現代のビジネスにおいて、データは不可欠な資産であり、企業が競争力を維持するために効果的なデータ管理と活用が必要です。しかし、多くの組織や企業はデータに関するさまざまな課題に直面しており、データの可視性の不足や利用の難しさなど、データを実際に活用するのに困難を抱えています。データの可視性の不足、データの利用困難さなど、いざデータを利用・活用しようとしても、なかなか実践できないということもあるのではないでしょうか。

こうした課題に対処するための一つの手段として利用されるのが「データカタログ」です。データカタログとは、データの属性や特徴を説明するメタデータを管理するシステムのことです。

この記事では、データの利活用を促進するためにデータカタログを構築したいと考えている方に向けて、そのメリットや構築ステップを説明します。また、実際に内製するかツールを使うか悩んでいる方に向けて、事例を交えながらそれぞれのメリット・デメリットや、ツールの選定ポイントを解説します。

データカタログがデータ活用で役に立つ理由

まず、データカタログがデータ活用において役立つ理由について解説します。

データへのアクセス効率が向上するため

大抵の場合、データは組織内で複数の場所に分散して存在し、その可視性を確保することは難しいです。データカタログは、この混沌とした状態を整理し、データの所在や特性、利用方法を一元的に記録します。その結果、システムの利用者は必要なデータをスムーズに見つけ出し、データ探索にかかる時間を大幅に削減できます。特に、大規模かつ複雑なデータ環境では、データカタログを導入すれば、データエンジニアやデータサイエンティストがデータの取得に費やす労力を軽減し、戦略的な分析に集中できます。このようにデータへ容易にアクセスできるようになると、データ利用者にとっては貴重な時間の節約をもたらし、組織全体の効率性向上に寄与します。

データ品質が向上するため

データ活用において、データの品質と信頼性は最重要です。データカタログを導入すればメタデータの管理を通じて、データの特性、統計情報、ソース、所有者、更新履歴などの情報を集積し、データの理解と信頼性を高めることができます。この集積された情報が提供されれば、システムの利用者はデータが正確であることを確認でき、誤ったデータに基づいた意思決定を避けられます。また、データカタログはデータガバナンスの一環としてデータの取得元や使用方法を明確に記録し、規制遵守やセキュリティの向上をサポートします。データカタログの導入によるデータ品質の向上がされれば、正確で信頼性の高いデータを活用し、戦略的な意思決定がしやすくなります。

データカタログの構築・活用のステップ

次に、データカタログを構築・活用するには何をしたらよいか、順に解説します。

分析ユーザーの検索ニーズの洗い出し

データカタログの基盤となるのは、分析ユーザーのニーズを完全に理解することです。組織内でのデータの用途や必要性を洗い出し、データカタログの導入によって何が検索しやすくなればいいのかという課題を特定します。これにより、データカタログの目的が明確になり、効果的な設計が可能となります。

洗い出したニーズをカバーしたメタデータの作成

分析ユーザーの要求に応じて、必要なメタデータスキーマを構築します。データの特性、ソース、関連性、歴史情報、アクセス権など、各要素の定義と関連付けを行うということです。これにより、データの正確な理解と迅速なデータ検索が可能となります。

メタデータの収集・メタデータのデータベースの作成

構築したメタデータスキーマに基づいて、データソースからメタデータを収集し、データカタログの核となるデータベースに統合します。このプロセスによってデータの統合管理ができるようになり、データの発見性とアクセス性を向上させます。

アクセス権の設定

データカタログの構築において、セキュリティの担保は絶対的な重要性を持ちます。データカタログ内のデータへのアクセス権限とセキュリティポリシーを厳格に設定し、データの保護を確保すれば、データの機密性が維持され、不正アクセスから組織を守ります。

メタデータのデータベースの定期的な更新

常に変化するデータ環境に対応すべく、新しいデータソースの追加やメタデータの変更があるたびに、データカタログを定期的に更新します。これにより、データカタログの正確性と適用性が維持され、データ駆動の成功をサポートします。

データカタログを内製するかツールを使うか

活用できれば大変便利なデータカタログですが、データカタログを内製する場合でもツールを利用する場合でも、それぞれ異なるメリット・デメリットがあります。

内製の場合

メリット

データカタログを内製することには、下記のメリットがあります。

多様なニーズに対応できる

内製したデータカタログは、多様なデータニーズに柔軟に対応できます。ある企業では、データカタログの内製によりあらゆるサービスのデータを集積し、データ分析環境を統合的に提供できるようになりました。これにより、データの民主化が進み、幅広いユーザーがデータにアクセスできるようになりました。

アクセス権限の厳格な管理が可能

内製したデータカタログは、データへのアクセス権限を厳格に管理でき、データのセキュリティとプライバシーを確保します。そのため、機密情報の漏洩リスクを最小限に抑え、データへのアクセスをコントロールすることができます。

上記のように、データカタログを内製するということはより要件にフィットしたカスタマイズ性の高いシステムを作れるということであり、組織内のメンバーの多くの要望をカバーすることができます。

デメリット

一方で、データカタログの内製には下記のデメリットもあります。

開発・運用コストがかかる

内製データカタログの設計、実装、保守にはコストがかかります。多くのリソースと時間を投資する必要があるため、予算とリソースの適切な配分が求められます。

技術的な課題を抱えやすい

大規模なデータ環境に対処するため、技術的な課題が発生するリスクがあります。データのパフォーマンス最適化やセキュリティ確保が難しくなることがあり、適切な設計とスケーリングが必要になります。

専門知識が必要となる

内製したデータカタログを活用するには、データに関する専門知識を持つ人材が必要です。データエンジニアやデータガバナンス担当者の確保が必要ということです。

アップデートとカスタマイズの手間がかかる

データカタログはデータ環境の変化に常に追いつき、データの正確性と新鮮さを保つ必要があるため、定期的なアップデートやカスタマイズが欠かせません。これには追加のリソースと時間がかかります。

このように、データカタログを内製する場合には手間や時間、費用、専門知識などのリソースを確保する必要があります。

ツールを使う場合

メリット

データカタログツールを使う場合には、下記のメリットを享受できます。

データの可視化と検索性の向上を図れる

ツールを使えば、データのメタデータ(データに関する情報)を整理し、データの素早い検索を可能にします。これにより、データの所在を確実に特定でき、データの直感的な可視化が容易になります。

データ資産管理の自動化とコンテキストの向上ができる

データカタログツールを採用することによって、業務が自動化でき、データ資産の総数の把握と管理が実現します。これにより、データセットの検出、メタデータのタグ付け、データの整理が容易に行え、ビジネスと技術の双方のコンテキストを向上させます。

デメリット

非常に便利なデータカタログツールですが、下記のデメリットがあることも留意しましょう。

導入と維持のコストがかかる

データカタログツールの導入と維持には相応のコストがかかります。ライセンス費用、ハードウェア要件、トレーニングコスト、継続的なメンテナンスなどが含まれ、これらの負担を組織が適切に予算配分する必要があります。

技術的な課題を抱える

データカタログツールの適切な設定やカスタマイズには技術知識が必要となる場合があります。データが大規模になるにしたがい、パフォーマンス最適化やセキュリティ対策も必要であり、それに関するリソースも確保する必要があります。

これらのようなデータカタログツールを導入するメリット・デメリットについては下記2つの記事で取り上げています。

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データカタログツールの選定ポイント

以上のメリット・デメリットを踏まえて、より業務を効率化できるデータカタログツールの選定ポイントについて説明します。

メタデータ管理の柔軟性と拡張性

データカタログツールにおける成功の要因の中でも、最初に注目すべきはメタデータの柔軟性と拡張性です。これには、データの特性や組織のビジネスニーズに合わせてメタデータをカスタマイズできることが含まれます。たとえば、物理的なデータ項目にビジネス用語を関連付けたり、新しいカスタムメタデータフィールドを容易に追加できれば柔軟性・拡張性を保てます。

データセキュリティとアクセス制御

データカタログツールには、データへのアクセス制御ができることも非常に重要な要素となります。データへのアクセス権を細かく管理し、ユーザーやロールに応じてアクセス権を設定できる機能は必須です。

また、データの保存と転送時には強力な暗号化が提供されているかも確認しましょう。データが安全に転送および保存されることは、セキュリティの評価基準として不可欠です。

ユーザビリティとユーザーサポート

データカタログツールの成功は、ユーザーエクスペリエンスとサポート体制にも大きく依存します。

ユーザビリティについては、ツールがユーザーにとって直感的に理解しやすいかが鍵です。使いやすいユーザーインターフェース、使い方のヘルプ機能、エンジニア以外のユーザーでも利用できる使い勝手の良さが具体的な評価ポイントとなります。このように、ユーザーがスムーズにツールを操作し、データの価値を最大化できることは非常に重要な要素です。

また、運用が容易であるかも考慮すべき事項です。運用メンバーが少数で、設定項目が簡潔な場合、ツールの運用は効率的でスムーズに行えます。それ以外にも、充実したマニュアルやトレーニング資料の提供、予算内でのサポート体制も評価の対象となります。

データカタログの利用のベストプラクティス

このようなデータカタログを効果的に活用するには、下記2つの要因が欠かせません。

正確なメタデータの維持

データカタログの土台となるのは、正確で詳細なメタデータです。メタデータはデータの本質を明らかにし、データの理解、探索、活用、そして効果的な管理を可能にします。メタデータの品質と正確性は、データカタログの信頼性を高め、戦略的な意思決定をサポートする役割を果たします。

メタデータには以下の要素が含まれます。

  • データの詳細な説明
  • データの出典情報
  • データの最終更新日時
  • データの所有権
  • データ品質の評価
  • データの依存関係

上記の要素を正確に記録し、適切に維持することは、データカタログの価値を最大化するために不可欠です。

分析ユーザーのニーズを明確に理解する

データカタログの成功には、分析ユーザーのニーズを徹底的に理解し、そのニーズに即したデータカタログの設計が欠かせません。ユーザーのニーズを理解するためには下記のステップを踏むとよいでしょう。

ユーザーの特定

まず、データカタログの要件を理解するために、日々多様化するユーザーベースを特定します。どのユーザーグループがどのようなデータへのアクセスを必要としているのか、その全体像を明確に把握します。

ニーズの明確化と要件の定義

ユーザーが特定されたら、彼らのニーズを完全に理解し、それをデータカタログの具体的な要件に翻訳します。ユーザーが何を達成しようとしているのか、それに合致するデータカタログを設計し、提供します。

まとめ

データカタログを活用できればデータの民主化の推進や組織内で利用するデータの品質の向上などが実現でき、業務効率の改善やデータドリブンな経営の一助となります。

データカタログが内製できればより各人のニーズに応えられるようになりますが、通常、コストや時間、人員などの大きなリソースが必要です。

COMETAであれば、下記の特徴を備えておりコストを抑えつつも大きな効果が期待できます。

  • 問題解決とユーザビリティが向上する
    • データ分析の初歩から高度な段階まで、利用上の課題を解決します。データの所在地や内容が不透明な状況から脱却し、メタデータを自動的に取得・活用できるため、効率的なデータ活用が可能となります。
  • 自己成長するデータカタログ
    • データ転送設定やデータマートの拡大に伴い、メタデータも自動的に増加・蓄積されます。手間のかかるメタデータ入力作業を排除し、データカタログが自己成長できる仕組みにより、メタデータ管理の負担を大幅に軽減できます。
  • データの理解をサポートするテーブル詳細画面
    • COMETAのテーブル詳細画面では、テーブルと各カラムの詳細なメタデータを簡単に閲覧できます。
    • さらに、充実したプレビュー機能が提供され、各カラムの要約統計情報の表示やテーブルプレビュー上でのフィルタリングやソートもサポートされています。そのため、データの取り扱いがスムーズに行え、データの理解が迅速化します。
  • エンジニアも満足のクエリエディタ
    • どの画面からでもワンクリックでクエリの作成が可能で、自動補完機能とメタデータ表示がクエリ作成をサポートします。クエリの保存、実行結果のプレビュー、結果のCSVエクスポートなど、多彩な機能も備えています。

さらに、日本語でのサポートや豊富なヘルプドキュメントもあるため、スムーズなデータの利活用を実現できるでしょう。

データの連携・整備・運用を効率的に進めていきたいとお考えの方や、プロダクトにご興味のある方はぜひ製品サイトをご覧ください。

TROCCO® ライター

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