを積極的に利用し、データの「Extract(抽出)」、「Transform(変換)」、「Load(書き出し)」のプロセスを効率的に行うとよいでしょう。

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TROCCO® ライター

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